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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第六章 春を待ちながら

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メーアの言葉と……

・登場キャラ紹介


・ディアス

 主人公。メーアの言葉は分かるような分からないような、ニュアンス的理解


・ナルバント

 洞人。村に来てまだ数日の新参者。


・エゼルバルド

 メーア。少し大柄でフランシスの良きライバル、妻がたくさん。


・メーアの六つ子達

 フランシスとフランソワの子、元気いっぱい


・エリー

 人間族。かつてディアスに育てられた元商人、メーア毛及びメーア布の名産品化を画策中


 それからあれこれと、割った薪を積み上げながらナルバントと言葉を交わしていると、そこにエゼルバルドが、その毛をふさふさと揺らしながらこちらへとやってくる。


 私に何か用でもあるのかと身構えていると、どうやらナルバントの方に用があるようで……ナルバントの足元へとやってきたエゼルバルドがくいと顔を上げて……力強い視線、態度で声を上げる。


「メァー、メァメァメァ、メァー!」


「なんじゃ……? 織り機をもっとたくさん作れじゃと?

 そりゃぁ追々数は増やしていくつもりじゃが……木材の質と機嫌を見ながらの作業になる。どうしたって時間はかかるし、そうホイホイと作れるもんじゃぁないぞ」


「メァ! メァメァメァーン! メァメァ」


「……まぁ確かにそうじゃな。

 織り機で編めば手織りよりは綺麗に、丈夫に出来上がるが……ああ、そうか、主等にとってはそこが肝なんじゃな?

 丹精込めて作った毛を少しでも綺麗に、長持ちするように使って貰いたい……か。

 ああ、分かる、分かるとも、主等もまた職人であったという訳じゃな」


「メァァン!!」


「分かった……そういうことであれば出来うる範囲で急ぐとしよう。

 ……だが、儂もまた職人の端くれよ、良い仕上がりのためには時間をかけることもあると、理解をして欲しいもんじゃな」


「メァ! メァー」


 そう言ってエゼルバルドは深く頷いて……少し離れた場所で様子を見守っていた妻達の元へとタタタッと駆けていく。


 最近妙に張り切って毛を伸ばしているというか……村の周囲の草を食べ尽くす程の勢いを見せていたのは、織り機を意識してのことだったのか。

 

 ナルバント達が織り機を作ってくれたことで質の良いメーア布が出来上がるようになった。

 それに応えてエゼルバルド達もまた質の良い毛を作ろうと頑張っていて……そうやって頑張っているからこそ、更に多くの織り機でもって良い布を織って欲しい。


 ……と、そういうことなのだろうと感心していると、鼻息をばふんと吐き出し、髭を大きく揺らしたナルバントが、エゼルバルドに負けない力強さで声を上げる。


「まったくもって働きがいのある村じゃのう!

 鈍っていた魂に活が入って、力が漲ってくるのう!」


 職人魂に火が点いたのか、そう言ってからその太い両腕をぶんぶんと振り回すナルバント。

 

 その様子をじぃっと見つめた私は……ゆっくりと口を開く。


「……エゼルバルドはああ言っていたが、あくまでナルバント達のペースで、無理の無いようにやってくれたらそれで良いからな。

 それと、あれだ……」


「この歳になってまで無理をしようなんぞ元から考えておらんわい。

 それと、なんじゃ……?」

 

「……ナルバントは村に来たばかりだというのに、随分とはっきりとメーアの言葉を聞き取れるんだな?

 私にはまだそこまではっきり判らないというか、なんとなくしか言葉の意味が伝わってこないのだが……」


「……ああ。まぁ、それはその……なんじゃ。

 諦めずに頑張っておれば、坊でもそのうち聞き取れるようになるじゃろうよ」


 と、適当に受け流すかのような態度でそう言ったナルバントは、ここに来たそもそもの目的であるらしい木材の吟味を始めて……薪になる前の何本かの木材を肩に担いですたすたと、足早に立ち去ってしまうのだった。




 まるで逃げているかのようなその背中を見送り、頭を一掻きしてから……さて薪割りの続きだと戦斧を構えていると……ナルバントと入れ違いになる形でメーアの六つ子達を連れたエリーが、両手に大きな布袋を抱えながらこちらへとやってくる。


「ミァミァ! ミァー!」

「ミァミァミァ~」

「ミァッ、ミァ~」

「ミァミァミァミァ」

「ミァ~~」

「ミァ~ミァ~」


 エリーの足元で六つ子達がそう声を上げると、エリーは、


「あらぁ、そうだったの?

