表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹契約で結ばれた魔法少女たちは特別な感情を抱いてしまうかもしれませんよ  作者: 三色ライト
1章 雪溶け編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/102

016 雪溶けの日

「……来たわね」


 私が訓練室に入ると、氷彗(ひすい)さんは自主練の手を止め、私の方を向いて目を細めた。


氷彗(ひすい)さん……今日で終わらせます! 認めてもらいますから!」


 私は不敬にも氷彗さんを指さし、そう宣言してみせた。氷彗さんは私の言葉に眉を(ひそ)め、(いぶか)しげな表情だ。


「ずいぶんな自信ね。エネミーを一体倒したからといって、よくそこまで鼻を伸ばせるものだわ」

「エネミーを倒したことなんて関係ありません。私は私のために、氷彗さんに認められます!」


 私はマギア・ムーンに力を込め、袴姿の魔法少女衣装に変身した。

 氷彗さんは氷の剣を生成して握り、私に切先を向ける。


「……行くわよ」

「どうぞ」


 数瞬後、氷彗さんは床を蹴って加速。私の方へまっすぐと向かって来た。

 まず大前提として、氷彗さんには勝てない。あまりに強さのレベルが違いすぎて、今の段階で勝てるわけがないんだ。ただ今回の勝利条件は勝つことではなく、一撃を与えること。それだけなら十分可能性はあると私はみている。


 横に振われた剣に腹を裂かれ、ホログラムのように点滅する。やっぱり気持ちの良いものではないけど、痛みも実害もないのなら気にすることはないと言い聞かせる。

 一度距離を取った氷彗さん。やるならここだ!

 私は右腕に魔力を集中させて、5本指に流し込む。これを桜の花びらに形成させれば、魔法の完成だ。

 桃色に輝く桜の花びらを見ても、氷彗さんは眉ひとつ動かすことはなかった。


「……それがあなたの魔法ね」

「はい。これで氷彗さんに一撃を与えます!」


 強く宣言した私の言葉に対しては眉を顰める。魔法より言葉の方が嫌なんだ……。

 一応警戒してか、氷彗さんは動こうとはしない。その間に私はもう一度腕に魔力を込めた。

 ……膠着するなら時間を浪費するだけだ。撃とう!


「『桜花一閃』」


 5枚の花びらから一斉に桃色のビームが発射される。それが途中で合流して1本のビームになって、高威力の魔法になった。

 氷彗さんは前回、私の魔法を凍らせた。でも今回はそんな余裕がないのか、はたまた気まぐれかはわからないけど避けてみせた。


「直線的な攻撃ね。それで私に当たると思っているの?」

「思っていませんよ」

「…………」


 私は氷彗さんの問いに即答した。


「ならなぜ……」

「1発目では、ですけどね」

「えっ……」


 結論から言うと、氷彗さんの背中から桃色のビームが突き刺さり、お腹の側へと貫通していった。当然、氷彗さんのお腹はホログラムのように点滅する。

 氷彗さんは細めていた目を見開き、心底驚いた表情だ。


「な、なぜ……」

「後ろ、見てみてください」


 氷彗さんの後ろにあるのは桃色に輝く桜の花びら。そう、私の『桜花一閃』の発射装置だ。

 私は氷彗さんに向けて1発目の『桜花一閃』を撃った時、こっそりもう一度腕に魔力を貯めて花びらを二枚重ねにしていた。そして避けられること前提で撃ち、背後にビームに乗って移動した花びらからもう1発を撃ったってわけ。

 これが氷彗さんのいうまっすぐさと、夏美のいう、捻くれってやつを掛け合わせたやつだね。


「んん……やったぁ!」


 理屈はどうであれ、とりあえずこれで氷彗さんに一撃を与えられた! 魔法少女を辞めなくて済むんだ!


愛梨(あいり)ちゃん!」


 訓練室の端から声がして、駆け寄ってくる足音まで聞こえて来た。声と足音の主は風香(ふうか)さんだ。その目には涙が少し蓄えられている。


風香(ふうか)さん、私やりました! これで氷彗(ひすい)さんと姉妹です!」

「うんうん、よくやったわね、愛梨ちゃん」


 風香さんは私の頭を撫でてくれた。うっかり氷彗さんを差し置いてお姉さまと呼んでしまいそうだ。


「姉妹でいられる……? ……ッ! 桜坂愛梨! あなたは一体姉妹システムにどんな幻想を抱いているの! あなたは私との姉妹関係に憧れているんじゃない、姉妹システムそのものに憧れている! 私である必要なんてないじゃない!」


 氷彗さんは珍しく、感情を全面に出して叫んだ。


「確かに最初は姉妹システムそのものに憧れていました。でも今は違います。厳しいけどアドバイスをくれる、こっそり魔法少女の力の良い使い方を教えてくれる、猫が好きで、ちょっと抜けてるところもあって、ちゃんと褒めてくれる。そんな氷彗さんが好きで、そんな氷彗さんの妹でありたいんです」

「桜坂……愛梨……」

「ともかく! 一撃与えたのでこれで私は氷彗さんの妹です! もう氷彗さんにはとやかく言う資格はありません!」


 私は舌をベッと出して氷彗さんに向けた。すると風香さんが横でふふっと柔らかく笑う。


「……氷彗ちゃん、いい妹を持ったわね」


 その瞬間、物理的に聞こえたわけではないけれど、氷彗さんの心の氷がほんの少し溶けた、そんな音がした気がした。



 ◆



 夜。私、中谷風香は妹の幸を連れて食堂へやって来た。良いことがあった日にはいつもの山菜定食ではなく、自分へのご褒美として揚げ物の定食を頼む。良いことが免罪符になってくれる気がするのよね。

 うどん定食を持った幸を連れて、机に座ると、向かい側に二人が座ってきたのを感じた。

 顔を上げると、思わず瞳から涙がこぼれ落ちてきた。


「向かい側いいですか、風香さん!」

「……失礼します、中谷先輩」


 そこにいたのは中華セットを持った愛梨ちゃんと、ざる蕎麦をトレーに乗せた氷彗ちゃんだった。


「氷彗さんとご飯、嬉しいな〜♪」

「……あんまり騒ぐんじゃないわよ。……愛梨(あいり)


 2人の姿は、どこからどう見ても姉妹そのものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