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すべてに絶望した俺は転校して幼馴染の前から姿を消した。  作者: 孤独な蛇


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20/20

20話 憧れ……羨望

 2学期の中間テスト、私は今回も学年1位。


「今回は惜しかったんだけどな……」


 大和は自分の成績表を見つめて、そう呟いた。


「惜しかった……?」

「だってそうだろう?今回は学年22位なんだから。もう少しで順位表に名前が載ったんだけどな」


 飄々(ひょうひょう)とした……というより、むしろほっとした表情で話す大和を見て……私は歯痒い気持ちだった。


「葵はさすがだな。また1位だろ」


 それは……私があなたに言いたかった言葉なのに……。


「大和……次は、もっと頑張ろうね」


 私にこんなこと言わせないでよ……。


「あ、ああ、うん……そうだな」


 もっと悔しそうにしてよ。

 22位の成績で満足しているの?

 危機感はないの?


 2学期になってから勉強に力を入れていると言っている大和の言葉を信じていた。


 勉強は頑張っている、でも、彼は成績上位者には入れない。


 彼が勉強ができる人なのは私が一番よく知っているはずなのに……わかっているはずなのに……。


 高校生になって授業のレベルは中学の時より遥かに高い。

 科目数も多い。

 それでも大和なら大丈夫。

 問題ない。

 そう……思ってきたけど……。


『彼は本当に優秀なのか?』


 お父さんのセリフが頭に浮かぶ。


 大和の実力に疑念を抱き始めたのは、この時からだった。


 ♢


 今日は海明学園の文化祭。

 私たちのクラスはコーヒーや紅茶、それに簡易的なお菓子を出すカフェをしている。


「大変だね、接客って」

「ああ、こんなに繁盛するとは思ってなかった」


 一番早い時間に仕事をしていた私と徹はこれから自由時間。

 大和は私たちとは少し時間がズレていて、あと1時間ほど業務時間だ。

 私たちは午後から3人で文化祭を回ろうと約束をしている。


「海明学園の文化祭って凄いね。外部の人も沢山来てるし」

「そうだな、あの……葵、ちょっと頼みがあるんだけど……」

「なに?」

「実は俺の親が文化祭に来ていてさ。ちょっと葵に会いたいって言っていて……」


 徹のご両親……村瀬先生と看護婦をしていた紀子さん……だったけ。

 二人はお母さんが入院していた時にお世話になって、何度か会ったこともある。


「うん、わかった」


 徹に連れられて学校の正門前に行くと、そこには彼のご両親の姿が見えた。


「久しぶりね、葵ちゃん!大きくなって!」

「お、お久しぶりです」


 徹のお母さんの紀子さんは私の手を取って、感激したように声を掛けてくれた。


「お母さんによく似てきたね、葵さん。いつも徹と仲良くしてくれてありがとう」

「あ、いえ、私の方こそ……」


 フラットな印象の徹のお父さん、村瀬先生。


「あの……私になにかお話でも……?」

「いや、家で徹がよくきみの話をするものだから。一度ご挨拶をしたくてね」


 徹が私の話を?


「ちょっとやめてくれよ、父さん」


 村瀬先生の言葉に慌てた様子徹は口を挟んだ。


「実はきみのお父さんの宮野さんと普段から仲良くさせてもらっていてね。それで成長した娘の葵さんのことを一目見ておきたかったんだよ」

「父と親交がおありだったんですか……知らなかったです」

「寡黙な人だからね、宮野さんは」


 お母さんが亡くなってからもお父さんと村瀬先生は交流があったのか……。


「ほら、もういいだろう。俺たち忙しんだよ」

「そうだね。二人の邪魔をしてはいけない。ではここで失礼するよ」

「葵ちゃん、またね!徹のことお願いね!」


 徹に促されて、ご両親は正門を出て帰っていった。


「なんか……私たちのこと誤解してないよね……?」

「あ、あー……どうだろう……。ご、ごめんな、わざわざ会ってもらって」

「う、うん……それは大丈夫だよ」


 久しぶりに見た徹のご両親。


「ほら、適当に時間潰して大和を待とうぜ」

「……うん」


 村瀬先生は昔と変わらない様子で何を考えているのかよくわからない人……。

 紀子さんは私が持っていたイメージとは少し異なっていた。

 あんなに明るい人だったけ……?


