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完璧すぎる悪の計算式。狂わせたのは、たった一つの計算外な「愛」だった  作者: Zacku


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20/21

『第20話(最終回):名前のない花が、咲き誇る明日へ』

風が、静かに吹いていた。

 かつて王都と呼ばれた場所は、今ではただの「街」になっている。

 高くそびえていた支配の塔は跡形もなく、代わりに人々の生活音が、当たり前のように響いていた。

 ぜろは、小さな丘の上に立っていた。

 簡素な墓標。

 名前は、刻まれていない。

 彼がそう望んだからだ。

 零は膝をつき、抱えていた花束を、そっと供えた。

 白くて、名も知らない花。

 ――おじさんは、生前こう言った。

 「……名前や数字は、後から付けられる。だが、意味は……生きた後にしか、生まれない」

 零は、墓標に向かって微笑んだ。

 「……ねぇ、おじさん。世界は、ちゃんと変わったよ」

 国は、もう人を数字で切り捨てない。

 完璧でない者を、失敗作と呼ばない。

 それでも――

 すべてが良くなったわけじゃない。

 争いは残り、悲しみも、消えてはいない。

 零は、それを知っていた。

 けれど、もう絶望はしていなかった。

 ポケットから、古びた紙切れを取り出す。

 そこには、彼の字で書かれた、たった一行の数式。

 《生存確率:不明》

 零は、それを墓標の前に置いた。

 「……ね。答えは、まだ途中だよ」

 風が吹き、紙切れが舞い上がる。

 数式は、空へと溶けていき――

 代わりに、零の頬に、柔らかな日差しが降り注いだ。

 零は立ち上がり、振り返る。

 もう、誰もいない。

 それでいい。

 零は、前を向いて歩き出した。

 名前のない花が、

 それでも確かに、美しく咲き誇る明日へ。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

孤独王は、最後まで「答え」を出し切ることはできませんでした。

けれど彼は、答えを探し続ける“未来”を、零に託しました。

不完全な世界で、不完全なまま、生きていくこと。

それこそが、この物語が導き出した、たった一つの完全な結論です。

またどこかで、物語をお届けできたら幸いです。

本当に、ありがとうございました。

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