16.月曜日のおせっかい
理子の決定打(無自覚)。の巻
月曜日、社食でお昼を食べてると向かい側に工藤くんが座った。私が食べ終わるのを見た工藤くんから声をかけられた。
用件は間違いなくアレンさんのことで、見られてしまったのはしょうがない。ここで事情聴取か・・・。
「・・・なるほど。小野塚の彼氏は隣に住んでいる人なのか」工藤くんは私から話を聞くと納得したようだった。
「そうだよ。」
「あのさ、俺から言うのもなんだけど、2次会は小池を励ます会だったんだ」
「励ます?小池くん何か落ち込むことでもあったっけ。仕事も課長からほめられてたし、会社の女子にも人気あるじゃない。まあ、あの酒癖の悪さは彼女の前ではさらさないほうがいいよ。工藤くんから注意したほうがいいんじゃない?」
「えーっと、小野塚?もしかして、歓迎会の小池の態度を酒癖だと思ってるのか?」
「当たり前でしょ。真っ赤な顔は体質だろうけど、態度がね~。素面ではさわやかなのに、お酒が入るとしつこくなるのはどうかと思う。」酒に飲まれるなら、飲むんじゃないよ。まったく。
「小野塚・・・・まあ、いいや。もうすぐ昼休みも終わるし・・・行くか。」工藤くんが席を立ったので、私も一緒に席を立った。
きりのいいところで仕事も終わり、会社から出たところで「小野塚さん」と声をかけられた。
声をかけられたほうをみると、小池くんが立っていた。
「小野塚さん、今日は定時?」
「小池くん、お疲れさま。小池くんは、残業?」
「うん。これから資料をまとめないといけないんだ」
「そうなんだ」
「・・・・」
「・・・・」
お互い、仕事の話以外にする話題もないのでなんとなく黙る。
「あのさ」と小池くんが口を開いた。
「金曜は、絡んだりしてごめんな。俺・・・」
「全然気にしてないよ。あ、でも・・・」
「え?」
「小池くん。酒に飲まれるなら、飲酒は控えめにしたほうがいいよ。あの酒癖じゃあ彼女に嫌われちゃうよ」
「え・・・いや、あれは・・・」
「ごめんね、おせっかいなこと言って。でもさ、気をつけたほうがいいよ。お疲れ様でした」
私は小池くんに言いたかったことを伝えると、駅に向かって歩いた。
「・・・というわけで。思わず、小池くんに酒癖を注意してしまったの。」
夕食時に家にやってきたアレンさんも交えて、私は今日の帰り際にあったことを家族に話す。
家族の反応は三者三様で、父と兄は笑いをこらえてるし、アレンさんにいたってはやたらと嬉しそうだ。
「なんかアレンさん、嬉しそう。どうして?」
「僕はリコと食事ができるだけで嬉しいからね。態度に出てしまうのかな」
「お父さんとお兄ちゃんは、何がおかしいのよ」
「え?あ~。さっきラジオで聞いた落語を思い出しちゃってな~。なあ、樹」
「え。そうそう、あれは面白かったよな~」
「・・・・。」なんか、ごまかされた気がする。
-火曜日昼間の小野塚家-
「小池くんとやらは理子のことが好きなんだろうね」
「あの見事なスルーっぷり・・・・父さん、理子があんなに鈍いのは誰に似たんだろう」
「母さんじゃないか?俺も母さんと付き合うまで大変だった」
テツオとイツキが昨日の夕飯のときを思い出して、しみじみと話している。なるほど、リコが自分に向けられる恋心に鈍いのは母親似なのか・・・・。
「アレン、お前も苦労するよな~」とイツキに言われたけど、俺は別に苦労はしていない。むしろ、本人が気づかないうちに虫排除ができるというもの。まあ、会社の男性たちには俺の存在が知れたから第二のコイケは出てこないだろうけどね。ま、出てきても俺が潰すけど。
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アレンが若干黒いです。




