表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/260

【幕間】迷子のチノ

日間ランキング一位獲得の記念にSSを用意しました。


俺は星間国家の悪徳領主! が無事に オーバーラップ文庫様で書籍化決定した記念にもなりますね。


楽しんでいただければ幸いです。


今回の日間一位は、初期化のお祝い効果かな?


 狼族最強の戦士グラスの娘――チノ。


 彼女は、リアムの屋敷に連れて来られてメイドの格好をしていた。


「くっ! こ、この屋敷は――広すぎる!?」


 屋敷と名乗っているが、広さだけならアール王国の王都をすっぽり飲み込んでしまえるほどに余裕がある。


 いや、それ以上の広さだ。


 それが屋敷と数えられること自体が脅威であった。


 そして、似たような廊下が続いているため――チノは迷子になっていた。


 壁に用意されたプレートには、今がどの位置なのか記されている。


 しかし、チノは読めない。


 文字くらいは読めるように教育カプセルを使用されたが、読めても理解できなかった。


 現在、必要最低限の教育を受けた状態だ。


「こ、こっちか? いや、こっちはさっき通ったような気がする。くっ! 臭いで辿ればいいとか考えていたのに」


 頭を抱えている理由は、廊下を移動しているお掃除ロボットだ。


 人の手だけで維持できるような屋敷ではなく、ロボットたちが勝手に掃除を行っている。


 自分の臭いを辿って戻ればいいと考えていたら、しっかり消臭までされてどこに戻ればいいのか分からない。


「わ、私は一体どうしたらいいのだぁぁぁ!」


 心細くなったのか「く~ん」と呟いてその場に座り込む。


 人が少ない場所なのか、先程から誰ともすれ違わない。


 すると、かすかに犬の臭いがした。


「何だ? 犬?」


 顔を上げると、遠くで犬がチノを見ていた。


 まるでこっちに来い、と言っているようだ。


 ただ、その姿はどこか呆れているような気がする。


「い、犬のくせに生意気な! 私は狼だぞ!」


 嬉しいが、舐められたら終わりという本能に従って下手には出ない。


 遠くにいる犬を追いかけるが、一向に距離が縮まらない。


「は、速い!? 私よりも速い!?」


 あまりの速さに驚いてしまう。


 野生動物にだって追いつける脚力を持っているチノが、まったく追いつけなかった。


 ムキになって追いかけていると、犬が曲がり角を曲がったところで姿を消す。


「ど、どこに消えた! か、かかか、隠れても無駄だぞ。た、頼むから出てこい」


 急に寂しくなって震えていると、そこに天城がやって来る。


 チノを見つけると声をかけてきた。


「端末を持たせたはずですよ」


「こ、これ、使い方が分からない」


 チノが天城に見せた端末は、現代日本で言うならキッズ用のものだ。


 それをチノが使いこなせなかった。


「やはり基礎教育を急ぐべきですね。チノ、戻りますよ」


「う、うむ!」


 天城が歩く後ろに付いていくチノは、こうしてリアムのいる場所に戻れることになった。


(あの犬は飼い犬だろうか?)


 そして、先程の犬のことを思い出す。



「使えないメイドだ」


「本当に駄目な子だわ」


 迷子になったチノが戻ってくると、メイド服姿のティアとマリーがリアムのためにお茶を用意していた。


 チノは二人に対して腹が立つが、戦っても勝てそうにない。


 そもそも、勝負にもならないだろう。


 自分の勘が戦うなと告げている。


 そして、同時に勘が告げる。


「あ、天城殿。いや、天城様、先程はどうもありがとう――ございます」


 天城はチノの言い間違いを指摘しなかった。


「構いません。次は迷子になる前に、誰かに相談するのですよ」


「そ、そうする。いえ、します」


 拙い口調でお礼を口にするチノを見て、リアムが動いた。


 チノが天城に頭を下げたからだ。


「チノォォォ! お前はいい子だな!」


 リアムがチノの頭をワシャワシャと乱暴に撫でる。


 チノはわけが分からなかったが、チノの本能はこの場で誰に従えばいいのかを正確に判断していたのだ。


「や、止めろぉぉぉ! そんなことで懐柔される私では――あふぅ」


 撫でられ嬉しそうにするのを必死に堪えるチノの姿が、リアムにはツボだったようだ。


 同時に、そんなチノをからかった二人に対して冷たくなる。


「お前は可愛いな。――それに比べて、お前らはちっとも可愛くない」


 リアムに可愛くないと言われたティアとマリーが、酷くショックを受けていた。


 そしてチノは、気になったことを聞く。


「と、ところで、犬を飼っていたのか? 私に紹介してくれ。どちらが上かハッキリさせておきたい」


 ここでは自分が最下層の実力だが、あの犬には勝ちたいと思った。


 だが、リアムが首をかしげる。


「犬? お前だろ」


「私は犬じゃない、狼だ!」


 リアムが笑ってチノの頭を撫でる。


「そう思っているんだよな。可愛いぞ、チノ」


「話を聞け! えぇい、気やすく頭を撫でる――あふぅぅぅ」


 必死に抵抗して犬のことを聞こうとするが、撫でられるのが気持ちよくて抗えないチノだった。


 結局、犬の話は聞けなかった。


???

   ,.--、_

 ゝ-じ,゜._゜,.) (助けた理由? ……ペットとして妹分だから)

 し-じ-J

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いえ、北海道犬でしょう。 可愛いだけじゃ無く勇猛です。
この忠誠度の高さと賢さ……。 秋田犬か? すまねぇ。他の犬種がどうとかいう話じゃなくてどうしてもハチ公が思い出されて……。
[良い点] チノちゃんくぁわいいねぇぇぇ!!! [一言] ぼ、ぼくにももふなでさ、させてくれないかなぁぁ!?!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