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第279話 大規模公共事業が近代国家への道を拓く

書籍版について、近日中に情報の一部解禁が始まる予定です。

お待たせしすぎて申し訳ないかぎりですが、もう少々お待ち下さいませ。

 山城国 京


 年越しを京で迎えた。1563(弘治9)年だ。本当は美濃でゆっくりしたかったが、高野山関連のこともありそうも言っていられなかった。改元するなら高野山攻めの後にしようという話もしていたから仕方ない。

 忙しいのは三好も一緒で、義兄長慶殿は摂津や堺、兵庫津、播磨などを常に動き回っていた。嫡男の式部大輔義興殿(式部大輔を長慶殿から継いだ)も伊予に出ずっぱりだったそうで、産まれた子供にまだ会えていないそうだ。とはいえ義興殿には十分最前線で戦えるだけの能力がある上、その跡継ぎとなる嫡男が産まれているのだからめでたい話だ。

 織田では年末に信長の側室に男女1人ずつ子供が産まれた。蝶は吉法師にかかりきりで他の子は容認しているそうだ。精神的に安定してきているのならいいことだ。


 年明け早々に三条の姫とうちの嫡男新九郎龍和の婚儀が行われる。京ですべきか美濃ですべきか悩んだが、三条の姫君が京で行うのを嫌がっているとかで美濃で行う事になった。家族がいない京にはあまり来たくないらしい。住んでいた時間も短くはない。辛いことを思い出すのだろう。

 これに合わせて龍和は官位が従五位上となり、美濃守兼典薬頭ということになった。三好の跡継ぎ義興殿は従四位下で1つ上だが、年齢的にはうちの方が早い感じだろう。龍和は名目上三条公頼様の猶子となっており、藤原朝臣としての立ち位置を強化しているのもあるだろう。

 俺が権中納言となることが決定。一条内基様が中納言となるのでその空位を埋める形だ。信長も権中納言。権官と正官双方が任命されることとなった関係で、大納言などが任命されて空いた枠に俺や信長、義兄上が入りこんでいる形だ。その義兄の長慶殿は刑部卿へ。これにより、一応全員が従三位ということになった。

 太政官の弾正台と刑部省の実務組織を掌握したので、令外官の検非違使別当も信長が兼帯して正式に司法・警察組織を全て俺達が掌握した。今後検非違使から警察庁への移行から組織改編を始めていく予定だ。


 ♢


 美濃国 稲葉山城


 分厚い鉄でできた窯をレンガで覆って、下から尾張炭団の炭で熱する。中の水が蒸気になって逃げ道を求め、上蓋が持ち上げられる。持ち上げられた蓋が連結した杭を落とし、一定まで持ちあがったことで別のシリンダーに流れた水蒸気を銅管で冷やす。蓋が落ちて杭が持ち上がる。杭の上げ下ろしで楮の繊維がバラバラになっていく。


「改良しなければならない点は多いですが、壊れずに数日稼働出来る様になりました」

「水車動力がない紙漉きの家にもホランビーターが置ける様になるな」

「人手が如何してもかかっておりましたからね」

「石炭が安定して手に入る様になったら織機も蒸気で出来る様になるかな」


 紙の生産能力は今も高いが、蒸気機関を導入できればさらに大量生産が可能になる。織機も水力依存でなくなれば工場の立地が変わる。水力に依存する関係で大雨の時は機械に被害がでないかいつも心配になるのだ。インフラが整って石炭の採掘・輸送手段が整えば(環境汚染は気にする必要あるが)大規模な工業化が進むだろう。排気に含まれる有害物質は不完全燃焼物質が多いので、完全燃焼させればいい。問題はその答えは知っていてもその方法を知らないことだが。これも研究をそのうち始めないといけないか。四日市喘息など四大公害病を始めとする環境汚染による健康被害は避けたいし。


「尾張には今後炭団に頼む炭が更に増えると伝えておく。実用化を進めてくれ」

「はっ」


 蒸気機関車に進むにはとにかく蒸気機関の改良が必要だ。研究・習熟を進めてもらうしかない。


 ♢


 尾張国 那古野


 那古野の湊に大きな正方形の石が次々と運びこまれる。いよいよ今年から那古野の港湾整備事業を始める。予定では25年かける大事業だ。埠頭をつくり、灯台を建て、防波堤を用意し、船の出入りルートを確立する。測量と計画の策定を7年前から信長と進めてきた。


「荷揚げ場にも屋根を造り、ある程度天候に左右されない状況にせねばな」

「義兄上が天に挑む湊にしようと言い出した時は驚いたぞ」


 今は木製のコロを使って運んでいるが、コロが固定されている運搬ルートとかクレーンも造りたいところだ。油圧を開発できる余裕があるかはわからないが。


「今の湊は大船が入るには向かない。浅瀬を一部埋めて大船の泊まれる湊にせねばならんぞ、信長」

「桑名も安宅船が入るのは厳しいからな。大船が入らねば経済の中心にはなれない、だったな」


 兵庫・博多・横浜・新潟。前世明治期に発展した港湾都市は大型船舶が泊まれる地だった。大規模な改良によって前世の名古屋は発展を遂げたが、それを再現するなら大事業を模倣しなければならない。とはいえ、そこまでの資金力があれば今頃天下統一できている。

