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第266話 味方陣営が必ずしも自分の利益となる行動をするとは限らない

途中三人称が入ります。

 美濃国 稲葉山城


 春になった。信長は再び上野に向かったそうだ。蝶姫以外の側室が懐妊したそうで、このままいけば織田一門は安泰だろう。


 薩摩から土佐を経由してバルタザール ・ガーゴが那古野にやってきたらしい。

 尾張で丹羽長秀が出迎えを任されたそうで、しばらくしたらうちに来るそうだ。片眼鏡をかけていると耳役から報告があったので、ガラス職人に両目用のメガネを準備させている。


 中国情勢だが、毛利一門の吉川元春が備中に入ったため、庄氏は本拠を放棄して備前に逃げ込んだそうだ。長年庄氏を支えてきた庄為資を失ったばかりで、新しい当主の庄高資では耐えきれなかったのだろう。

 庄氏を保護したため、宇喜多直家は美作に出兵していた部隊の過半を備前に戻した。支援の薄くなった美作には赤松から佐用家の赤松政範が向かったそうだが、播磨内部の兵が動くのを三好家中では不安視する声が上がっているのだとか。


 そんな中国情勢の主役といっていい浅井元政は伯耆全土を掌握した。尼子側は因幡と美作に兵を送っていて、その上出雲の意思統一ができていないため完全に浅井に主導権を握られているようだ。そんな浅井の軍勢に、梅鉢の紋が確認されたらしい。筒井氏の紋だ。松永弾正曰く、


「逆賊が伯耆に集うとは、正に棄てられた地で御座いますな」

「伯耆に住む者に失礼だぞ」

「後醍醐帝の御代も隠岐島から蜂起致したので、誠に此れが彼の者の陰謀ならば風流だな、と」


 当然ながらそんな考えはないだろうし、後醍醐天皇は最後吉野に逐われている。縁起が悪すぎるだろう。味方するものもそうそういないだろうし。


「毛利は積極的に浅井と関わる様子は無いそうで。今は備中と周防、そして石見に執心しているとか」

「まぁ、石見の銀山を確保するのが第一なのは自明だからな」

「隠岐から出雲に出雲守(尼子義久)様が戻る計画もある様ですが、因幡が落ち着かねば如何にもならぬであろう、と」

「因幡は山名一門の1人が浅井に味方して荒れそうだな」

「尼子殿と武田又五郎(高信)が奮戦しているそうだが、元々山名の領国故難しかろう」


 織田家臣となった山名宗家は全面協力を渋っている。物資面の協力は滞りないが、やはり元々は自分たちの土地だったという意識が強いのだろう。因幡が戻ってくるなら伯耆でも美作でもどこへでも行き奮戦すると言っているとか。そんな複雑な山名一門の中で、浅井の誘いを受けて山名豊弘が浅井側に離反。義久殿が直々に鎮圧にあたっているとか。


「山中なる者の奮戦で因幡は尼子優位なれど、此の儘では美作が危ういですな。宇喜多の援護が薄い美作は浅井に狙われましょう」

「赤松も一枚岩では無いからな」


 以前大揉めに揉めた播磨だ。三好の実休殿が播磨入りしているが、油断はできない。黒田から報告が定期的にきているが、あまりにも不穏な状況のため黒田の嫡男を三好の筑前守義興殿に預けたそうだ。


「まぁ、全ては伊予の情勢次第か。三好は12000を動員したそうだが」

「讃岐守(十河一存)様と筑前守様が伊予に入りました。南部から一条様も」

「一条、か」


 戦国ゲームだと能力値最低だった記憶がある。実際はどうかわからないが、はたしてどうなるか。三好のためにも、そして公家の一条様とは繋がりもあるし頑張ってほしいところではあるのだが。


 ♢♢


 伊予国 金子城


 金子城は伊予東部の要衝であり、陸路も海路も伊予に向かう上で重要な位置にある。三好勢がまずここをおさえるため、水陸両軍を投入した。一方、一条兼定は兵4000で伊予南部から常磐城へ進軍中である。

