第299話 検地と物流
毎日投稿、5日目。頑張ります。
伯耆国 洗川
浅井義政・筒井順慶らを荼毘に付した後、十分な寄進とともに近くの寺院で弔ってもらうことにした。その上で、遺骨の一部を近江・大和の彼らの菩提寺にも葬ることにした。八橋城の近くに筒井順昭の墓も見つかった。東南向きのその墓は、大和に向けたものだろう。捕虜となった者によれば、亡くなったのは2年前だそうだ。肺炎だったらしいが、医師に掛れる筈もなく、そのまま息子に全てを託して息を引き取ったそうだ。
「朝敵とは言え、死して尚辱める事は許さん。近隣の人々にもそう伝えよ」
「屋敷を燃やされた乙名には多目に見舞金を渡しておきます」
「頼む」
美作・伯耆の戦争は終わった。あとは治安維持を宇喜多と尼子に引き継いで終わり、ではない。
「成安は美作に入ったか?」
「予定通りに。検地を進めております」
「良し」
美作・伯耆は検地の上で宇喜多と尼子に引き渡すという約束になっている。周防・長門・石見も検地を進めるので、大部分の国は検地していくこととなる。
検地の統括は成安幸右衛門が担当し、尼子や宇喜多の収入をこちらで把握しておこうという形だ。
「此れで検地の実施国が過半を大きく超えるな」
「九州は仕方ないにせよ、安芸・備後・備中は毛利が、土佐は長宗我部が自力で行うとの事ですので、かなり進むかと」
伊予は三好が、周防長門石見は織田が行う。播磨は昨年中に終わっているので、本州四国のデータはもうすぐ揃うだろう。東北は九州と同時になるか。この検地と人口調査(これは織田・三好・斎藤の領内で実施中で全国に拡大予定。うちが最初に始めてそのノウハウを共有しつつある)で総石高と総人口を把握し、警察・軍・消防の人数を確定させようとしている。警察・軍・消防への人材登用は、初期は武士から行うが、最終的には職業選択の自由まで段階的に移したいところだ。
「伊予は宇和島が落ちたそうだが、年内の九州攻勢には厳しそうだな」
「周防・長門の引き渡し後の処理が多いですからね。両国については滝川殿と丹羽殿が移封されるとか」
「最終的に、九州方面の管理は三好主体で滝川・丹羽・九鬼・水野を置く心算だからな。信長も水軍の主力は西に置きたいのだろう」
九州に海軍基地を4か所、呉に毛利系の出身者を集め、伊予と合わせて6か所を海軍の主力地とする計画だ。これに志摩・小浜・能登・横須賀・函館・佐渡・樺太・台湾を加えて四方への対策とする予定だ。東方と北方への対応については色々と信長から疑問が出たが、地球儀で説明したら納得してくれた。逆に、陸軍駐屯地は今後詰めないといけないだろう。日本は海洋国家だから、陸軍は本質的に多すぎると良くないし。非常時に大量動員できる体制を整えることが重要となる。
「各地の逃走兵の把握は?」
「美作はほぼ終わった様で。自己申告すれば罪に問わないとしたのが効いたかと」
「名前は押さえておけ。名簿を宇喜多と尼子に渡す」
「そして、行く行くは『刀狩』でしたか」
「装甲艦を造るには鉄が足りん」
金生山で生産している鉄は、現在鉄筋コンクリートの建築物の試作やら鋳鉄砲の試作やら色々と使うことが多く、鉄不足は常に深刻だ。釜石を使えるようになっても、最初は苦労するだろうし。
「まぁ、筑前筑後を織田と三好で押さえれば筑豊炭田が確保出来る。石炭燃料があれば出来る事も増える」
官僚の人材不足もまだまだ深刻だが、畿内の学校から少しずつ人材が現れている。ここは頑張ってもらうしかない。
♢
伊予国 湯築城
収穫の季節。各地から良くて平年作、多くが不作との報告が相次ぐ。俺が織田・三好首脳陣の集まっている湯築城に行くと、西国一帯の収穫についての報告がきていた。
「滝川からの報告だと周防長門は何とかなりそうだ。だが土佐・伊予は壊滅的だ」
「此方は美作も伯耆も種籾まで食べ尽くしていて収穫は無しと見ていいので、うちが越前から運ぶしか無いだろうな」
「播磨がかなり安定してきたのは朗報だな。備前と因幡から運ぶだけでなく、播磨から上月経由で運べる」
「尾張から播磨まで運ぶ分は九鬼に頼めば良いか?」
「うむ。俺からも命じておこう」
それらとは別に、伊予と長門には来年にかけて、九州に攻めこむ為に必要な糧秣を運び込んでおく必要もある。食料の運搬も含め、準備には数か月かかる見込みだ。
次に九州の情報を三好長逸が報告してくれる。
「龍造寺は佐嘉城を追われたそうで御座います。生き残りは島津領に数名逃げ込んだようですが、当主の山城守(隆信)は討死したと」
「そうか。義兄上の保護している一族には厚く報いねばな」
「無論だ」
佐嘉の陥落で北九州は大友系の勢力で統一された。指揮を執ったのは戸次鑑連だ。これにより、筑前筑後の兵はフリーハンドとなった。肥前兵はそのまま天草入りし、島津を脅かしている。そのため、島津は日向からの撤退を余儀なくされた。伊東氏はこの隙に、島津に奪われていた一部の領地を奪還したようだ。
「島津としては我等が行く前に日向を支配下に置きたかったでしょうが」
「大友も莫迦じゃない。薩摩に近い天草を攻める事で島津の動きを封じている」
「島津は相良を動員したいのだろうが、相良と阿蘇は睨み合いを続けている訳か」
「其の阿蘇は、大宮司職さえ安堵されるなら我等が九州に上陸次第降る、と申しておりますな」
「上陸してから降るのでは、龍造寺との扱いの差は大きくなるがな」
「其れは承知の上だろう。でなければ時勢が読めていない」
当主が死ぬまでうちの味方をした龍造寺と同じ扱いなぞ不可能だ。誰も納得しない。
「物資の搬送とガレオンの派遣で今年は終わるか」
「奥羽からの報告を聞いた上で九州にかかりたいし、な」
「其れはそうだ。北は北でやらねばならぬ事が多いし、兵糧米の予測を立てるにも、動員する兵力を決めるにも向こうが如何なったかは知りたい」
まぁ、春までに島津が押し込まれるならそれはそれだ。美作と伯耆の安定化、周防と長門への移封、伊予の安定化と拠点確保、そして物資の集積。
やることは山ほどある。動かす兵が大きいほど、準備もまた大変になるのだから。しかもこれから冬になれば物資の運搬にも支障がでる。
「大友は食料を如何しているのか知っているか?」
「朝鮮より米が運ばれている様で」
「成程。対価は?」
「硫黄と銅と思われます」
「豊後は鉱山が多いからな」
硫黄も手に入る立地だ。最近までこちらが鏡などで輸出過多傾向だったので、今はちょうどいいのかもしれない。
「宇和島は使えるとして、攻め込む地は多ければ多いほど良い。何とか船を増やすのと、大砲を多く用意してもらう他あるまい」
「門司は少なくとも大砲を並べるのが絶対ですからな。斎藤様には長門側を御願いする形かと」
攻めの現在の担当予定は織田が半々、門司側がうち、豊後水道が三好となる。ただ、状況次第で日向上陸も考えたいところだ。
何にせよ、今回の美作・伯耆攻めの規模を大きく超える物資の運搬が必要だ。造船所もフル稼働になりそうだ。




