異世界を渡るもの
「我々も異世界というものの存在は知識として知っている。ゆえにあり得ないことではないのだろう。我々が異世界へ行くことはままならないが、神々は往来することができるともいうしな」
でたわよ、神々。ここはそんなに信仰の厚い世界なのかしら。
でも異世界の認識があるのは意外だった。
おかげであたまのおかしい女とは思われずに済んだし。
ホッと胸を撫で下ろしたけど、それよりもいま聞き捨てならない言葉をいったわ!
神様は異世界へ行くことができる!?
それならわたし、もしかして帰れるんじゃないのっ!?
そう思った途端に頭痛など遠い彼方へ吹き飛んで、一気にテンションが天辺まで突き上げた。
「神様とはどうやったら会えるんですか!?」
食らいつくような勢いで尋ねたわたしに、オスカーさんは少し驚いたように目を見張った。
「わたしにはわからない。元来より、神々と交わりを果たせるのは運命により定められた巫女となる存在なのだ。巫女だけが神々の恩恵を受け、公使することができるという」
じゃあ、その巫女ちゃんに頼み込むしかない!
「その巫女ってどこにいるんですか?」
「伝承によれば次代の巫女は今日この時、シュテーゼン砂漠の東に舞い降りると在る」
「シュテーゼン砂漠の東ってここじゃないですか」
オスカーさんの言葉に思わずポカンとしてしまう。
ああ、わかったわ。
オスカーさんはその巫女ちゃんを探しにここまでやってきた。
それなのにわたしが大騒ぎしてぶっ倒れたものだから、ここで足止めをくらってしまったんだわ。
わたしは勢いよく立ち上がった。
「こんなことしている場合じゃありません! 今すぐ探しにいきましょう!」
それなのに誰一人として後に続くものはいなかった。
みなそろってポカンとわたしを見上げ、沈黙を返す。
……え? 何? 探さないの?
――やはりお主は大馬鹿者だ。
沈黙を破ったのはおニャン子様の声だった。
「どーゆーことよ」
「その巫女とはお前のことだ」
軽く睨みをきかせておニャン子様に問いかけたのに、答えたのはオスカーさんだった。
自分に尋ねられたと思ったらしい。
だけどわたしといえば、オスカーさんを凝視ししたままその場に固まってしまった。
「誰が。巫女だっていいました?」
「お前が、伝承の巫女だといったのだ」
ぱちくりとまばたきをして、わたしは無言でオスカーさんを見つめ返した。
途端にふつふつと笑いが込み上げる。
「あっはっははは!!」
つい我慢しきれなくてお腹を抱えたたわたしに、それまで静かにしていた騎士達がざわめきたつ。
「なっ…! 何を笑っている!?」
「何がそんなに可笑しいのか!?」
それぞれわたしの態度を咎めるような言い方をして、怒っているようにも見えた。それでもわたしは笑いを止められない。
だって巫女ってあれでしょう? 神社とかにいる生娘。
目尻に浮いた涙を指先でぬぐいながら最後にフフッと小さく笑って息を整え、わたしはキッパリといい放った。
「そんなわけないわ。だってわたし、男性経験あるもの」
堂々といい放ったとたん、ゴホッ! ゲホッゲハッ! とその場にいた騎士たちは全員、顔を赤らめて咳こんだ。
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