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第316話 九州征伐 その11 九州分割統治

木曜日から本編完結まで毎日投稿です。

 豊後国 府内


 島津義弘と島津歳久が長崎・武生たけおまで兵を進めたが、そこで進軍を一時停止したそうだ。筑前は博多の東、筑後は問註所攻めの途中だ。このタイミングで島津氏から当主の島津修理大夫貴久が豊後までやってきた。会見では、先ず信長が主体となって話す。


「織田左中将様と斎藤中納言様に御会い出来、恐悦至極に御座いまする」

「良く来て下さった、修理大夫殿」


 島津貴久は既に老齢といった人物だった。白髪混じりで皺の深い顔で、烏帽子含め正装で固めた服装である。


「我等としては、島津には薩摩・大隅に加え、今兵を向かわせている奄美を任せようと考えている」

「奄美、で御座いますか」


 明らかに驚いた表情の貴久殿。島津は恐らく天草の宗主権あたりを求めてくるだろうと思っていたが、信長は天草と島津を分離したがっていた。唯一の外国人居留地を長崎にする計画を考慮してのことだろう。ここからは俺の計画も多いので俺が話し相手に代わる。


「実は先日、明からサトウキビを輸入してね」

「中納言様、其れは真に御座いますか?」

「まぁ、宣教師にも協力して貰ったし、結構な銀が必要だったけれどね」

「何と」

「で、そのサトウキビを奄美で栽培して欲しいのだ。今後砂糖を外国からの輸入に依存するのは金がかかりすぎるからね」


 奄美は気候的にもサトウキビの生産が可能だし、前世でも黒砂糖などの名産地だった。この砂糖の売却益を島津への褒美とする形だ。病院で経口補水液を用意するのに、幼児向けも考えれば砂糖は欠かせない。今はハチミツを使っているが、これでは乳幼児向けに使えないし。


「奄美で栽培が軌道に乗ったら、阿波と讃岐でも栽培する。其れでも、砂糖の栽培量は足りないくらいだろう」

「か、畏まりました。で、天草なのですが」

「天草は北肥後を管理する織田の管理下に入る」

「左様で、御座いますか」


 隈本を含む北肥後は織田、日向は三好が管理する予定だ。うちは豊前豊後に加え、肥前も管理下になる。つまり龍造寺の復興を俺が支援する形になる。織田の取り分が少なめなのは、中国地方を織田がかなり多めに受け取っているためである。


「今は先ず大友残党を倒す事だ。豊前豊後日向は落ち着いたとはいえ、まだ全てが終わった訳ではない」

「はっ。身命を賭して」

「頼む」

「其れと、今後を考え京に屋敷を置き、息子の一人を常駐させたいと考えておりまする」

「成程。良い事かと。早速此方で屋敷の敷地を用意しておきましょう」

かたじけない」


 四男の家久が来るらしい。しかし、某戦国ゲームでのイメージでは島津とはすなわち四兄弟だったので、当主がまだ彼らの父親な事に若干の違和感がある。それは今現在が、前世の史実だと桶狭間から僅か5年後だからか。色々感覚のずれが大きかった気はする。宇喜多も暗殺とか何かしかけてくるかと思ったけれど、そういうのもなく終わりそうだし。


「龍造寺家ですが、当主だった山城殿(龍造寺隆信)は討死なされました。一族の者は慶誾尼様と嫡男である長法師丸殿の他は数名しか生き残りはおりませぬ」

「そうか。いや、保護してくれて助かった」

「肥前から脱出する際、成松・円城寺等家臣が奮闘したと聞き及んでおります。惜しい者を多数亡くしたと」

「そうか。佐嘉を押さえたら丁重に弔わねばな」


 本来なら龍造寺は、家を残すためうちに一族を預け、もし俺達と敵対しても家が残るようにという方針だった。しかし数年前から龍造寺隆信の母である慶誾尼けいぎんに様は親織田・斎藤を明確にして大友氏に反発した。少弐氏との対立もあってだが、周囲から孤立しながらも反大友を変えず、結果として少弐氏を一時は勢福寺城から追いだすところまで押しこんだ。もしも大友からの大規模な介入がなければ、今頃は肥前で覇を唱えることが出来ていたかもしれないくらいだ。


「肥後は如何なっている?」

「隈本城が固く守っておりまして」

「(甲斐)宗運入道は無理攻めをしていないと聞いたが」

「我等の援軍が着きましたので、今頃は攻め始めている筈に御座います」


 島津の援軍・相良の援軍・阿蘇の兵を合わせると3500にはなる。これなら普通に考えれば大丈夫だろう。


「今後、御子息にも官位等を斡旋しよう。帝にも確と報告しておく」

「ははっ」


 島津としては日向の血縁である北郷ほんごう氏なども気になるだろうが、自力で日向を取れなかった以上無理な主張は抑えたのだろう。それに二か国を有する大名など殆ど残っていないのだし、影響力は十分ということかな。


