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結果発表②

「それでは、これよりおから料理審査会の発表を行う。どれも甲乙付け難い料理ではあったが、これは審査会。合計点数で競う物である。


 ここで、予から低コスト、高コストの物に分けて上位三名の発表をする物とする」


 ユリウスがそう言うと、ライザーが壇上に上がり、一枚の紙を手渡した。


 その紙を受け取り、ユリウスは再び正面へ向き直る。


 場の空気が、緊張で張り詰めた。


「先ずは低コスト部門。3位、アラフ領出身マール、26点」


 おおっ!!と拍手喝采が巻き起こる。


「マールは壇上へ上がれ」


 ライザーの指示でマールは皆から、良かったな、すげえ! と言葉をかけられながら、壇上へと進み出た。


 ユリウスの手元には、一枚の賞状。

 あれは、私が頼んでユリウスに書いてもらったものだ。この世界には賞状ってないんだって。


 賞状があれば、店にも飾れるし、思い出になるし、良い事尽くめだと思って急遽ライザーに頼んで制作して貰った。


「よく頑張った。これからも国の為、民の為に精進して貰いたい」


 そう言ってユリウスから直接、その賞状を手渡される。


 おおおおおおおっ!!


 コック達と観客から大きな歓声が生まれ、ユリウスを始め、私、大臣達と大きな拍手が送られた。


 マールは嬉しそうに賞状を受け取り、胸の中に大事そうに抱えてお礼を言った。


 その目には涙が浮かんでいた。


 続いて二位の発表があり、同じように盛大な拍手の中、賞状を受け取り壇上から下がる。


「低コスト部門、一位。合計得点29点」


 ほぼ満点だ。それまで興奮冷めやらぬ観客達も息を飲んでユリウスの言葉を待った。


「ヘッドウール領」


 ざわざわっ、ヘッドウール? 誰だ、誰だ、と観客から声が漏れる。


「アリアンヌ・ベレット」


 おおおおおおおおっ!!


 割れるような拍手だった。


 アリアンヌ・ベレット。


 彼女は数少ない女性のコックだった。私も彼女の事は記憶にある。


 この世界で女性がコックになるというのは、大変な事なのだそうだ。


 その中で、頑張ってコックの夢を掴んだ一人。


 男だらけの中、たった数人の女性コック達。


 男女平等の社会にいた私としても、とても誇らしく、嬉しかった。


 涙を拭きながら壇上に登る彼女を、私は心からの拍手で送った。


「続いて、高コスト部門の発表とする。高コスト部門、上位三名に関してはおから料理の発案者である立花朱鳥が出店する、おから料理店にその品を提供する権利を有する物である」


 青空の下、ユリウスの声が高らかに響き渡る。


 低コスト部門の発表が終わり、皆が受賞した者を労い、その涙を流す中、彼の言葉に皆の顔付きが変わり、静さを取り戻した。


「三位、パットルーク領ナット。25点」


 おおおおおっ!! ナットーっ!!

 コック達が喜びに声を上げた。


 私も驚いた。

 だって、あの肉本当に美味しかった。

 でもまさか上位三位に入るなんて!


 知った顔が入賞出来るなんて本当に嬉しい!

 私も力一杯の拍手を送った。


 ナットは皆から肩を叩かれ、頭を撫でられ、抱きしめられたりしながら前へと進み、壇上へと登った。


 本当なら、私から賞状を手渡したいくらい。


 でも、きっとユリウスの方が良いだろう。


 ユリウスから労いの言葉と賞状を貰い、頭を下げたナットは、大臣達と並んでいた私の方へ身体を向けて、すうっと大きく息を吸った。


「アスカさんっ!! ほんっとうに、ほんっとうに、ありがとうございましたっ!!


 俺、絶対にここで過ごした日々を忘れません!! 


 アスカさんに教わった事も、忘れません!!

 感謝しても、しきれません!!

 ほんっとうに、ありがとうございました!!」


 その目が涙を溜めて、私を見て笑った。


 私も忘れない。

 皆と過ごした日々。

 皆で囲んだ朝食。

 お祭り騒ぎ。

 本当に、本当に、楽しかった。


「ナット!! おめでとうっ!!」


 大きな声でナットに向けて叫ぶ。

 そして、力一杯の拍手を送った。

 それに続いて、観客からも盛大な拍手がナットに送られた。


 続いた二位の発表も、割れんばかりの拍手喝采が送られた。


 二位の人は、名前は一致しなかったけど、見覚えがある。朝食でいつも側にいた子だった。


 その子も最後には私に向き直って大きな声でお礼の言葉を伝えてくれて、私は嬉しくて泣きそうになった。


「高コスト部門、第一位。合計得点28点」


 ユリウスの朗々と響き渡るその声で、ついに一位の発表がなされた。 


 その人は、私が集計した豚の腸詰めを作った人だった。


 今までにない程の歓声と拍手、農家の人達も領地の人達も、領主も、飛び上がって喜んだ。


 いつまでも、いつまでも鳴り止まぬ拍手の中、おから料理審査会はついに閉幕の時を迎えた。


「はあーっ、終わっちまったなぁ」


「そうねー、完全燃焼した感じよね」


「俺、まだ食べたおから料理の味覚えてる……」


「御当主様の発表も実に素晴らしかった。敷地内を解放したのは、英断だったな。食堂では、ああはいかなかっただろう」


「そうねぇ」


 まだあの歓声が耳に残っている。

 皆の笑顔、涙、抱き合う人達。

 本当に素晴らしい時間だった。 


 けれど、いつまでも感傷に浸ってはいられない。


 明日には、領主に向けての交付がある。


 交付がなされれば、あのコック達も一斉にこの城を飛び立ち、派遣される。


 城内を見渡すと、既に侍女達は明日の交付式に向けて準備を始めていた。


「さて、私も行かなきゃならないわ」


「ああ、我々も忙しくなるな」


「これから続々領主達来るもんなぁ。俺、お祭りの方が良かった」


 テオがそんな事を言って、皆の笑いを誘う。


 さあ、気持ちを切り替えなけらばならない。


 皆がそれぞれの持ち場へと戻るべく、その場を後にした。




おから料理審査会終了!


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