【幕間】水着回
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よろしくお願いします!
どうして白い砂浜で見る水着は輝いて見えるのだろうか?
下着同然、下手をすれば下着よりも面積の小さな水着の数々。
他人の女性が水着姿ならば、男なら目で追ってしまうかもしれない。
だが――関係者ならばどうだろう?
恋人をジロジロ見られて喜ぶ性癖は、俺にはない。
「トーマス、俺を失望させたな」
刀をゆっくり抜いてトーマスに近付けば、尻餅をついて後退っていく。
「リアム様、何卒ご容赦を!」
トーマスが俺を怒らせた理由は、俺の期待を裏切ったからだ。
「駄目だ。天城にこんな水着を着せるとか、絶対に許されない。こんな――こんな、ダイバーみたいな水着を用意するとか、ふざけているのか?」
まるでダイビングのウェットスーツみたいな水着を持って来やがった。
ゴーグルにシュノーケルでもあれば、これから潜るのか? と思えるようなデザインである。
「トーマス、俺は言ったよな? 天城と海に遊びに行くから、水着を用意しろって」
「た、確かにお聞きしました!」
正座をするトーマスが冷や汗を介していた。
「だったらこの水着は何だ! 俺を馬鹿にしているのか!」
「し、しかし、リアム様――この前は、面積が小さすぎるとお怒りでしたが?」
少し前にトーマスが持ってきた水着は、どれも布の面積が小さすぎて駄目だった。
普通の水着だったが、天城が外で肌を露出しすぎるとか許されない。
天城の肌を見る野郎がいれば、俺は即座に斬り殺すだろう。
「小さすぎなんだよ!」
「で、ですが、以前の物でも面積が広くてですね」
「もっと天城に似合うのを持って来いよ!」
「えぇぇぇ?」
トーマスが俺の希望に添う水着を持ってこない。
既に何千着と用意させているが、どれも天城に似合う水着ではなかった。
トーマスが肩を落としている。
何やら納得できない顔をしているが、納得できないのは俺の方だ。
「露出があれば駄目で、露出がなくても駄目――リアム様、これはとんちでしょうか?」
「馬鹿を言う暇があったら、天城に似合う水着を――」
トーマスを叱っていると、天城がやって来た。
その手には、以前トーマスが持ってきた水着が握られている。
「天城、それは露出が多くて却下した水着だ。手を離せ」
「いいえ、こちらで構いません。旦那様、いったいいつまで水着を選んでいるのですか? もう一週間も水着だけを選んでいますが?」
「だってトーマスが」
「だって、ではありません。そもそも、露出する面積が多くても問題ありません。旦那様が使用するビーチは、プライベートビーチです。関係者以外は立ち入りが出来ません」
「プライベートビーチがあるのか?」
「ありますよ」
他の有象無象の男共がいると思っていたが、俺は金持ちだった。
プライベートビーチを持っていて当たり前だった。
「なら天城が選んだ水着でいいな。よし、海に行くぞ」
「かしこまりました」
天城と海に遊びに行くため準備をするため部屋を出ると、トーマスが嘆いていた。
「私の苦労は何だったのでしょうか?」
すまんな。だが、天城の水着に妥協するとか許されないんだ。
◇
青い海。
白い砂浜。
俺のために用意されたビーチは、俺が気まぐれで「遊びに行く!」と言うだけで家臣たちがせっせと整備をする。
砂浜にはゴミ一つなく、俺たちが来る前に掃除を終わらせていた。
そんな中、天城は面積の小さな水着を着用している。
小さな前掛けのようなエプロンをしていた。
太陽よりも今日の天城が眩しい。
「天城――綺麗だよ」
天城の右手を俺は両手で握り、褒め称えたいのに言葉が出てこない。
綺麗としか言えない自分が恥ずかしい。
「ありがとうございます。旦那様の好みそうな水着を選択しました」
「でも、その水着は肌の露出が多いと思うんだ」
「どうせ誰も見ませんよ」
見る奴がいたら消していたところだ。
これから海で遊ぼうとしていると、海の家を用意したブライアンが俺たちに声をかけてくる。
縞模様の肘や膝まである古臭い水着を着用していた。
「リアム様、海に入る前に準備運動をしてください。あ、飲み物はいかがです? 水分補給も忘れては駄目ですぞ」
にこやかなブライアンを見て思ったね。
「何でお前は普通にこの場にいるんだよ」
「何でと言われても、世話をする者が必要だったからです。それにしても、こうして海の家をやるのは久しぶりですな。このブライアン、昔は海の家のブライアンとまで呼ばれるほど、海の家に通い詰めた猛者でございます」
それ、通っただけで経営してないだろ?
こいつに海の家を任せていいのか不安になってきたが、男として枯れたようなブライアンならこの場にいてもいいだろう。
これが知らない男なら斬り殺していた。
「なら、飲み物をくれ」
「かしこまりました」
ブライアンが海の家に入ると、天城が俺に一礼してついていく。
そして、飲み物を持ってくる。
「旦那様、お飲み物でございます」
飲み物を手渡してくる天城を見て、俺は見惚れてしまった。
天城が一瞬だけ微笑んでいるように見えたからだ。
「天城、今笑ったか?」
「さぁ、どうでしょう?」
普段通りの無表情に戻ってしまったが、確かに微笑んでいた。
「お前も楽しいのか?」
「楽しい――のかもしれませんね」
「なら良かった」
天城と二人で海に遊びに来た甲斐があった。
◇
海の家で焼きそばを作り始めたブライアンは、リアムと天城を見る。
「それにしても、リアム様はやはり質素ですな」
プライベートビーチを持ち、遊ぶ前に掃除をさせ、海の家まで用意してしまう。
更には、リアムの見えないところで軍隊が警備をしていた。
周辺だけではなく、海中やら上空、そして宇宙には宇宙戦艦も待機中だ。
その全てが女性兵士で揃えられている。
リアムの思いつきで、これだけの労力が消費されていた。
それなのに、ブライアンはリアムを質素だと言う。
「伯爵のお立場であれば、もっとリゾート向きの惑星を用意してもいいでしょうに。もっと派手に遊んでも罰は当たりませんぞ」
星間国家。
伯爵の立場を考えれば、この程度の贅沢は庭先で遊んでいるようなものだった。
ブライアン(; ・`ω・´)「いきなり限定版の販売にこのブライアンも震えが止まりません。限定版はメロンブックス様でお求めになれますぞ」
ブライアン(´;ω;`)「それはそれとして、リアム様の無茶ぶりが辛いです」




