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思いがけない壁

 今まで黙ってユリウスの話に耳を傾けていた兵士達がざわりとする。


「理由を聞いても?」


 私の言葉に動揺する事もなく、作り笑いのような優しい笑みを浮かべながらも、ユリウスの目はまったく笑っていなかった。

 

「先にも言いましたが、私はこの世界にもこの国に縁もゆかりもありません。


 私はただ、元の世界へ帰りたい。この国が荒廃しようと関係ありません。


 この国を立て直すのは、今この国を纏めているあなた方の采配だし、現状は力量不足に他ならない。そのせいで、自国の民が被害にあっているのも、ご存知でしょう」


 巫女巫女っていい加減にして欲しい。

 自分達でなんとかしろっていうのよ。

 あ、そうだ。

 トキの事話さなくちゃ。


「ここに来る途中で、野盗の被害にあった集落の生き残りの少年を助けました。ここまで国を荒らせた結果の被害者です。身寄りもないので、ここで面倒見てください」


「無礼な! 我が国が廃れたのは長い間、巫女がいなかった為だ! その責任を我々に取れと言うのか!」


 けろっとそう言った私の言葉に、いち早く反応したライザーが叫んだ。


「そうよ、当たり前でしょう。じゃあ、何のために貴方達は偉そうにここにいるのよ。


 巫女は神々の恩恵を受けられるんだっけ? でもそれだけじゃ、国は纏められない。だから、あなた方がいるんでしょう。


 国民の保護。それも責務のひとつだと思うけど?」


 ぐ、とライザーが口籠る。


「し、しかし、孤児となる者は五万といるのだ。そのすべてをこの城で養うわけには行かぬ!」


「そうね、それはいくらなんでも無理でしょう。

だから、私が拾った子だけ面倒見てくれればいいわ」


 自分勝手な言い分だと思う。無責任だとも思う。けれど、仕方ない。私はずっとトキの面倒は見てあげられないのだから。


「お前の責任はどうするつもりだ?」


 私の心の痛みを覗き見たように、そう切り返したのはユリウスだった。


 黙って見逃してはくれなかったかと、私は内心舌打ちを打つ。


 その鋭い瞳が私の触れられたくない部分から目を離さない。


「その者は、お前が拾ったのであろう。拾った責任はお前のものだ。それを我らに押し付けるつもりか?」


 この国の責任として押し付けるつもりだったけど、そうは問屋が卸さないらしい。


 やはり当主ともなると、頭が回る。


 お城勤めともなれば、それなりに待遇は保証されると思ったし、飢えに苦しむこともないと思っての提案だったけど、容易に受け入れてはくれないみたいね。


 それならば仕方がない。


「私の責任は、私が取るわ。貴方達が面倒を見ないと言うなら、彼が独り立ちする日まで私が面倒を見る」


 そう言うと、ユリウスは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。


「ならば、ここで面倒を見るといい」


 一瞬の沈黙。


「はい?」


 ここで、面倒を見る?この城内で?


 それは、つまり。


 私の考えが纏まるより早く、ユリウスから続けざまに言葉が紡がれる。


「我らにその子供の面倒を見る余裕はない。しかし、その場は提供しよう。お前が巫女になろうとなるまいと、寝床は必要だろう?


 城下町を見たと思うが、宿屋は開いておらぬ。ここにおれば、寝床も確保でき、食事も付く。ただし、その子供の面倒はお前が見るのだ」


 寝床の提供。


 確かに巫女にならないなら出て行けよ、と今すぐ放り出されても困る。


 でも、なんの見返りもなく寝床の提供なんてするかしら。しかも、五万といる孤児の一人までも付いてくる。


 待ちに待った600年振りの巫女。


 単に私をむざむざと城外へ放り出したくないだけか。何か裏がある気がして私は押し黙った。


「それに。巫女が神々の力を得る為には、我らの協力が必要不可欠なのだがな」


 ほら、出た。

 なんかあると思った。


「どういう事ですか」


 しかめっ面で尋ねる私にユリウスは薄く笑う。


「巫女が神々の加護を得る為には、その源となる力の解放が必要なのだ。


 力の解放は、中央大国セノーリアに座す千年巫女の力を借りなければならぬ。


 そして、その中央大国へ行くためには、私の許可が必要となるのだ」


 なんですってぇぇぇぇぇ!!!


 許可って、あれでしょ。

 テオが言っていた、門柱のシステム。

 当主の許可がなければ、城下町に戻されるってあれ。


 そのセノーリアって国に行っても、中に入れないって、そういうこと!?


「ちょっと! それ本当なの!?」


 くわっ! と目を剥いてヤマトを見下ろす。


 神だのなんだのって言ってたのはヤマトだ。


 私にも呪いみたいなこと、あれやこれやとやってたじゃない。


 本当にそんな事しなきゃ、加護は手にできないの!?



 __我が与えたのは、お主との繋がりを持つための力の解放だ。元々巫女となる者は神々の恩恵を受ける器が備わってはいる。


__だが、容易に恩恵を受ける為には、更なる力の解放が必要なのは間違いない。お主が異界の渡りを望むならば、それに見合った神の恩恵を受けねばなるまい。


__それには、力の解放の底上げは必要と思われる。


 なん、ですと。

 この猫、本当に使えない。使えないったら、使えない!!


 それがないと、元に帰れないっていうわけ。私は無言で頭を抱えた。

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