グランドオープン開始
「いらっしゃいませ〜!!」
店舗の入り口に立つ、客寄せ要員が元気に声をあげる。
お好み焼き屋にはキッシュ、小料理屋にはテオとトキ。メイドカフェにはわたしとザックが立つ。期待に胸を膨らませ、ぞろぞろと中へ足を踏み入れる領主たちを席に案内するのはオスカーさんやナルシスト。
オスカーさんは小料理おから担当。ナルシストは当然の顔をしてメイドカフェの客引きだ。
黒髪黒目の品性ある騎士と金髪碧眼、ぶっ飛んだキラキラナルシスト。
この対照的なふたりの外見がどのように影響するか。
実はこっそりとした楽しみだったりする。
普段のナルシストを知っていたのなら間違いなく軍配はオスカーさんに上がるはず。
けれどサワナ訪問時に異常なまでのナルシストの人気をみた時にわたしは悟った。
中身がどれだけ変態で気持ち悪かろうと見た目さえよければ大体誤魔化せるのだと。
サワナでキャーキャーいってたあの女性達。
夜な夜な等身大の人形に卑猥な格好をさせてハアハアいってるナルシストの実態を知ったらどう思うのかしら。
まっ先に秘密を暴いてしまったミカンはあれ以来、深夜になると定期的にナルシストの部屋の前を巡回して変な奇声が聞こえてこないか耳をそば立てているらしい。
なにもそんな、自ら地獄の蓋を開けるようなことしなくてもいいと思うんだけど。
まあ、それはそれとしていまのナルシストの見た目は完璧。
ややフリルが目立っているけどいつものことだし。
カフェテイストに衣装を合わせたこともあって、普段より格好は控えめ。真っ青な空に煌々と輝く太陽が金髪に反射して赤いピアスも笑顔も2.5倍増し。
その数歩後ろで居心地悪そうに無表情で突っ立てるザックからは、なんで俺がこんなことしなきゃなんねーんだって心の声が全身からダダ漏れ。
だけどこれも知らぬが仏、イケメンに性悪関係なしの法則に則って、クールな銀髪王子さながらの佇まいにみえるマジックが自動的に発動中。
わたしはナルシストとザックを交互に見ながら頬を染める領主の令嬢やご婦人方に、内心ニヤリとほくそ笑んだ。
見たところ一番人気は先の宣伝が功を奏したのか、やはり小料理屋「おから」。
次いで甘いソースの香りに引き寄せられたのか、お好み焼き屋。そして三番人気はメイドカフェだった。
わたしからすればメイドカフェは見慣れたものだけれど、この世界ではやはり異質さが際だっているようね。外観はとても可愛らしいから、チラチラと視線を送ってくる領主達も多い。だけど正体不明なので躊躇してるってところかしら。
大方、予想通り。あとはどれだけ接客で呼び込めるかだ。
メイドカフェ一番乗りのモルモット夫妻は店内の洋装や可愛らしいメイド達に感極まって何度も拍手を送っていたし、他のお客さんはメイドに驚きつつも初めて見るデザートを恐る恐る口に運んでは目を見張った。
砂糖の量産がまだ厳しいからあまり多く準備はできなかったけれど、メニューは可能な限り取り揃えたつもり。
豆乳ムース、豆乳ドリンク、豆乳ケーキ、おからクッキー、おからのダックワーズ、大豆マフィン、黒砂糖をキャラメルにして添えた豆乳の葛など。和洋取り揃えたラインナップ。
その裏には神殿で炎の精霊に火あぶりという可愛らしい悪戯をされながら砂糖量産に奮闘する子分たちの努力がある。感謝。
「この甘味……優しい味がしてとても美味しいわ」
「こっちのは果物が入ってる。酸味が利いてて美味しいよ」
「こっちのは少し冷たくて、とても喉越しがいい。夏には良さそうだ」
「それに見た目がとても可愛らしいものばかりだわ! 色々頼みたくなってしまうわね」
メイドカフェの評価は上々といったところ。加えて可愛らしいメイドが男性客の元へ「ご主人様〜!」とおねだり。推しの萌え萌えオムライスを広めにかかる。
甘え上手なメイドに負けて萌え萌えオムライスの注文も増えだした。そこにナルシストが、この料理の素晴らしさをキラキラオーラを背負って熱弁。最後にはメイドが「またのお越しをお待ちしております! ご主人様あ!」と頭を下げる。
ニマニマしながら店を後にする領主たちに冷めた目を送るザック。
そーゆー目は向けちゃいけません。
皆様、お久しぶりです。
まったり更新中の一色姫凛です。
まったりしすぎて申し訳ないので、今日は三話公開予定です。
ぜひお楽しみください。
╰(*´︶`*)╯♡




