100 氷×桜
「ひ……す……いさ……」
「ふっ、私が……この様なんてね」
氷彗さんは血液を凍らせ、棘状にしてヴリッドを攻撃した。
初めてと言っていいほどヴリッドに対しての有効打となった。血色の氷はヴリッドに突き刺さり、彼も自由に動ける身ではなくなっている。
「にがさ……ない」
ガクッと膝から崩れ落ちた氷彗さん。
もう死を覚悟したかのような顔をしているのに、どこか顔は……柔らかかった。
「どうして……どうして私なんかを守ったんですか!」
「さぁね。体が勝手に動いたのよ。でも……心の底から良かったと思ってる」
そう言って氷彗さんは震える手で私を抱きしめた。
「愛梨、絶対に生きてね。あなたのこと、死ぬほど愛しているわ」
ぎゅっと力がこもったその瞬間、胸が熱くなった。これは精神的な表現だけではなく、物理的な表現だ。
「これ……は……」
「マギア・ムーン?」
私と氷彗さんのマギア・ムーンが宙に浮き、そして2つは意思を持っているように私の手元へやってきた。
手をかざすと、カチッと音が鳴り、マギア・ムーンは半月と半月を重ねて満月となった。
次の瞬間、私の袴装束が光り輝き、新たな魔法少女衣装が生まれる感覚を覚えた。
再構築された魔力は、ずっと側にいた氷彗さんの力を感じる。
「なんだてめぇ……」
ヴリッドも思わず顔をしかめる。この力を私は知らない。でも、使い方はわかる気がする。
胸まではスパンコールの入ったパーティードレス。そして下半身は和織された折衷スカート。
私と、氷彗さんの力が合わさった衣装と呼ぶにはぴったりだった。
「愛梨……綺麗よ。その力ならきっと……」
そうして氷彗さんは目を閉じた。駆けつけたブラッディさんに氷彗さんを預け、私はヴリッドを睨んだ。
血の氷で作られた棘をすべて抜き切ったヴリッドは先ほどより少しキレているようだった。
「なんか強そうになったじゃねぇか。俺を楽しませてくれんゴッ!?」
「『氷結:魔装の拳』」
強めの右ストレートが入った。次は……
「『縦桜無尽』」
桜の束が連なり、剣や槍、斧など殺傷力の高そうな何かたちに変貌する。
氷彗さんの……戦闘スキルが流れ込んでくるようだった。もし氷彗さんが桜使いだったら、こうしていたのかもしれない。それを今、実現して、その上でヴリッドを倒さんとしている。
「てめぇ! なんでそんなに急に強くなった!」
「……氷彗さんが気づいてくれたから。1番強い愛ってものは『命をかけてでも守りたい』。そう思う心だってことに」
覚悟を決めた。
ヴリッドを……殺す!!