 それは楽しかったわねぇ。

 でもあれよ、竈場は危ない場所でもあるから、遊ぶ時は十分に気をつけて、皆の迷惑にならないように気をつけなきゃ駄目よ」


 と、そう言って六つ子達を嗜める。


 すると六つ子達は「なんだか面白くない」と、そんなことを言いたげなむくれた表情をしながらもこくりと頷いて……そうしてからダダダッとリーダー格である長男フランを先頭にして何処かへと駆けていく。


 メーアはとても賢く、野生から人の下へとやって来た場合は一週間程で人の言葉を覚えることが出来て、ある程度の会話も可能になる。

 では人の側で生まれたメーアの赤ん坊はどうなのかというと……それはその家の会話の多さや、どれだけ赤ん坊に話しかけてやるかにもよるが、早ければ2・3日程で言葉の意味を理解し始めるらしい。


 そこから更に2・3日もあれば会話も可能になるのだそうで……小さな身体で生まれた六つ子達は、普通のメーアとはまた事情が違っている訳だが、それでもそんな風に会話らしい会話が出来るまでに言葉を覚えていた。


 まだまだ鳴き声はたどたどしく、間違って言葉を覚えていることもある為、あくまで簡単な会話までしか出来ないそうだが……そうだとしても凄い話だ。


 そしてそんなメーアの赤ん坊達を相手に普通に会話が出来ているエリー……。


 うぅむ、私ももう少しメーアと接するようにしたほうが良さそうというか……いい加減言葉をはっきりと理解するための勉強をするべきなのかもしれないなぁ。


 ナルバントがあの様子だとオーミュンやサナトも普通に会話が出来ていそうだし……半年以上経ってもはっきりと理解出来ていないのは問題なのかも……知れない。


 ……と、私がそんなことを考えて「うぅむ、うぅむ」と唸っていると、エリーが抱きかかえた布袋をぐいと持ち上げながら、喜色に満ちた大声を上げてくる。


「お父様! 冬服が出来たわよ!

 とりあえずお父様の分と、アルナーちゃんの分と、セナイちゃんとアイハンちゃんの分!

 確認と試着の方、お願いできるかしら!」


 その言葉に、ああ、ついに完成したのかと笑顔で頷いた私は……少しだけ嫌な予感がして笑顔を固くしながら言葉を返す。


「確認も試着も構わないのだが……以前の山賊のような格好はその、なんだ、普段遣いするには少し問題があるぞ?

 出来るなら大人しい、普通の格好が良いのだが……」


 そんな私の言葉に対し、エリーは喜色に満ちていた声を低く重く響く、凄みのある声へと変える。


「……そんなことわざわざ言われるまでもねぇわよ!

 これから売り物にするつもりだっていうのに……あんなものどうやって売り込めっていうのよ!!

 あれはあくまで間に合わせ、こっちの……私の精魂を込めた完成品をちゃんと確認して頂戴な!」


 そう言ってエリーは布袋をどさりと地面へと置いて……その中身を勢い良く、ばさりと取り出し、私に見せつけるかのように広げて見せてくるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

予定していた冬備えはあまり出来ませんでしたが、それはまた次回に。


そして次回はこの続き、冬服公開など、です。

ちなみに冬服はイラストレーターのキンタさんにデザインして頂いたので、そちらのイラストも同時公開する予定です(あくまで予定)



そしてお知らせです。

前回もお知らせした通り、4巻の特集ページが公開となりました!

試し読みが出来る他、素敵な口絵などもご覧頂けますので、下記リンクからぜひぜひお立ち寄り頂ければと思います!


そして……その4巻ですが、既にいくつかの書店で入荷しているようです。

書店まで足を運んでくださいとは言えない近況ですが、特典込みでの通販を対応してくださってるお店もございますので、そこら辺も特集ページなどで確認頂ければと思います。



そしてさらにもう一つお知らせです


コミカライズ第3巻の発売日が、6月12日に決まりました!

既に一部通販サイトでは予約も始まっているそうです!

こちらについては追々、情報が入り次第お知らせさせて頂きますので、ご期待頂ければと思います!

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― 新着の感想 ―
[一言] あぁ…メーアの声ってひょっとして魔力乗ってるのか そりゃ大変だ
[気になる点] 最近、コロナで本屋がどんどん休業していて、見に行けないんですよね。 まあ、来月には確認してみます。 [一言] 誰かから引き継いだ領地ではなく、一から作り上げた村だけあって、ディアスのイ…
[一言] 冬服はモンゴル方向に逝くのかエスキモー方向に逝くのか(スットボケ
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