ナルバントと共に
・登場キャラ紹介
・ディアス
主人公、人間族。戦い方は戦斧での力尽く。
・ナルバント
洞人族。戦い方は今回明らかに。
・アルナー
ヒロイン、鬼人族。今回の出番はちょっとだけ、戦い方は弓矢で狙撃、馬での突撃。
ナルバントと共に村に戻り、アルナー達に狩りにいってくると声をかけて、アルナーから、
『冬は狩りが何よりの男気の見せ所だ! 頑張ってこい!』
なんて言葉をかけられた私は、ユルトから戦斧を持ち出して肩に担ぎ、荷車を引きながらどすどすと足を進めるナルバントと共に、モンスターを狩ってその魔石を手に入れる為に、草原北部に大きく横たわる岩山の麓へと足を向けた。
北へ進めば進むほど空気が冷たくなり、風も強くなって枯れ草の姿すら見えなくなって……荒野と言って良いような光景が広がってきた頃、前を進むナルバントが声をかけてくる。
「儂らは見ての通り手足が短い。故に素早く動くだとか、器用な戦い方だとかは得意としておらん。得意とするのは力ずくの正面突破じゃ!
力と体力には自信があるでのう、大きな武器を持って大きな盾を持って、分厚い鎧を身にまとってがっしりとした兜で頭を覆って、がむしゃらに突撃するのが一番だと思っておるのう。
どんなに重い鎧でもどんなに重い武器でも、儂等の力と体力があれば苦にならん……身体が小さいおかげで大きな円盾があれば全身を覆い隠すのも容易じゃからのう、そんな儂等が10人か20人もおれば、どんな砦だろうが、城だろうが落とすことが出来るという訳じゃのう」
「それはまた……凄まじいんだな?」
突然そんな話をされて、一体何を言いたいのだろう? と、言葉を返しながら私が首を傾げていると、振り返ったナルバントが大きなため息を吐いてから言葉を続けてくる。
「モンスターとの戦いの前に儂等の戦い方を教えておきたかったのと、いざ戦争になったら儂をそう使えという話じゃ。
たとえ煮え油をぶっかけられようが、特別性の産毛に覆われた儂等の肌は耐えるからのう……手足の生えた破城槌だとでも思えば良い」
「……なるほど。
だがナルバント……私はその、城を攻めるだとか砦を攻めるだとか、そんなことをするつもりは一切無いぞ?
盗賊やモンスターが出たら追い払ったり狩ったりはするだろうが……戦争はもう懲り懲りだからな、自ら起こす気が無いのは当然として……何処かで起きたとしても関わる気は無いよ。
このまま平和に……この草原でイルク村の皆とやっていければそれで良いんだ」
「ふんむ……戦争の英雄などと呼ばれているなんて話を聞いたから好戦的なのかと思えば、そうでもなかったか……。
ならまぁ……盗賊だの何だのが出た時には今の話を思い出すと良い。
儂等は機動力には欠けるが、馬にでも牽かせて、その勢いのまま戦場に投げ出して貰えればそのまま戦ってやるからのう、何なら投石機で儂を打ち出しても構わんからのう、人間程度の盗賊であれば、100や200いたって問題無いからのう」
そんな冗談としか思えないことを言ってナルバントは、荷車をそこらに停めて……何故だか地面に伏して地面の匂いを嗅いだり、地面に耳を当てたりとし始める。
そんなナルバントの側へと歩いて行って、じっとナルバントのことを見つめて……自分もその一連の行為をやった方が良いのだろうかと、地面に膝をついて屈もうとしていると、ナルバントが呆れたような顔で、呆れ半分の声をかけてくる。
「……お主は一体何をしようとしておるんじゃ」
「い、いや、ナルバントがやっているから、私もやったほうが良いのかと……」
「儂等にしか出来んことだから真似などせんで良い。
これは長い間、洞暮らしを続けてきた儂等だからこそ出来る、特技みたいなもんじゃからのう、真似しようと思って真似出来るようなもんじゃないわい。
とりあえずは、ここから西にもう少しいった所に何かがおるようじゃから、そこに行ってみるとするかのう」
そう言ってナルバントは、西へと向かいながらその特技についての説明をし始める。
