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新事業

「アスカ殿? 急にどうなされたのです?」


「モルモット! あなたもいらっしゃい。悠長にご飯なんか食べてる場合じゃないのよ!」



 私は立ち上がり、モルモットの樽のような身体をグイグイと引っ張りながら叫ぶ。



「お、お待ちくださいアスカ殿。今参りますから」



 モルモットそう言ってナプキンで丁寧に口元を拭くと、やっとのことで、よいしょと掛け声をかけながらその重そうな身体を起こした。


 その様子を不審げに眉を寄せて見ていたテオが、おかずを頬張りながら尋ねてくる。



「アスカ、おまえ何するつもりなんだ? まだご飯もあんまり食べてねえじゃんか」


「テオ、あなたも来て。行くわよ」



 答えも聞かずにわたしは大広間を飛び出し、モルモットの案内で女将さんがいる部屋まで案内してもらった。その後をみんなが慌てて付いて来る。


 コンコンとドアをノックすると、はーい、と中から可愛らしい声がしてガチャリという音と共に女将さんがドアの隙間から顔を覗かせた。



「突然すみません。女将さんにお話があって。中に入れてもらえませんか」



 そう言うと女将さんは少し驚いたように私を見て、それから答えを求めるように視線を動かしモルモットを見つめた。



「女将。アスカ殿は何やら大事な話があるようなのだ。聞いてやってはくれないかね」



「はあ……よろしいですよ。さ、どうぞ」



 大きく開かれたドアから、私、モルモットに続いて追いかけて来た皆がぞろぞろと入室する。


 私とモルモットは肩を並べて勧められた椅子に腰かけ、女将さんも正面のソファにゆるりと腰を落とした。



「それで、お話というのは?」


「ここで商売をさせて頂きたいんです」


「商売、ですか?」



 キッパリと言った私のセリフに女将さんは少し意表を突かれたように瞬きを繰り返した。


 まさかモルモットではなく私の口から商売なんて言葉が出るとは予想だにしていなかったんだろう。



「はい。わたしが考案したおから料理をここに置かせてください。お膳に一緒に出してもらっても構いませんし、お土産用に持ち帰れる形で置かせて欲しいんです」


「なるほど……!」



 その話の旨味にいち早く気が付いたモルモットがポンッと手を叩き、声を上げる。



「おから料理ですか?」



 女将は首を傾げてみせた。まだ公布は始まったばかりだし、女将が知らないのも当たり前だと思い、私は口を開く。




「ユーラで決まった新しい法案が、じきにここにも伝わるはずです。おから料理に基づいた法案です。これから先、おから料理は各地に広まるでしょう。その流行を先取りして、ここでおから料理をお土産として売り出すんです。


 温泉が湧いただけでも話題性は十分ですが、そこにおから料理のお土産が買えるとなれば、さらにこの宿屋街の人気も高まるはずです。そのためにも、これから私が教えるおから料理をお土産として売り出して貰いたいんです」




「女将。これは実にいい話だとわたしは思う。この娘さんはタチバナアスカ殿といって、御当主様の命でこれから普及されるおから料理の発案者なのだ。教えて貰って損はないと思うぞ」



「御当主様の命で……? そうですか。もしやモルモット様はユーラからの帰りなのですか?」



「そうだ。そのおから料理の公布のためにユーラに各領主が集められたのだ。サワナに帰り次第、わたしもおから料理を広げる為に動くつもりだ。アスカ殿は発案者として我が領地にお越し下さるところなのだよ」



「そうでしたか。であれば、アスカ様がこの宿に泊まられたのは幸運でしたね。アスカ様、ぜひそのおから料理とやらをうちの料理人に教えてやって下さい。仰る通り、土産物として店頭に置かせて頂きます」




 女将はそう言ってにっこりと笑った。




 その後、女将が料理人に話を通してくれて、私は基本的なおからの作り方と、おから団子ときな粉団子を教え、小分けにして売ってもらうように指示をした。


 モルモットはこの後の大豆の入荷数やら価格相談やら、団子の売値などを女将と取り決めた。


 この世界の相場が分からなかったので、モルモットに丸投げしたのだ。


 お金に聡いモルモットなら、きっと良い値段に決めてくれる。


 サワナでひと稼ぎしようと思っていたけど、こんな形で儲け話がでるなんて。


 私は心の底から炎の精霊に感謝をした。









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― 新着の感想 ―
[良い点] アスカのたくましさは素晴らしいな! 商魂しっかりしていて、稼げるところに抜け目がない。 この地も潤っていくのでしょうね(*´∀`*)
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