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姉妹契約で結ばれた魔法少女たちは特別な感情を抱いてしまうかもしれませんよ  作者: 三色ライト
1章 雪溶け編

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013 咲くは桜花

 学校から魔法少女センターの寮に帰ってくると、氷彗(ひすい)さんもすでに部屋に戻っていた。もうとっくに訓練しているものだと思っていたけど、そうでもなかったか。


「ただいま〜……なんて」


 なんて、の部分は超小声だ。それこそ氷彗さんには届かなかったと思う。


「……訓練室、行くわよ」

「あ、はい」


 期待していたけど「おかえり」は帰ってこなかった。まぁ……そりゃそうか。

 今日からは容赦のない氷彗さんが帰ってきた。しかし私もここ1週間、ずっとクラス6、つまり最高峰の魔法少女に訓練をしてもらっていた身。そう簡単にやられるわけでは……


「ふっ!」

「ぎゃふん!」


 うん、やっぱりダメだった。ギャグ漫画に比肩するレベルで瞬殺されるや。

『私の魔法』も、氷彗さんに放ったところで効果的な攻撃にはならない。避けられるし、凍らされるし、まさに煮るなり焼くなり状態だ。


 一方的な敗北を味わって、1日の生活サイクルを終えたらまた朝が来る。あんなに楽しみにしていた学校も、いざ始まるとなんか面倒に感じるのが人間の不思議というものだ。


「なんか浮かない顔じゃん。どしたの?」


 夏美(なつみ)は(わざとらしく)苦虫を噛み潰したような顔をしていた私を気にかけて、声をかけてくれた。


「んー。魔法少女の先輩に勝てないの」

「そりゃそうでしょ、先輩なんだし。ソフトボールでも先輩に勝つなんて一握りだよ」


 そっか、夏美はソフトボールをやっていたんだっけ。


「でも勝たないといけないんだ。たった一回、それだけでいいの」

「んー、魔法少女のことはさっぱりだからなぁ……でももしかしたらさ、愛梨(あいり)ってまっすぐすぎるんじゃない?」

「まっすぐすぎる……」

「愛梨そういうとこあるもん。目標にまっすぐ〜! ってのはいいとこだと思うけど、勝負の世界なら少しは捻くれないとさ」


 夏美はずっと勝負の世界にいたからこそできるアドバイスを私に投げかけてくれた。

 捻くれる、かぁ。その瞬間、私の頭に氷彗さんの言葉が思い浮かんだ。


『こういうまっすぐな魔法は嫌いじゃない』


 氷彗さんが言ってくれたこの言葉。私はすごい嬉しかった。初めて認められたような気がした。


「先輩はまっすぐな私の魔法が好きだって言ってくれたんだよねぇ」


 別に好きと言われたわけじゃないけど、ここは曲解して好きなように受け取った。


「何それ〜。愛梨、目覚めた? レズビアンの道」

「レズビアンの道!? 何それ!」

「冗談冗談」


 そう言って夏美はケラケラと笑った。

 レズビアンの道か……氷彗(ひすい)さんとあんなことやこんなことを……ってダメだ! 体温が急上昇する! 体に良くない気がする!


 ビービービー! ビービービー!


 夏美とそんな会話をしていると、不意にスマートフォンからアラームが鳴った。

 慌てて画面を確認すると、エネミーの襲撃予報が私のすぐ近くに表示されていた。

 また学校の近くにエネミーが来る……氷彗さんもいないのに、私だけで対処するの……?

 でも、今このエネミーの直近にいるのは私のはず。なら、行かないと!


「ごめん夏美、エネミー来たから行ってくるね!」

「本当? き、気をつけてよ!」


 私は心配してくれる夏美にうん、と頷いて教室を飛び出した。途中先生にすれ違ったけど事情を説明している余裕はない。きっと夏美が説明してくれるだろうと信じて走り続けた。

 マギア・ムーンから桜色の粒子が漏れ出て、私の身を包む。こうして袴姿になった私はトヨタ中央高校から飛び出して、最近高層マンションが建設され始めたエリアに足を踏み入れた。


 魔法少女センターからの情報によるとここら辺に出るみたいだけど……なんて上空を眺めていると、空にぽっかりと黒い穴が空いた。エネミーが来る合図だ。

 黒い穴から出てきたのは白い羽を靡かせる、蝶だ。蝶としては見惚れるほどに綺麗だけど、大型トラック並みのサイズだとキモいって感想が勝ってしまう。

 私はジャンプして高層マンションの屋上に立って、エネミーを睨んだ。エネミーも私の存在に気がついたようで、上空の穴付近で止まっている。

 なんとかこのまま睨み合う時間を稼ぎたい。そうすればきっと他の魔法少女が援軍に来てくれるはずだから。


 そんな願いを切り捨てるように、白い巨蝶は羽を羽ばたかせ、鱗粉のようなものを飛ばしてきた。直感的に吸い込んだり触れたりしたらダメだとわかったので、魔法で薙ぎ払う。


「いけっ、『私の魔法!』」


 まだ名前は決まっていないけど、氷彗さんに仕込まれたビームは鱗粉くらい簡単に吹き飛ばしてしまった。よし、攻撃の第一波は防いだ。次以降も守り抜けば……なんて考えていると、エネミーがだんだんと光り輝いていることに気がついた。

 何かする気だ!


「『私の魔法!』」


 今度はエネミー本体にビームを放つ。ただ桜色のビームは白い体に突き刺さることはなく、完全にブロックされてしまった。


「な、なんで……」


 ふと氷彗(ひすい)さんの言葉、そして夏美(なつみ)の言葉が頭によぎった。


『前にしか飛ばないし、威力も大したことないから実戦で使うことはまずないわね』

『勝負の世界なら少しは捻くれないとさ』


 威力が大したことない……そして捻くれないといけない。なら……力技だけど、捻くれ者かもしれないけど、無理矢理パワーを5倍にすればいいんだ。それこそ、桜の花びらみたいに。


 私は脳内で桜の花びら、それこそ5枚揃った綺麗な花びらを思い浮かべる。それを魔法として編み出すなら、名前はこうだ。


「『桜花一閃(おうかいっせん)』」


 私の手のひらから魔力で作られた桜の花びらが出現する。5枚集った花びら1枚1枚には魔力をふんだんに込めた。


「いくよ……『桜花一閃』、発射!」


 5枚同時に桜色のビームを発射! 当然だけど、威力は5倍! ビームは凄まじい高音を立てて、巨蝶を飲み込んだ。

 巨蝶は呻き声をあげることも無く力尽きて高層マンションの屋上でパッタリと息絶えた。

 私……ついにエネミーを倒したんだ!

 その実感が湧くのに3分は要したと思う。

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