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第222話 集結する者達

 山城国 京


 およそひと月をかけて体制が整えられた。院の後援の下俺たちの新政権には尼子義久・六角の遺児六角信賢・能登の畠山義続の名代遊佐太藤・小寺政職名代の黒田職隆・北条氏康名代の北条為昌・武田晴信名代の勝沼信元(晴信の従兄弟らしい)・長宗我部嫡男の長宗我部元親らが参加した。おお、長宗我部元親。なんというか姫若子呼びがなんとなくわかる顔立ちだ。某ジャニーな事務所の15歳スター候補みたいなかんじ。

 そして、俺からすればかなり意外な人物も複数人来た。まずは毛利から元就の弟・北就勝である。


「兄の命にて新しき府の末席に我等も加えて頂きたく」


 尼子との対抗上送られたのだろうが、足も悪く高齢な彼を迎えないのは明らかに外聞が悪い。


「天下の名医でもある宮内大輔様とこうして御会い出来れば此の老骨ももう少し長生き出来るかと」


 表情は矍鑠かくしゃくとした様子のご老人だが、体調万全というわけでもない。尼子としても暗殺しようとはならないだろう。ほぼアウェーのここに派遣する人材としては完璧かもしれない。さすが謀神。


 2人目は能登半島の向こう側、以前立石寺を通じて接点を得た人物だった。


「最上家臣、志村伊豆守と申します。織田弾正忠様、三好筑前守様には御初に御目にかかりまする」


 最上氏。伊達氏の内乱に乗じて独立を果たし、更には現在最上八楯の切り崩しを始めるなど、活動が活発化している。元々羽州探題として南出羽では幕府権威を確立しているだけに、中央へのアンテナの敏感さは東北の小領主たちとは比べ物にならない程度に高い。

 そして3人目。


「蠣崎若狭守季広が次男、明石元広と申しまする。御目通り叶い、恐悦至極に存じまする」


 まさかの蝦夷である。北海道の本州側、前世で言えば函館周辺の領主・蠣崎季広の使者が来たのだ。ただ、彼は正確には俺たち3人目当てで来たわけではない。交易関係で敦賀の湊に来たこの明石元広が、敦賀の領主たる俺に会うためここまで来たという話なのだ。


「敦賀への道が安寧となるのは大変喜ばしい限りに御座います」

「アイヌから入る蝦夷錦は良質だからな。其れに昆布は出汁に、膃肭臍おっとせいは薬に欠かせぬ」

「此方としても美濃からの碗や鉄の品々は重宝しておりまする。首長のチコモタインも玻璃の器を大層気に入った様でした」


 アイヌと蠣崎氏は5年程前に和睦を結んでおり、交易が盛んになっている。一時期は越前から米に茶碗に鍋などが大量に持ち込まれていた。最近は米を加賀のために供給しているので米は不足しているようだが、これを越後が補っていて越後は米を売って儲けている。越後は湿地帯ばかりでそこまで稲作がうまくいっていないはずなのだが、飢餓輸出というやつだろうか?上杉(北条の手前口に出す時は長尾と呼ぶが)の兵は関東で北条と戦っているので、豊かな関東の米を奪って食糧を補給しているらしいし。


 そして、最上・蠣崎・能登の畠山が共通の難敵として早速議題にあげてきたのはその上杉のことだった。


「大宝寺が本庄を通じて長尾の威を借り、不当に酒田湊の津料を上げておりまする」

「越後から買う米が高く、宮内大輔様の米とは比べ物にならず。此の儘では我等も苦しゅう御座います」

「神保殿が領を追われ、能登に逃げ込んでおりまする。不義の輩は許すまじ」


 彼らは斎藤・織田・三好の連合軍動員を期待するように声を上げる。最上からすれば伊達の内乱を利用して独立し、上山を屈服させた余勢を駆って清水の最上氏と共同で大宝寺を攻めたいところらしい。そして蠣崎は安東氏からの独立を目指すための資金を貯めたいのに、上杉との取引では交易の収入が吹っ飛ぶためうまくいかない。そして能登の畠山は東にしか拡張できないのに、越中の過半を上杉とこれに従う椎名氏に奪われて動くに動けない。抱えている神保を戻すついでに越中での主導権が欲しいのだろう。


