神様ナビゲーター
未来を視ることのできる加護。そんなものまであるなんて神様の力は未知数だ。
一体どれほど神様がいるのか見当もつかないし、その中でどの神様が異世界を渡ることができるのか想像もつかない。だけど未来を視ることができるなんて凄いどころの話じゃない。他にどんな神様がいるのか、ほんの少しだけ興味が湧いた。ほんの少しだけ。
――先見の神、ロティラスの加護だな。あの神の加護を受けるとは珍しい。
関心したようなおニャンコ様の言葉にがぜんやる気もでてくる。
そんな凄い神様の力ならぜひとも手に入れたい。
帰るために必要なわけではないかもしれないけど、先見なら何かの役にも立ちそうだものね!
「その神様はどこに行けば会えるの?」
「そんなこと俺が知るわけないだろ。あーでも、御当主様なら知ってるかもな」
青空を仰ぐテオが、ふと閃いたように付け足した。
「どうして御当主様なら知ってると思うの?」
「御当主様は歴代の書物をお持ちだ。過去の巫女様がどこでどうやって加護を得たのか記してある書物もあると思う。そんな大事なこと記録しない方がおかしいだろ?」
ニカッと笑ったテオにわたしは目から鱗が落ちる思いだった。
巫女は代々、国の中枢に身を置いていたとヤマトもいっていたし、その行動は至るところまで国に把握されていたはずだ。それなら貴重な巫女の言動を記録していないはずがない。
現に時見の巫女の予言書だって六百年という長い歳月保管してあった。
きっとそうだわ。必ずある。
それならその書物を借りて元の世界に帰してくれる神様探せばいいんだわ!
――神々は余程のことがない限り、同じ場所には定着せぬがな。
ピシッ
目を輝かせたわたしに冷水をかけるようなおニャンコ様のセリフが突き刺さった。
晴れやかだった表情は一転して氷像のごとく固まる。
油を切らしたカラクリ仕掛けの人形のようにギギギッと後ろに首を回してみれば、おニャンコ様は我関せずといった顔で昼寝に入る体勢を取ろうとしていた。
待ちなさい、化け猫。いい逃げしてるんじゃないわよ。
「じゃあ、どうやって神様探すのよ」
――そのために『導く者』がいるのだ。『導く者』は神々を探す力がある。巫女はその力を借りて神々の元へと赴き、加護を得るのだ。
その言葉に固まった表情筋は再び緩みだし、わたしは目を大きくしておニャンコ様を凝視した。
なんとぉ! そうだったのね。おニャンコ様は砂漠のナビじゃなくて神様ナビだったんだわ!
「じゃあわたしを元の世界に帰してくれる神様の場所教えてよ!」
今すぐ! とせかしたわたしに、おニャンコ様は興味なさそうに視線をそらして丸まった。
――わからぬ。話したであろう。我々は一心同体。巫女の力が弱ければ我の力も弱い。探れる神の力もそれに呼応するのだ。異世界をまたぐ神など高位の者であろう。何一つ加護を持たぬお主の力で、そのような高位の神など探せる道理はない。
なんですってええ⁉
すんっと顔をそむけたおニャンコ様にわたしは目をひん剥いた。
なんて使えない神ナビなのかしら!
レベルアップしないとすごい神様は見つけられないってゆーの?
使えない! 使えないわ! この神ナビ!!
一転して心の中でディスりながらピクピクと口元を痙攣させておニャンコ様を睨みつけるわたしに、テオが怪訝そうな視線を向けた。
「なあ、お前。誰と話してんだ?」
わたしはむんずとおニャンコ様をつかみあげると、前に回して鞍の上に乗せてみせた。
「このひと」
おニャンコ様には目もくれず、周りをキョロキョロと見渡しながらテオは首をひねる。
「どのひと?」
「あ、違った。この猫」
「はあ?」
なんか普通に会話してると猫ってこと忘れちゃうのよね。だって声は頭に響いてくるから。
素っ頓狂な声を上げたテオはポカーンとした顔をして、まじまじとおニャンコ様を見つめた。
「この猫と話してたって?」
「そう。この世界には話せる猫がいるのよ」
「いや、いねーよ」
お前何いってんの? とテオは呆れ顔だ。
「いないの?」
やっぱりと思う気持ちともしかしてという期待が交錯していたけど、やはり予想通りの返事だった。
やっぱりどこの世界に行っても猫は猫なのよ。それ以上でも以下でもない。そして猫は喋らない。わたしは改めてそんな下らないことを再認識した。
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