 ♢


 博多を追われた神屋紹策が豊後に来た。博多は今後も九州の中核都市になるので、復旧は急務になるだろう。


「残党は旧高橋・立花領に籠っている様で御座います」

「秋月旧臣の案内で宝満城等は落とせたが、博多への陸路を塞いでいる訳か」

「松浦の水軍も博多の東におりまして、今は中納言様の水軍の到着を待っている状況に御座います」

「町の被害は?」

「以前の様に戻るには数年かかるかと。我等の屋敷も接収されておりましたが、今回燃やされたそうで」

「そうか。支援金は出す故、安心致せ」

「父の病の時に重ね、此度もお世話に成り申し訳御座いません」

「いいさ。その代わり、朝鮮との話し合いの時は頼むぞ」

「はっ。そう様も左中将様と中納言様に御会いしたいと申しておりました」


 対馬の宗氏は大友氏に脅されて朝鮮貿易に協力していたが、早い段階からこちらと連絡をとっていた。俺達の九州上陸段階で阿蘇氏同様大友氏から離反し、現在も対馬に籠っている。松浦水軍に挑みかかっても勝てる国力ではないしな。


「で、朝鮮側の感触は?」

「明との朝貢があります故、やはり今の儘とはいかぬかと。真に行うので?」

「やる。足利の公方はもういない。其れを正式に伝え、其の上で通商するか否かを問う」

「『日本国王』号も使わぬとなると、難しいですな」

「明が海禁政策を継続するとしても、もう長くは続かぬだろうよ」

「明の国力は絶大に御座いますが」

「張居正の改革だけでは上手くいかぬだろうからな」

「はぁ」


 前世で習った流れなら、そろそろ張居正が実権を握る。彼の改革は一時明を強くするが、彼の死後その改革に不満を持っていた人々と万暦帝が張居正の努力を無駄にしてしまい、明の衰退が決定的になる、と習った。そして、それに合わせて女真族が台頭するのだ。だから、明とはそこまで仲良くする必要がない。干渉する必要もない。朝鮮とも無理はしなくていい。


「とはいえ、対立する訳にもいかない。対馬は今後の為に前線基地とする。博多はその物資集積地であり、長崎で行う対外貿易の中心地だ。石炭の国内流通も担って貰う」

「はっ」


 とにかく博多の港整備は、九州での最重要事項だ。こちらも資金を出すことで商業課税への流れを加速させられるしね。


 ♢


 来訪者が落ち着いた頃、筑後戦線から朗報が届いた。柴田勝家・松平信康らの軍勢が、蒲池鑑広・蒲池鑑盛の両蒲池氏が率いる軍勢に勝利し、問註所氏を滅ぼしたそうだ。滝川隊は筑前国境に展開し、松平隊は黒木・田尻両氏と合流して筑後西部統一を目指し、柴田勝家は筑後東部統一の後肥後北部へ進出する予定だ。

 この報せと同時に国許からも連絡が入った。信長に会って今後の予定を伝える。


「信長、冬になったら俺は一旦戻るぞ」

「蒸気機関とやらの状況確認か」

「其れもあるが、中距離電信が上手くいったそうでな。此れで美濃と那古野を先ず繋がねばならぬ」


 蒸気機関と高炉へ九州の石炭を供給した結果もほしいが、とにかく全国を電信で結びたい。これと鉄道敷設ができれば世界は大きく変革するのだから。


「電信が完全に完成すれば、京にいながら那古野に命令が即時出来る。今後の我等の為にも、どの程度完成出来たか、直ぐに敷設出来るのか等を調べねばな」

「京から那古野へ、早馬要らずか。其れは夢のある話だ」


 まぁ、まだ秋までは時間がある。そこまで九州で頑張るとしよう。

色々な後処理が進んでいます。九州も大詰めです。


島津も四兄弟の時代にわずかに届かず。このあたりが島津飛躍とはいかなかった最大の要因になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 島津義弘、関ケ原の島津の退き口で名を馳せた猛将ですね なるほど、僅かに時間が足りなかったんですね 彼らがもう少し年と経験を積んでいれば、島津は本当に怖い勢力になってただろうな…… まあ、まだ…
[一言] 明の海禁政策は地方官吏と結んで密貿易やってる郷紳達にしてみれば新規参入者を妨害するための格好の手段でしたが、この年代まで来ると海禁廃止が優勢になってきて緩和する流れですしね。明の取締を逃れる…
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