「いや、長尾の事は我等に御任せを。武田殿と共同で先日の戦にも勝利致したところで」


 為昌殿が口をはさむ。北条からは来てくれとは口が裂けても言えないだろう。武蔵はほぼ死守しているが、下野が上杉の勢力下にほぼ落ちているのは北条にとって苦々しいもの。しかし誰かの手助けをうけては北条の目指す「関東独歩」は叶わなくなってしまう。最低でも上野をある程度自分たちだけで押さえてからとなるだろう。実際、里見との戦線は優位だし常陸では小田氏と結城氏が踏ん張っているため南部は親北条で固まっている。しかも先日、信濃での戦で上杉の援軍と村上・小笠原・海野の連合軍を武田・北条連合軍が破ったそうだ。被害は小笠原氏に集中していたそうだが、勝ちは勝ちである。ここで援軍を受け容れる気はないだろう。


「まぁ、北条の御意志は尊重致そう」

「忝い」


 結局、現時点で上杉討伐は難しいという結論となった。越後・越中・上野・下野・信濃に手を伸ばしているのは客観的に見て凄まじいのだが、俺たちも足元が完全に固まったわけではないので難しい。


 次に議題となったのは蠣崎氏が持って来た陸奥浪岡にいる北畠氏から届いた書状。当主は従五位下北畠式部少輔具運殿。彼からの書状には倒幕を祝う文言が並んでいた。彼の人物の陸奥北畠氏は南北朝時代から一貫して南朝方についた家だ。伊勢の北畠が事実上滅んだことより足利の幕府が滅んだことの方が嬉しかったようだ。浪岡の北畠は南朝の主力北畠親房の長男の家柄だから自分たちこそ本家と思っているらしいので、自分たちより官位が常に上だった伊勢北畠氏を嫌っていた部分もあるのだとか。なんだこの関係、面倒くさい。


「まぁ、何かあれば協力するとは言ってきた。蠣崎殿も何かあれば一致してくれ」

「御意」


 あからさまに面倒だが無視も出来ない相手に信長はうんざりしていた。他にも色々な小領主の接触やら最上からの要請で畿内に逃げているという坂上主膳なる男への人相書きの手配やらと細々とした話が続いた。皆の表情に疲れが見え始めた頃、信長の小姓の1人が駈け込んで来た。


「大津の北に軍勢が現れました!」

「何者……と言っても思い当たるのは彼れしかおらぬな」

「は、細川と波多野に御座いまする!」


 畿内の完全平定は、まだなっていない。俺たちはまだ、何も始められてすらいない。


 ♢


 近江国 大津


 信長の派遣した河尻秀隆ら2000が大津に先着し、遅れて信長と俺の10000が大津に到着する頃には大津周辺から敵の軍勢は撤退していた。


「藤吉郎、報告!」

「敵は熊川・朽木谷から攻めて参った様子!今は河尻様の兵も借りて追い払った所にて!」

「上々!」


 若狭方面が封鎖されている現状、波多野勢の援軍は少数らしく大津に迫った兵は3000弱だったそうだ。木下藤吉郎は家臣の戸田勝隆や神子田みこだ正治の奮戦に河尻の来援で3倍近い兵に勝利をもぎとったわけだ。


「如何する?」

「決まっておろう、義兄上」


 信長は挑戦的な笑みを浮かべた。


「晴元さえ討てば波多野は怖くない。此処で彼の男を、畿内混乱の元凶の一つを、討つ!」


 信長がちらりと横目で見た視線の先には、先程まで新政権での話し合いにいた最上・蠣崎・長宗我部の家臣たち。

 まぁ、見せつけたいよな。ここで不安を持たれるとうまくいくものもうまくいかなくなる。それに寺院に強く出たばかりなのだ。僧兵を許さないという姿勢を、強い俺たちとして打ち出さないといけないのだ。


「目標、朽木谷!」


 さぁ、年貢の納め時だ、細川晴元。新しい時代のために、これ以上戦禍を広げないために、退場してもらうぞ。

名前だけはたくさん出ていますが、まぁ雰囲気です(今は)。必要な場面で再登場しますので、その時にまたきちんと紹介します。


蠣崎は1551年にも敦賀に使者を送った記録があったり、地味に東北の諸大名より中央とのパイプが強いです。そして東北マインド(南北朝時代継続)の浪岡北畠。色々と厄介な人々が今も生き残っているのが理解してもらえていれば幸いです。


少しずつ上杉の戦闘狂(本作設定)さんの姿が大きくなったところで、近くの大魔王がついに動きました。晴元の心境はそんな突飛ではないですが、次話の最初で少し出てくる予定です。

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