ペイジンの詫び
・獣人国について
獣王が治める多種多様な獣人による連合国家、獣人ごとに土地を所有し、ある程度の権力を与えられているため、内乱が起きやすいなど問題がある反面、獣人それぞれの文化などが育ちやすく、王国にはない文化、技術がある。
芸術品として螺鈿や象嵌、サンゴの加工品など……西部に行けば行く程、独特の言語を使うことが多く、会話が難しい場合もある。
獣王に仕える参議にヤテン・ライセイ(テン人族) キコ(狐人族)など
やってきたペイジン達はいつもの様子とは少し違っていた。
まず商売が目的ではないらしい、一応商品を持ってきていて、買い物を楽しみにしていた皆の相手をしてくれているが小規模で……だというのに馬車の数はいつもより多い。
多いだけでなく作りが豪華で……いつかに見た獣人国の工芸品に使われている、テカりのある黒色塗料が使われた馬車二台がかなりの数の護衛に守られている。
そんな馬車で何をしに来たかと言えば、セナイ達へのお詫びに来た……らしい。
以前セナイ達を預かっていたペイジン・ドは、2人を丁寧に扱っていなかったことを悔いていて……貴族令嬢となった2人からの許しを得たいんだそうだ。
この話を聞いた時、出迎えに向かった私もアルナーもエイマもフランシス達も、当人であるセナイとアイハンもぽかんとすることになり、しばらくの間ペイジンが何を言っているのか、理解できなかった程だった。
確かに完璧ではなかったかもしれないが、それでもペイジン・ドは善意で2人を保護していて、何の得もないのに最低限の世話をしてくれていた。
そして私達の下へと連れてきてくれたのもペイジンで……そのおかげで今のセナイとアイハンがある訳なのだから、感謝こそすれ恨むなど筋違いというものだ。
しかしそう説明してもペイジンは受け入れてくれず……頼むから詫びをさせて欲しいと、そう言ってきた。
それでも私はいやいや、それはおかしいとそう言おうとしたのだが、ダレル夫人から断りすぎるのもよくないとの声が上がり……今後のため、ペイジン達との良い関係のために、そのお詫びを受け入れることになったのだった。
「こちらは獣人国で最高級とされる生地だでん、布の質はもちろんのこと、使われている塗料も極上……意匠を描いたのも超一流の職人とケチのつけようがないでん。
もちろん手触りもよく、どうぞどうぞ触っていただきたいでん」
と、そんなことを言いながら黒塗り馬車の前でしゃがんだペイジンが、両手で持ち上げた花柄の生地をそっと差し出す。
するとセナイとアイハンは言われた通りに手を伸ばして、それに触れて……そうしながら言葉を返す。
「素敵な布地ですね、これはどんな服にしたら良いのですか?」
「きれいなはながらだとおもいます、そちらのしょうにんに、したててもらうことは、できますか?」
普段とは違って丁寧で静かで、ゆっくりと響く声にペイジンは小さく驚きながら、その問いに丁寧な答えを返していく。
今のセナイ達は、ダレル夫人に教わった貴族令嬢としての態度を徹底している。
相手の言葉を否定せず、疑問に思ったことは素直に質問をする、そうやって相手の話を引き出して……相手の言葉や文化を尊重する。
セナイとアイハンなら婦人会の皆に手伝ってもらいながら、自分好みの服を仕立てることが出来るだろうけども、獣人国の最高の布地をそうしてしまうのではなく、あくまで獣人国の技術で獣人国の服として仕立ててもらうほうが良いと考えている。
そしていつか正式に獣人国に行くことがあったなら、それを身にまとって、獣人国への敬意を表したいとも考えているようだ。
ペイジンはそんな様子を察してか、普段とは全く違う態度で……貴族令嬢へ接する態度でもってセナイ達へ言葉を返していて……セナイ達の意図を察した上で、良い練習相手となってくれているようだ。
そんなペイジンの後ろにはペイジンの息子のドシラドの姿もあり……以前来た時に、セナイ達と元気に遊んでいたドシラドは、セナイ達へと尊敬の視線を向けていて……セナイ達はそれに静かに微笑み返してから、ペイジンとの会話を進めていく。
私達はそれを黙って見守り……見守りながら手元の目録にも目を通していく。
今回ペイジン達は、馬車二台分の詫びの品を持ってきている。
まず先程から紹介している布地が結構な量ある……私には細かいことは分からないが、アルナーが言うには20人か30人分の服を作れる量があるらしい。
次にアクセサリー……まとめた髪に刺して固定するという不思議な髪留めなど、獣人国特有の物が多いようだ。
髪飾り、首飾り、腕輪……何かにぶら下げるらしい何か、どう使うのか分からない太いベルト……などなど。
あとは装飾付きの短剣も何本かあった、ペイジンが言うには女性が身を守るために常に持ち歩くものらしい。
他にも絵画や芸術品……薬や茶も結構な量があって、宝石なども結構な量がある。
一財産どころではない量で……詫びだとしてここまでの量は必要ないだろうと思ってしまうが、ペイジン達が好意で揃えてくれたものだからなぁ、セナイ達がああやって受け入れている以上は、何も言うべきではないのだろう。
なんてことを考えながら目録を読み進めていると、家具なんかもあるようで……名前からはどんな家具かは分からないが、とにかく豪華な代物であるようだ。
ラデンとかなんとか……獣人国の細工がされていて、そう言えば貝殻を加工したものだとか、ペイジンがそんなことを言っていたな。
……貝殻か、そう言えば獣人国では海産物が宝として扱われることが多いみたいだなぁ。
真珠もそうだし、他にもサンゴとかいうのも宝として重宝されているようで……ゴブリン達が頑張ったなら、結構な収入になるのかもしれないな。
冒険への投資への見返りとしてそれらの品を送るとなったら、ペイジン達も喜んで投資をしてくれるかもしれず……セナイ達とのあれこれが済んだなら、そこら辺の話をしても良いのかもしれない。
その前に皆と軽く話し合う必要があるかもしれないが……と、隣で一緒にセナイ達のことを見守っていたアルナーへと視線をやると、アルナーはすぐに察して動き始めてくれる。
踵を返して代表者へと声をかけて……必要な者達を集めてくれるようだ。
「ここはお任せください」
更にはダレル夫人がそう言ってくれて……それを受けて私は、ゴブリン達の意見を聞くために、鍛練をしているだろう小川へと向かう。
本当にそういったことが出来るのか、ゴブリン達の負担にならないかなどなど、まずはゴブリン達の意見を聞くべきで……小川へと向かった私は、早速ゴブリン達へと声をかけるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回はペイジンとゴブリン達のあれこれの予定です




