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47 裏の裏は表

ナトリとのお話が終わって……



「やぁやぁ二人とも。戻ったよ」


「あ! お兄ちゃんどこ行ってたの!」

「急にふらりと消えるなんてネコですか。もう帰る時間ですよ」


「にゃー。ほかのメスネコと会ってたにゃー」


「またあの女か! 何の話してたんだ!」

「……兎に角、もう帰りますよ」



それから。


ブルルル…… キィ


「さぁ、駅着いたよー」


行きと同様、オバアに送って貰う僕達。

ガチャリと車から降りると、ウィーン オバアが運転席から顔を出し、


「お土産の袋持ったー? 帰ったら食べてねー」


「中身はなんなん?」


「バーベキューの時のやつとか果物とか、親戚に貰ったお菓子とか色々詰めてるからねー。一応保冷バックに入れてるけど、夏だから早く食べてー」


「助かるー。なんてーか、田舎のメシって現地で食うより持ち帰って家で食う方が美味く感じるよねって」


「私は違い分かんないかなー」

「まぁ気分の問題でしょう」


「てか、じーちゃんらは見送りにも来ないのかっ」


「お酒飲んでたからまだ寝てるだろうねー。後で起きた時にお見送りしたかったって泣くだろうねー。オニーちゃん達ともっと長く居られるように車で家まで送るーって言ってたのに」


「やっぱ田舎のジジイは飲酒運動上等やねぇ」


「帰り道はふらふら運転でスリリングになるとこだったね!」

「寝てくれていて助かりました」


「よし! お前ら忘れもんはないな! さっさと帰るぞ!」


「はーい!」

「帰り時間を遅らせた貴方がよくもまぁ……」


ふと。

オバアは『ナムナム』と両手を擦り合わせて、


「どうか三人に『ゴシキ様』のご加護がありますようにー」


なんて拝み出した。


「おいおいオバア、僕にナムナムしたら願い事が叶うんか? 賽銭払ってくれよっ」


「私があげちゃう!」

「ただの金ドブなんでやめなさい。おばあ様が手を合わせた相手は貴方で無く『ゴシキ様』ですよ。聞こえていたでしょう」


「ゴキ様?」


「なんて罰当たりな……」

「ゴキ信仰って世界のどこかにはあるのかな? 丈夫しぶといし太古の時代から居るくらいには子孫繁栄してるから信仰対象としては文句無しだけど!」


「んー? オニーちゃん、『ウチの神様の名前』知らないのー? 凄いお方なんだよー? 神様はきっと、お兄ちゃん達を守ってくれるよー」


「急に宗教くさくなるやん。いや……でも(さっき)話には聞いたぜ。なんでも、ウチの神様は何でも願い事叶えてくれるっていうじゃん?」


「んー? ふふ、そうだねぇ。オニーちゃんは『初代に似てる』って神様に気に入られてるから、何でも聞いて貰えるかもねぇ」


「初代って誰よ、まるで『神様本人に聞いた』みたいな言い方して。まぁ期待せずに御利益受け取ってやるよ」


「偉そう!」

「こんな相手を気に入る神も物好きですね。それか元々、彼が『神側』に近いタイプの人間だったか」


なんて遣り取りをしていたら、もう電車の来る時間。


「じゃーまた来てねー」


というオバアの挨拶を背中に受けつつ、僕らは改札をくぐって行った。



ガタン ゴトン ガタン ゴトン


夕方前の車窓の景色は、まだ昼を思わせるほどに明るい。


「はぁー。やっぱ一泊二日だとあっちゅーまだねー」


「ねー!」

「物足りないくらいで丁度良いですよ。二日以上は食傷気味になるでしょうし」


「まぁそれはそうだけど。……で。君らはこうして田舎に来て、わだかまり的なもんはスッキリしたかい?」


「スッキリ? わだかまり? んー、遊べてスッキリはしたけど、他に目的あったっけ?」

「……まぁ、その件はもういいじゃないですか。貴方も、蒸し返さないで」

「あ! アノ女狐の情報収集があった! なんか消化不良!」

「はぁ……だからもういいでしょう」

「なんだよお姉! 聞き分けのいい女みたいになっちゃって! 日和ったか!」

「ならば、貴方は何の情報が知りたいんですか……」

「そんなの勿論! 二人の関係性だよ! お兄ちゃんの記憶は信用ならないし!」

「普通に友人でしょう……」


「(冗談で)ナトリは元カノとか言ってたで」


「「は??」」


ガタン ゴトン ガタン ゴトン


「ま、昔のガキはノリでそーゆー恋人ごっこするからな。僕は例の如く記憶おぼえてないけど、ただの青いメモリー青いメモリー」


「(ぼそぼそ)ウチらと女狐どっちが先に会ったのっ。先はウチらでしょっ」


「(ぼそ)知りませんよ……この人の事なんで、そんな過去の人間関係など無意味ノーカウントだと考えればいいでしょう」


「(ぼそぼそ)人のモン先に味見されてたと思うと腹の虫が治らないよっ、NTRだよっ」

「(ぼそ)それは寝てか…………もうこの話はおしまいです」


「オバアから貰ったさくらんぼムシャムシャ(ブーン)……ん? ナトリからメッセージだ。なになに?」



『さっきの話は冗談だから気にしないで。あと、借りたタオルはそっちに帰った後に』



「んー? どの話だぁ?」


「なになに!? 女狐から連絡!?」

「興奮し過ぎでしょう…………なんだったんですか?」


「さっきの話は嘘だって」


「ヘッ! やっぱり出まかせか! 調子に乗りやがって!」

「なんの話を指すのか、当事者でない私達には分からないでしょう……」


そう。

分からない。

当事者である僕ですら、なんの話か分からない。

ナトリとはまだ、フワッとした会話で通じ合えるほどツーカーの関係ではないという事らしい。

悲しいね。


冗談な事が冗談なのか。

嘘な事が嘘なのか。


ナトリは女優兼声優らしいから、その辺の演技や言葉遊びや駆け引きは上手そうで、到底、僕には見破れそうにないな。


ただ…………今まで、彼女は僕に嘘をついた事がない。


冗談、と誤魔化すのはしょっちゅうだが、その時の話は大体、『その後真実だと判明』していた。

詰まるところ、彼女の話す事は『経験上』全て事実なのだ。


それを踏まえると…………

なに? どーゆーこと?



「僕も頭がこんがらがって来たぜ。なぁ、もう細かい話はやめて楽しい事考えない? まぁ今の会話も楽しいけど」


「楽しくない! だから話の流れ変えて明日遊びに行く計画立てよ!」

「どれだけ遊びたいんですか……少しは休ませて下さい」


「あ、僕は明日バイトだったかなー。なんかサトウちゃん(バイト先のメガネっ子)に会うのも随分久し振りな感覚ー」


「なら放課後は喫茶店集合だね!」

「……まぁ、静かに本でも読めるならそれで」


そういう事になった。

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