ナルバント達は長い間、洞の中……洞窟の中で生活をしていた。
洞窟の中では壁や地面から響いてくる音、振動が何よりの情報源なのだそうで、ああやって地面に耳を当てることでそれを感知することが出来るらしい。
相手の位置や数、大体の重さと身体の大きさ、場合によっては相手の種族は何であるのか、どんなモンスターであるのかさえ、感じ取ることが出来るのだそうだ。
他にもナルバント達は、山から流れてくる水や、山近くの土の匂いや味などから、その山がどんな山なのか……どんな鉱物が埋まっているのか、どうやって出来上がった山なのかといったことも分かってしまうらしい。
私からすると土や水なんてどこでも一緒の味、一緒の匂いだと思うのだが……ナルバント達からすると、地方によって塩と砂糖くらいには違いが出るもの……なんだそうだ。
「たとえばこの山、中々良い質の鉄鉱石が採れるようだのう。
毒気も少ないようだし、しっかりとした坑道を掘ってやれば、かなりの量の鉄が採れる、良い鉱山になってくれるだろうのう。
他の金属は残念ながら少ないようだが……この感じだと何処かに塩湖があるかもしれんのう。
良い具合の塩気を含んだ地層がある感じがするからのう」
と、山をじっと見つながらそう言うナルバントに、私はなるほどなぁと頷いてから言葉を返す。
「だがこの山を鉱山にするのは難しいかもしれないなぁ。
この山周辺はモンスターの住処というか、群生地のようになっているようだし、アースドラゴンのような厄介な奴まで出現する地帯だ、モンスター達をどうにかしないことには、鉱山も何も無いだろうからなぁ」
「……それならそうしたら良いだけの話じゃろう。
戦争する気がないというのなら尚の事、軍を編成した上でモンスター共を狩り尽くして、その力を外の連中に見せつけてやれば良い。
そうしたらお主みたいな呑気者に戦争を仕掛けようなんて馬鹿な連中は皆が皆、腰が引けてしまって手出しをしてこなくなるだろうからのう」
ナルバントと並んで足を進めながら……その言葉に何と返したら良いものかと頭を悩ませていると、そんな私の前にナルバントが、その短い腕をぐいと差し出してくる。
そうしてナルバントは無言のまま、仕草でもって前を見ろとそう伝えてきて……私はそれに従って何も言わずに、前方を……岩がゴロゴロと転がり、何本もの木が堂々と立つ荒野の一帯をじっと見つめる。
少しの間じっと見つめて……「何も居ないじゃないか」とそんなことを言いかけた私は、そこでようやく前方の光景におかしいところがあることに気付き、目を擦ってから前方を見て……もう一回目をこすってから前方をしっかりと確認する。
数は十本以上。
青々とした葉を豊かに生やした大きな木がそこに生えていて……なんだってこんな所に木が生えているのか、冬だというのに何故あの木は枯れていないのかと困惑する。
(トレント、木に化けて人や獣、鳥を襲うモンスターじゃが……こんな所にいるとなんとも間抜けに見えるのう。
連中は厄介な魔法を使うが……坊、儂が作ってやったお守りは身につけておるかのう?)
困惑する私に、ナルバントが小さな声をかけて来て……私はその声になるほど、と頷いてから小さな声を返す。
(ああ、肌身離さずってことだったから、首から下げてシャツの下にしっかりと押し込んである)
(ならば重畳、儂の髭とそのお守りが連中の魔法を防いでくれるからのう。
その上儂等の武器は斧じゃ、奴らと戦うにはこれ以上無い武器だろうのう。
……更に連中は魔石だけではなくあの体本体も良い燃料になってくれる……全く幸運というかなんというか、ありがたいったら無いのう)
と、そう言ってナルバントは、荷車からそっと手を離し……荷台にある柄の短い両刃の斧をしっかりと掴み取り、構えを取る。
それを見て両手でしっかりと戦斧を掴んで構えた私は……ナルバントと一緒に、トレント達の方へと駆けていくのだった。
お読み頂きありがとうございました。
次回はVSトレント戦です。
力ずく+力ずくコンビ大暴れ?