 だから、少しずつ資金に余裕がある範囲で進めていく。後半10年で大金を投入して一気に整備を進める予定だが、天下統一が早まれば完成も早くなるだろう。


「政治の中心は如何するか決まっていないが、経済は大坂と那古野にする」

「本願寺の御坊跡もかなり計画的に整備を始めているからな」


 職人町だったのを水力が使いやすい地域へ加工関連業は移転させ、より大型の工場を用意した。空いたスペースを使って常設市を設置するだけでなく、楽市にすることで商業の活性化を図っている。堺商人も多くは大坂にも商店を構えている。今後は大坂を荷卸し港、堺を荷積み港にしようと画策中だ。


「藤吉郎を大津代官から那古野の総責任者にしたら驚いておった。彼奴の弟も手伝う様になって、故郷で大層歓迎されたそうだ」

「凱旋か。良い事だ」

「彼奴は義兄上の教えを己なりに考えて自分の物にした。佐々の弟もそうだが、そろそろ内治に目を向けられる者を大切にせねばな」


 戦偏重ではそのうち平和になるとその長所が生かしにくくなる。天下統一後も琉球から台湾方面への進出はヨーロッパ勢の動向次第でありえる。北海道の開発と樺太・千島列島開発も考えている。オホーツク海は可能であれば確保したい。だからこそ、戦だけの武将になられると開拓事業にさえ関われず、本当に一部の功労者以外には渡せるものが何もなくなりかねないのだ。


「権六も彼奴なりに考えておるし、滝川や丹羽、松平の様に文武両道と言える者が増えた。義兄上の家臣も優れた者が多いが、俺の家臣も中々だぞ」


 それはそうだ。天下人になれる器の人間が3人も所属している大名家だからな。


「俺は家臣に助けられている。其方も其れは忘れるなよ」

「無論。俺一人で此の広い領国は見られぬ。時が足りぬからな」


 時間があれば1人でもなんとかなると思っているのか。恐ろしい才能と自信だ。


 ♢♢


 伊予国 恵良えりょう


 2月。伊予に戸次紀伊守道雪が入った。本来九州の鎮護を第一としていた彼が角隈石宗とともに伊予に上陸したということは、大友がそれだけ伊予に本腰を入れたということでもあった。大友は13000を投入し、佐伯惟教・戸次鑑方・由布惟信・十時惟次・朽綱鎮則・田原親宏・黒木鑑隆といったそうそうたる布陣で宇和島に上陸した。

 この一報を受け、曲直瀬道三の健康診断を受ける為に一時帰京を予定していた三好式部大輔義興は予定を中止した。いくら叔父の十河一存と安宅冬康に加え篠原自遁・岩成友通らがいるとはいえ、総大将の自分が一時的にでも不在なのは危険と判断したのだ。


「産まれた我が子には会いたかったが、仕方あるまい」


 本来、宇和島は一条兼定が圧力をかけて機能を奪う予定だった港である。もしそれが作戦通りに進められていれば、大友氏は安全な上陸港がないため大規模な軍勢を送って来なかったかもしれない。


「敵は彼の鬼殿だ。迂闊な手は打たず、時間をかけて攻めるぞ」


 伊予遠征部隊は焦らず沿岸部の制圧と陸上の連携を重視する作戦を継続するとした。毛利が備中から使者を送って来ていたのも事態を好転させていた。吉川元春の治療に従三位参議斎藤権中納言義龍から医師が派遣され、元春が快癒したことを受けてのものだった。義龍は「敵に塩を送る様な物だ」と語り、毛利元就はその器に感服して進軍を止めたらしい。


「次の各家を継ぐ者の中で某が一番年上。斎藤の新九郎殿もまだ若く、織田の吉法師殿は戦を知らずに天下人の一人となろう。大きな戦を、戦場を知る者が居なければならぬ」


 次世代の統治者、その年長者として、強い使命感や責任感を彼は持っていた。少々の体調不良に気付かぬふりができるほどに。

1563年現在の官職一覧


関白   近衛前久(姉が足利義輝正室→吉法師正室の叔父)

太政大臣 西園寺公朝

左大臣  花山院家輔

右大臣  四辻季遠

内大臣  徳大寺公維

(准大臣)中院通為(加賀荘園を義龍が奪還)

左近衛大将 今出川晴季

右近衛大将 久我通堅

大納言  三条実教(養妹が斎藤龍和正室)

大納言  三条西実澄(実教義兄)

権大納言 勧修寺晴右

権大納言 九条兼孝(養姉が十河一存正室、まだ11歳)

権大納言 中山孝親(神宮伝奏)

中納言  一条内基(16歳)

中納言  庭田重保

権中納言 飛鳥井雅教(養妹が斎藤義龍正室)

権中納言 正親町三条実福

権中納言 斎藤義龍

権中納言 織田信長

参議   持明院基孝(大蔵卿)

参議   三好長慶 (刑部卿)

参議   冷泉為益 (民部卿)

参議   水無瀬兼成(従二位、三条西実枝実弟)

参議   滋野井公古(兵部卿)

参議   四条隆益(右衛門督)

参議   半井明名(治部卿、半井兄弟の叔父)

参議   清原枝賢(宮内卿)

※中務卿・式部卿は親王が務める

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この段階での体調不良無視は未来がヤバイのでは!?
[一言] 順調ではあるんだが、三好義興に不穏な気配が…… 史実では6月に倒れ、8月末に亡くなったんだよなあ ……久々に義龍の直々の医術が見られるのだろうか?
[良い点] 工業化が盛り上がってきました これぞチート小説の醍醐味ですね [気になる点] >関白   近衛前久(姉が足利義輝母 足利義輝の妻じゃないかな? [一言] 三好義興、史実みたいに早死にして…
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