黄昏の赦し
そうしてプレオープンは大反響のうちに終わりを迎えたることができた。
翌日のグランドオープンでは信じられないほどの人々がユーラを訪れた。貧困の差が激しいのでやはり身分の高そうな人達が目につくけれど、中にはそれとは違う人々も混ざっていて足を運ぶ様子が見受けられた。
あの閑散とした城下町がいまや溢れんばかりの人で賑わい、店先に列を織り成す。呉服屋の女将も豆腐屋の爺ちゃんも揃って店を開け、それぞれに客を呼び寄せる。
少し離れたベンチに腰掛けて、わたしとユリウスはそんな様子を眺めていた。
「大成功ね」
「そうだな」
「あなたのおかげだわ。本当にありがとう」
「料理を発案したのはその方だ。予はその手助けをしたに過ぎぬ」
「じゃあ二人の功績ね」
「みんなの功績だ」
あの日を境にユリウスは変わった。城下町にもよく足を運ぶようになったし、ライザーにもよく相談するようになったのだとか。少し前に廊下ですれ違ったラーミルさんが嬉しそうに教えてくれた。
「これで少しは償えただろうか」
「まだ気にしてるの?」
ぽつりとこぼしたユリウスに眉を寄せるとヤマトがするりと前に歩み出て、ユリウスの前にストンと腰を下ろした。
――我はしかと見届けた。お主には荷が重いと言ったあの言葉、取り消そう。今後もこの国のために、しかと務めるがよい。
「ヤマト殿……」
ユリウスは真っ直ぐに自分を見上げる金色の瞳を見つめて、目を見張った。
ヤマトの声は自分から話しかけようとしない限り、わたし以外には届かない。あ、精霊を宿しているザックは別だけど。
だからこれはヤマトが自分の意思でユリウスに語りかけたことになる。
わたしは少し驚いた。ヤマトが他人に声を届けようとするのは大概怒って怒っている時だ。なのにいまのヤマトの声はとても穏やかで冷静で。そして優しさが滲むものだった。
それがどのようにユリウスに届いたのか。
ユリウスはくしゃりと顔を歪めて「感謝する……」と小さく肩をふるわせた。
ふたりの間に何かあったのかしら。
そう思ったけどこの様子をみるからに丸く収まったのでしょう。詮索するのはKYってもんよね。
わたしはヤマトを抱き上げて膝に乗せ、あたまを撫でてあげた。それから顔を伏せるユリウスの肩をポンポンと叩いて再び顔を上げるまで心地よい喧騒を耳にしながら人々の笑顔を眺める。
これでお金を稼ぐ段取りは全て整った。あとは待ちに待った精霊の泉に向けて旅立つのみである。