 久しぶりに会ったあの二人に、なぜだか少しだけ……苦手な印象を私は抱いていた。

 ♢


「「葵、誕生日おめでとう!」」


 数多くの模擬店が並んでいて大勢の生徒や来客で賑わっている校舎前で、大和と徹が突然祝福の言葉をくれたので面食らってしまった。


「え……えっ?」


 今日は私の誕生日だった。


「なに驚いてるんだよ?今日は好きな物食べていいぞ。俺たちの奢りだから」


 べつに忘れていたわけじゃない。

 でも、こんなふうに大和たちがお祝いしてくれるとは思っていなかった。


 以外かもしれないけど、私と大和は誕生日だからといって互いに特別なことをほとんどしてこなかったから。


(昔、お母さんが亡くなった年に……大和がプレゼントをくれたことがあったなぁ)


 その時貰った物は鉛筆と消しゴムにボールペンだった。

 鉛筆と消しゴムは消耗品の宿命で使い切ってしまったけれど、ボールペンだけは今でもお守りみたいに筆箱に入れてある。


 ……懐かしいな。


「美味いな、このたこ焼き。葵も食べてみろよ!」

「あ、うん、ありがとう」


 大和が微笑みながら私に接してくれる。


「お化け屋敷とか入るか?」

「ん~……怖いのはちょっと……」

「葵は怖がりだもんな」

「そ、そんなことないよ!」


 なんだろう……この感じ……。

 中学の時に戻ったみたいな……。


「おい、徹も早く来いよ」

「あ、ああ。今行く」


 高校に入ってから楽しそうにしている大和を見たことがなかった。

 でも、今日は違う。

 とても楽しそうにしていて……。


「ほら葵、行くぞ」

「う、うん!」


 ああ……楽しい。

 そう……そうだ……こんなふうだった……。

 大和は私の前をいつも歩いていて、私を導いてくれて。


 今日の大和は、少し前の明るい頃に戻ったみたいで……私は少し……ドキドキしていた。


「大和、次はあのお店入らない?」

「そうだな、徹もいいか?」

「……ああ、いいぜ」


 高校生になってから楽しいことなんてなかった私にとって、今はとても幸せなひと時だった。

 正直言うと、大和と二人で文化祭を回りたいという願望もあった。

 ……徹には申し訳ないけど。


 だって今日は文化祭……そして海明学園の後夜祭と言えば……。


「ねえ、後夜祭楽しみだね」

「私も彼氏欲しいなぁ」


 すれ違う女子生徒たちから後夜祭についての会話がちらほら聞こえてくる。


「後夜祭ってキャンプファイヤーやるんだっけ?今時そんなことする学校って珍しいよな」

「あ、うん……そうだね。楽しみだな、後夜祭」

「そうか?俺はキャンプファイヤーにはあまり興味ないな」


 そっか……大和は知らないんだ。

 海明学園高校に昔からあるジンクス……いや、伝承だっけ?


「わ、私は……興味あるな」


 後夜祭で行われるフォークダンス。

 本音を言えば、大和と踊りたい。


 一緒に踊って音楽を鳴り止んでも手を繋いでいた二人は永遠に結ばれる。

 ……そんな魅力的なイベントがあるんだから。


「ね、ねえ、大和……後夜祭でね……」


 今告白する勇気なんて勿論ない。

 お父さんが出した条件の話もあるし。


「私と……一緒に……」


 でも、このイベントが私と大和の関係を進展させてくれる可能性があるのなら……。



「あ、大和くんだ、こんにちは」



 私たちが入ろうと並んでいた3年生のクラスの喫茶店。

 その教室から出てきた美人の先輩が大和に声を掛けてきた。


「こんにちは、速水先輩」


 速水渚先輩……1学期の時、私たちのクラスに大和を訪ねてきて教室が大騒ぎになった。

 それぐらい人気で有名で、学園一の才女と言われている……素敵な人……。


「あなたが宮野葵さん?1年生で学年1位の」

「あ、はい。宮野……です」


 同性の私も目を奪われる美しい容姿と気品ある佇まい。


 そんな彼女を目の当たりにして、さっきまで楽しくて浮かれていた気持ちが段々と冷え切っていくのを……私は感じた。

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― 新着の感想 ―
話全然進まないな 不快な毒親のせいで関係がグダグダになってるってだけの話がいつまで続くんだろうか
どんどんグダってきている。そろそろ大和君中心に戻してほしい。
大和より徹を選んだわけでもないし、この子の内情は特に隠れてないしザマァには必要なのかもしれないけど、葵ちゃんはそろそろ退場願いたい。大和君が転校先で幸せになってるいくところを早く読みたい。
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