 春の進軍開始後、十河一存が体調を崩して讃岐で一時療養したため進軍は止まったが、京から派遣された半井寿琳による治療で回復したことで再び進軍を開始していた。


「で、何故此方の支度が整う迄待って欲しいと願ったのに一条殿は動いたので?」

「いや、其の」


 金子城には一条氏の重臣の1人安並左京進が来て三好筑前守義興の前にいた。三好勢の進軍停止を受けて、同時攻撃のために一条勢には進軍を停止するよう連絡していた。しかし、土佐で三好との連携を強めて独立性を強める長宗我部氏に対し、焦りを感じた一条兼定は独断で進軍を開始。家臣が止めるのも聞かずに西園寺軍と交戦して敵の策にはまり大敗した。辛うじて筆頭家老の土居近江守宗珊が一部の軍勢を立て直して当主の兼定を逃がしたが、当主討死もありえた大敗だった。


「此れで、我等は西園寺の援軍とも戦わねばならぬ。しかも噂では、毛利は伊予を大友に任せたとか」

「わ、我等も大友勢が渡海する事を許す訳にもいかず、其の足止めを殿は御考えで」

「彼の御方が其処迄深く物事を御考えとは思えませぬが」


 沈黙は時に何よりも雄弁である。重臣でさえ取り繕えない一条兼定の暗愚さに、義興は最大の敵は味方なのかもしれないと悩むことになるのだった。今まで彼の周囲にいた味方は織田信長や斎藤義龍であり、相互に利益や勝利をもたらす関係だった。そういった存在以外の味方に、彼は出会ってしまったのだった。

 これもまた三好を継ぐ者の試練、と前向きにとらえた義興は金子城攻めに意識をめぐらせる。


「一条殿には戦に出られる状況になったら連絡を頂きたい、と御伝え願います。軽挙妄動は慎まれよ、とも」

「ははっ、重ね重ね御迷惑を御かけ致しまする」

「良い。次に期待する」


 大友勢が本格的に出兵する前に金子城を落とせるか。義興は叔父の体調を気遣いつつ、焦りを覚えるのだった。


 ♢♢


 備前国 天神山城


 庄氏一門を迎え入れ、国境を固めた宇喜多直家はこれを三好・織田・斎藤に報告した。美作の兵力不足は佐用赤松勢が一応埋めたが、播磨は手薄となった。

 直家は陰謀を企てるのをあえて日中に行う。弟の宇喜多忠家と相談する時夜では自分を警戒することや、人払いをさせる見張り同士を視認させて警戒を怠らせないためだった。


「美作の後藤は毛利や浅井と文を頻りに交わしているのか」

「恐らく元々尼子に不満を持っていた後藤殿だ。何かあれば寝返るだろうな」

「では、其の何かを起こすので?」

「起こす。我等が起こすというより、毛利と浅井が起こす」


 前々から毛利元就は赤松に接触していた。親三好を前面に押し出した赤松義祐と、父親で三好に友好的とは言えない赤松晴政。隠居して龍野にいる晴政は、だからこそ毛利側が接触しやすかった。


「下野守(赤松政秀)殿は乗り気では無い様だが、小寺との確執は根深い。佐用殿が居ない上我等が身動き出来ぬ今、動くであろう」

「伊予で一条が敗れた報が届き次第、でしょうな。我等は如何するので?」


 そこで直家は眼光を一段鋭くする。


「何があっても三好と織田と斎藤につく。仮に俺が討死しても、此の地を失ってもだ」

「其処迄兄上が断言されるのは珍しいですな」

「畿内に行って分かった。彼の者共には勝てぬ。誰も勝てぬ。天地がひっくり返りでもせねば、な」

「越後も既に離反した者の手引きで峠を一つ織田が越えたとか。此の儘行けば春日山以外は今年中に終わりましょうな」

「早々に織田は兵を送れまい。だが、我等が其処で踏ん張る事が、我等の此れからに繋がる」


 宇喜多直家は既に時代の勝者を織田・三好・斎藤と見定めていた。だから彼は決してこれを裏切らない。


「只、東国は織田と北条、北陸を斎藤と見ると、西国は三好だけで薄い。亡き尼子晴久は自らが西国のもう一つの要石にならんと欲していたが、此度の件で其れは無くなった。狙えるのだ、其の地位が」

