第16話:完全なる再誕、最後の方程式
第15話への熱いコメント、ありがとうございます。
「……計算外の遠回りをしてしまった」
兄の「目」を受け継ぎ、真の復活を遂げた孤独王。
けれどその力は、自分の命をロウソクのように激しく燃やす、期間限定の奇跡でした。
決戦前、二人で分かち合ったパンの味。
それは、かつての冷徹な王が、初めて「明日」を願った瞬間でもありました。
もう、逃げない。
二人の絆が、世界を支配する巨大な悪へと牙を剥く。
最終決戦へのプロローグ、第16話。
皇が遺した「目」は、俺の世界を完全に変えた。
脳内を駆け巡る演算は以前の数倍。それでいて、兄の視神経がもたらす「世界の解像度」は、かつて俺が冷徹な数値としてしか捉えていなかった風景に、色彩と意味を与えていた。
決戦の朝。俺たちは王都を一望する廃墟の屋上にいた。
「……零。これを食べたら、出発だ」
俺は懐から、ボロボロになった紙に包まれた黒パンを取り出した。
記憶を失っていた間に、零が何度も食べさせてくれた、あの「あまい」パン。
俺たちは半分に割り、静かに口に運んだ。
「……本当だ。甘いな、零」
「……うん。おじさんが、おじさんに戻ってくれたから、もっと甘く感じるよ」
零は無理に笑おうとして、けれどその瞳には不安が滲んでいた。
俺の脳は非情にも弾き出す。――この戦いで俺の肉体が維持できる限界時間は、あと3600秒。
皇から譲渡された機能の負荷は、俺の寿命を極限まで前借りしている状態だった。
「零。……約束してくれ。もし、俺の計算が途切れた時は、貴様は振り返らずに北へ行け。あそこには、俺が用意した『白紙の未来』がある」
「……やだ。約束しない。おじさんが計算を間違えたら、私が『記憶』で補完する。……二人で一つだって、皇さんも言ってたでしょ?」
零の真っ直ぐな瞳に、俺は初めて演算を止めた。
計算ではない。これは、信頼だ。
「……ああ。そうだったな。……では、数式を書き換える。生存確率、算出不能。……だが、『二人で帰る』という答えだけを、唯一の解に設定する」
俺は立ち上がり、王都の管制タワーを指差した。
皇の目が、タワーを取り囲む数万の警備ドローンと、魔導障壁の「隙間」を完璧に捉えている。
「行くぞ、零。……世界を支配しているつもりでいる、あの老いぼれたちに見せてやろう。……欠損品と呼ばれた俺たちが、どれほど美しい正解(答え)を出すかを」
俺は零の手を握り、そのまま地上へと飛び降りた。
空中。襲い来るドローンの弾幕。
俺の脳内には、かつてないほど巨大な、そして透き通った方程式が組み上がっていた。
「……第1段階、演算開始。……ノイズを排除しろ。俺たちの道に、障害物は……0%だ!」
背後で爆炎が咲く中、俺たちは一直線に、元凶たる「王都議事堂」へと突き進む。
そこには、俺たちを「パーツ」と呼び、使い捨てようとした、この国の「支配者」が待っている。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
最強の脳と最強の目が合わさったおじさんは、もはや無敵に見えます。
けれど、その代償は「3600秒」。
わずか1時間という限られた命の中で、彼は零に未来を残せるのか。
「二人で帰る」という、孤独王が初めて計算を無視して導き出した答え。
その答えが現実になるのか、それとも悲劇が待っているのか。
次回、第17話。
「鋼鉄の牙城、暴かれる独裁者」。
王都の最深部で、二人はこの国の「本当の王」と対峙します。
「……第17話:鋼鉄の牙城、暴かれる独裁者」
いよいよラスト4話。最後まで、息つく暇もない展開をお届けします!
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