性奴隷
「んなっ……!?」
そんなに驚くようなことかしら。
だいの大人がそろいもそろって顔を真っ赤にして。
横一列に並んだ赤ら顔に、わたしは屋台に並んだりんご飴を思いだした。
チラリとオスカーさんに目を向ければ、クールな印象だった顔が驚愕に満ちていたけども赤面はしていなかった。驚きの方が勝ったという感じかしら。
「おっ……! お前っ! そんなことをこんな場で堂々と!」
隣にいた騎士が耳まで真っ赤にして口元を抑え、もごもごと言い募った。
話題にするのも恥ずかしそう。
どれだけ免疫ないのよ。そこにビックリだわ。
「オスカー殿! やはりこの娘ではないのでは!? 我々が考えていたことは間違っていなかったということですぞ!」
続け様に頬骨が突きでた骸骨みたいな顔の男が、ギョロリとした目を剥いて声を張り上げる。
それって何よ?
「伝承の内容についてはお前も聞いたはずだ。そして我々はこの砂漠をくまなく探索した。そうして見つけたのはこの者だけだ」
軽く溜息をついた後、オスカーさんは再び口をひらいた。
「皆も知っている通り、巫女の本分は神々との交わりによって加護を得、繁栄をもたらすことにある。しかし婚姻が許されていることも承知だろう。それは次世代の巫女を誕生させるために子孫を残す必要があるからだ。つまり生娘である必要はない」
今度はわたしが驚く番だった。
わたしの世界で巫女とは邪馬台国の卑弥呼が始まりで、彼女は生涯夫を持たなかった。
お母さんが卑弥呼役を演じた時に聞いたから間違いない。
だからきっと巫女というのは穢れがつかないように純潔を守る必要があると思っていたんだけど。
それなのに巫女であり続けた上に結婚が許されていて、その後は子作りが役目ですって? 夜な夜なせっせと子作りに励む巫女なんて聞いたことがないわよ。
どんな巫女なのよ、それ。
「それはそうかもしれませんが。しかしこの娘の場合は些か、その……いき過ぎているのでは? このような体の娘では、神々の加護を得られるとはとても思えませんが!」
骸骨おじさんが食い下がる。
しかしなんだか腹の立ついい方をするわね。
いき過ぎてるってなんのことよ?
だって巫女は結婚するのも子作りもアリなんでしょ。
それならオスカーさんの言う通り、なんの問題もないじゃない。
それにこのような体ですって?
わたしはこれでもモデルやってんのよ。
プロポーションにはそれなりに自負もある。
ここで黙っていたら名が廃れるわ!
わたしはキッと骸骨おじさんを睨み付けた。
「ちょっと、そこの骸骨みたいなあなた! 聞いてあげるわよ。わたしの体のどこに難癖付けたいっていうの?」
おい、やめないか! とオスカーさんが止めに入ろうとしたけど、わたし達は睨み合ったままだ。
骸骨おじさんはヒクヒクと口元を痙攣させながら、やたらと節が目立つ骨張った人差し指をこちらにビシッと向けて、
「お前の……っ」
「ルドルフ! やめろ!」
「お前のその首の青痣だ!! 繋がれていたんだろう!? 奴隷のくせに生意気な!! どうせ主人の慰み者だったのだろう? 今も裸同然の格好をして新しい主人でも探しているのだろうが! そんな女が巫女だと? 笑わせるな!」
ルドルフと呼ばれた骸骨おじさんが唾を吐き散らす。
顔中に侮蔑の色がありありと浮かび上がり、たいして肉のない頬を醜く歪ませる。
「ルドルフさんっ!」
わたしの隣にいる青年が顔を真っ青にして悲鳴じみた声をあげる。
焦ったように立ち上がった青年はわたしとルドルフの顔をオロオロしながら交互にうかがっていた。
だけどわたしは口をポカンと半開きにしたまま呆然と立ち尽くす。
――開いた口が塞がらない。
首の青あざって?
確かにまだヒリヒリとした痛みがある。
そろそろと首に手を伸ばし、指先でそっとなぞるとチクッとした痛みが走った。
少し…ザラついてる?
指を離してみると、指腹が薄らと赤く湿っていた。
これって……血?
そう思ったとたん顔からサーッと血の気が引いた。
「青あざ…できてるの……?」
誰に問うわけでもなく、消え入りそうな声がもれた。
――先に伝えようと思ったのだがな。
おニャンコ様の声にまたポカンとしてしまう。
「い……いつから?」
――お主と初めて会った時からだ。最初に見た時はそれほどハッキリとはしていなかったが……時間が経ってより目立ってきたように見受けられる。
なん……ですって……
「ふんっ図星だったようだな! 顔が青くなっておるわ! やはりわたしの明察通りだったな! 下賤な女は高望みをせずに主人のもとにでも帰るがよい!」
わたしが何もいい返さない様子を見て、調子づいたルドルフが畳みかける。
「ルドルフさん! あんまりではないですか。せっかく主人のもとから離れられたというのにまた元へ戻れなど……せめてアイゼンまで連れて行ってあげるくらいは……」
立ち上がった青年が悲しそうな目でわたしをチラリと見た。
待って。なによ、その目。
「ふんっ! どうせ身体を売ることしか能のない女だ。アイゼンに連れて行った所でクソの役にも立たん!」
わたしの中でプツンと何かが切れた音がした。
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