『第10話:不完全な僕らの、完全な答え』
第9話、衝撃の真実への反応ありがとうございます。
「……我ら兄弟は、一人の人間を二つに割って作られた、予備のパーツだ」
あまりに残酷な出生の秘密を知った孤独王と皇。
救済の名の下に、兄は弟を「取り込もう」と刃を向けます。
絶体絶命の兄弟を救ったのは、失敗作と呼ばれた少女の、あまりに真っ直ぐな涙でした。
物語の第一部、堂々の完結。
不完全な者たちが導き出した、たった一つの答えとは。
第10話、ぜひその結末を見届けてください
モニターの青白い光が、俺と皇の顔を冷酷に照らし出していた。
画面に並ぶ遺伝子配列。俺の「脳」と兄の「目」は、本来一人の人間に備わるべき機能を強引に分断し、特化させた結果だと、無機質なデータが告げている。
「……笑えるな。俺たちの人生は、たった一人の『完璧な兵器』を作るための、ただの分割作業だったわけだ」
俺の言葉に、皇は答えなかった。ただ、抜かれた剣の先が、わずかに震えている。
最強の『神の目』。それは、俺という「脳」を失った欠損を埋めるために、過剰なまでの視覚情報を処理し続ける呪いだ。
「弟よ。……いや、我が『半身』よ。俺の視界はもう、限界だ。何もかもが二重に見え、世界がノイズで塗り潰されていく。……お前を取り込み、一つに戻る。それが、俺に与えられた唯一の救済プログラムだ」
皇が地を蹴った。
一瞬で間合いを詰められた俺の喉元に、冷たい刃が迫る。
脳内演算が叫ぶ。――回避不能。生存確率、0.001%。
「やめてぇぇぇッ!!」
その時、俺と皇の間に、零が飛び込んできた。
彼女は両手を広げ、震える体で皇の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「……おじさんも、あなたも、パーツなんかじゃない! 二人とも、私の大切なおじさんだよ!」
零の叫びと共に、彼女の『完全記憶』が暴走を始めた。
施設内のスピーカー、モニター、あらゆる電子機器が彼女の感情に同期し、かつての研究所で二人が流した「痛み」の映像を映し出す。
「……零、どけ! 死ぬぞ!」
「やだ! 二人を、一人になんかさせない! 不完全でもいい……欠けててもいいんだよ! 私だって、失敗作だって言われたけど……おじさんが、パンをくれたとき、生きてていいんだって思えたから……!」
皇の剣が、零の首筋で止まった。
零の涙が、兄の頬を伝い落ちる。
皇の『神の目』が捉えたのは、敵の動きではなく、自分と同じように震えている一人の少女の心だった。
「…………。……そうか。俺の目は、一番大切なものを見ていなかったようだな」
皇は静かに剣を収め、膝をついた。
彼の瞳から、異常な光が消えていく。過剰な負荷に耐えきれず、その機能が停止しようとしていた。
「……行け、弟よ。この施設は、180秒後に自爆するように俺がセットした。……パーツとしての俺は、ここでゴミと一緒に消えてやる」
「……兄上」
俺は動けない零を抱き上げ、出口へと向かう。
だが、最後に一度だけ振り返った。
「……兄上。俺の計算によれば……貴様がその瓦礫の下で生き延びる確率は、*.01%だ。……だが、俺はその数値を、一度も信じたことはない」
爆鳴と共に、俺たちの過去が崩落していく。
背負った零の温もりを感じながら、俺は朝焼けの空へと駆け出した。
俺たちの数式はまだ、終わっていない。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
第10話をもって、孤独王と零、そして兄・皇の因縁を描いた『研究所編』は幕を閉じます。
「不完全でも、生きていていい」。
その答えを見つけた孤独王は、もう以前の「死神」ではありません。
さて、ここから物語は新章へと突入します。
国という巨大な悪に対し、孤独王がどのように反撃を開始するのか。
そして、爆炎の中に消えた兄・皇の行方は――。
次回、第11話。
「世界を書き換える方程式」。
新章の幕開けに、ご期待ください!
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