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完璧すぎる悪の計算式。狂わせたのは、たった一つの計算外な「愛」だった  作者: Zacku


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14/21

『第13話:偽りの楽園、鏡の中の再会』

第12話、零の戦う姿への応援ありがとうございました。

「……私がおじさんの代わりに、全部覚えておくから」

記憶を失い、無垢な男となった孤独王。

彼を連れて逃げ込んだ地下都市「エデン」で、零は思わぬ再会を果たします。

生きていた兄・皇。彼から告げられる、残酷な「真実」。

守るべきは、今の穏やかな日常か。

それとも、失われた悲しくも美しい「絆」の記憶か。

揺れ動く零の心と、変わり果てた兄弟の再会。

第13話、物語はさらに深く、残酷な選択へと進んでいきます。

追っ手を退けた私たちが辿り着いたのは、王都の地下に広がる巨大な隠れ里――通称「下層楽園エデン」だった。

 地上での争いを逃れた者たちが身を寄せるその場所は、おじさんが失った記憶のように、どこかぼんやりとしていて、けれど不思議と穏やかな空気が流れていた。

「……ここなら、しばらくは安心だよ、おじさん」

 私はおじさんの手を引き、小さな宿の一室に落ち着いた。

 おじさんは窓から見える地下の人工的な光を眺め、子供のように目を輝かせている。

「不思議だね、零さん。……僕は、ずっと暗い場所(檻)にいたような気がするんだ。でも、今は君の顔が、何よりも明るく見えるよ」

 おじさんの屈託のない微笑み。それが、私の胸を鋭く刺す。

 この人は、もう二度と「孤独王」には戻らない。私の知っている、あの冷徹で、不器用で、けれど誰よりも私を必要としてくれた人は、もうどこにもいないのだ。

 その夜。おじさんが眠りについた後、私は部屋を出て一人、エデンの広場へと向かった。

 おじさんの代わりに、私がこの街の勢力図や出口を「記憶」しておかなければならない。そう決意して歩き出した時――。

「……皮肉なものだな。脳を焼き切ってまでバグを守るとは、あいつらしいと言えばあいつらしい」

 聞き覚えのある、冷ややかな声が闇の中から響いた。

 私は反射的におじさんの戦い方を模倣トレースし、腰に差したナイフに手をかける。

 

 街灯の影から現れたのは、ボロボロのコートを纏い、顔の半分を包帯で覆った男――死んだはずの、兄・こうだった。

「……皇。生きていたの?」

「死に損なっただけだ。俺の『神の目』は、地獄の底から這い上がるルートさえも見せてくれたからな」

 皇の瞳は、片方が濁り、視力を失っているように見えた。それでも残された右目は、鋭く私を見据えている。

 私は堪えきれず、皇に詰め寄った。

「……お願い、皇。あなたなら、おじさんの記憶を戻す方法を知っているんでしょ? 兄弟なら……!」

「……無理だ。あれは自壊デリートだ。一度消えたデータは、二度と復元できない。……あいつは、ただの『空っぽの器』になったんだよ」

 皇の言葉に、私は足の力が抜けるのを感じた。

 絶望に俯く私の前で、皇は自らの震える右目を押さえた。

「……零。お前は、あいつに『本当の自分』を取り戻してほしいのか? それとも、今の穏やかな『偽りの幸福』を続けさせてやりたいのか?」

 私は答えられなかった。

 おじさんのあの穏やかな笑顔を、もう一度奪うなんて、私にはできない。でも、私を「零」と呼んでくれた、あの厳しくて温かい瞳を、一生失ったままなのも耐えられない。

 宿へ戻ると、おじさんは目を覚ましていた。

 彼は不安そうに部屋の隅で膝を抱えていたが、私の顔を見た瞬間に、安堵のため息を漏らした。

「……おかえり、零さん。急にいなくなったから、君という『光』が消えてしまったかと思ったよ」

 おじさんは、私の手をそっと握った。

 その手の温もりは、記憶を失う前と何一つ変わっていなかった。

 私は彼の胸に顔を埋め、声を出さずに泣いた。おじさんは理由も知らず、ただ優しく私の背中をさすり続けてくれる。

「……ごめんね、おじさん。……私が、全部、全部守るからね」

 鏡の中に映る私たちは、まるでもう、あの戦いの日々などなかったかのような、ただの幸せな家族に見えた。

 けれど、私の心の中に刻まれたおじさんの背中は、いつまでも色褪せることなく、私を突き動かしている。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

生きていた皇。彼は敵なのか、それとも……。

皇の問いかけは、零にとって最も苦しいものでした。

おじさんにとっては、何も覚えていない今のほうが幸せなのかもしれません。でも、零にとっては、自分を知らないおじさんは、どこか遠い存在のようで。

「幸せな偽物」と「苦しい本物」。

零が出した答えは、果たしておじさんを救うのでしょうか。

次回、第14話。

「忘却の淵、目覚める残響」。

平穏なエデンに、王都の魔の手が迫ります。その時、おじさんの体に異変が起こり――。

「……第14話:忘却の淵、目覚める残響」

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