「故に、裏切るな、ですか」

「左様。若し毛利や浅井に通じる者がいれば斬る。潰す。徹底せよ」

「御意」


 直家の決意を聞いた忠家はその実現を目指す。これから起こる事を知っている彼らは密かに備前東部にも警戒の網を張り巡らせる。最悪の場合、自分たちだけで海側の南部以外を守れるようにするべく。


 ♢♢


 美濃国 稲葉山城


 夏にはいった。今年は大きな台風もなく、比較的穏やかな気候だ。

 バルタザール・ガーゴが稲葉山にやって来た。息子の龍和を連れて謁見する。

 彼は白髪混じりの割に顔は若々しく、苦労してヨーロッパからここまで来たのを感じさせた。目元には俺が用意させたメガネをつけていた。出迎えにも感動したらしいが、しかし挨拶や神学校を造りたいという話の時は冷静な言葉でこちらに訴えてきていた。


「この国で教えを説くにも、正しき教えをまずは此の国の人々が知らねばなりません」

「日本人の宣教師を育てたい、と」

「サイトウ公爵は教育と医の大事さを知る御方。ヤマグチで同胞が死に、安全に我らの教えを伝えられるのはナゴヤとイナバヤマだけだと痛感した次第です」


 通訳のレベルが上がっているのを感じつつ、彼らが望むセミナリヨの建設を許可すべきか考える。ちなみに、ガーゴは日本に来た当初病院の建設を考えたそうだが、明らかにうちの病院の方が高度な治療をしていると感じたらしく提案してきていない。ザビエルの報告を信じるしかないと感じたようだ。


「最近開発した地区は寺が周りに無い故諍いも少ないか。只、稲葉山に住む子供は大抵が俺が建てた学校に通っているぞ」

「何とか人を集めてみます。神の教えに触れるのに年齢は関係ございません」


 まぁ、公認とかはしないがやりたいなら好きにすればいい。ちなみに俺の学校は給食つきなんだが、そこまでの予算はあるかな?それと、俺をメシアと勘違いしている稲葉山の人々が何人キリスト教の教えに目覚めるかはわからないぞ。



 そんな話をしていた最中、京から急報が届いた。


「三好実休様、移動中に火縄銃で襲われ重傷との事。其れを聞いた龍野の赤松と美作の後藤が浅井に寝返り、旧別所領や手薄の佐用赤松領に侵攻を開始致しました!」

毛利元就が以前揉めた播磨に手を出していないわけもなく。そしてそんな毛利の動きを近場の宇喜多が把握していないわけもなく。

宇喜多直家としては三好が少し弱体化して自分を頼ってくれれば最高の展開という考えですが、三好実休こと義賢も戦場ではなかったので不意の強襲にもなんとか対応した形です。

本来ならば死ぬはずの十河一存といい実休といい、三好の死人は減っていますが色々と時期が悪いといえる状況ですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 長く続けて読める、良い文章です。納得のいく説明もありながら、それが蘊蓄にならないところがとても良いです [気になる点] ただ、基本一所懸命で完全兵農分離ではないこの時期に、浅井が他国で自由…
[一言] 伯耆に放棄された人達が集まってるのか >今まで彼の周囲にいた味方は織田信長や斎藤義龍であり そりゃその二人のイメージがあったなら、味方とは互いに信頼し、頼り頼れる存在というイメージがあるで…
[一言] 直家の戦局観は史実にもそう十分なものですね。 勢いがあっても根無し草の浅井や、明らかに史実以下で早期救援など無理な毛利にそそのかされて動くものが一定数いるのも致し方ないとはいえ表立って本願…
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