第39話 見ていてくれていますか?
FANBOX(https://azitukenori.fanbox.cc/)やってます!
第五章毎日投稿もいよいよ終盤……『応援してやるぞ!』って思ってくれる方がいらっしゃいましたらフォローだけでもしていただければ一層励みになります!
職員サンに案内を頼み、ギルド内のある施設へとやってきた俺とハク。
ここの魔導器具を使えば……。
「……親父サンに言いたいこと、あれだけでよかったのか?」
「えへへ、はい……! また言いたいことができたなら……これからも何度だって言えますから! ……それじゃあいきますね? ――『ホワイトエコー』……!」
各所に設置された拡声器を通し、ハクの角から生まれた鈴の音のようなそれが街中に響き渡る。
――『ホワイトエコー』。
魔物の神経系に訴える音で自身にマーキングを向ける、ハクの新しい『ヘイト管理系』のスキルだ。
ワーフルに話を聞かせてもらった後もハクは少しずつ練習を重ね……もともとの素質もあってすぐにそいつを身に着けることが出来た。
姿の見えない音の出どころに混乱する魔物達。
その隙に俺とハクは窓から屋根へと向かい……。
「もう一度……! 『ホワイトエコー』……!」
……奴らは一度耳にしたその音を覚えているはず……!
それを目の前で再び披露してやれば……!
「――ギギャアアアア!!」「ゴアアァァアアッ!!!」
「来たな!!」
触発された辺り一帯の魔物達が次々と俺たちに……正確にはハクに向かって襲い掛かってくる。
いいね、計画通りだぜ……!!
「これはまさか……囮……!? イルヴィス君……っ! これが……このような戦い方が君の言うハクの強さだとでもいうのか……!!? だとしたら私は……!!」
「――う、ううん……そ、それは違う……!」
「え……?」
「にゃふふ、なるほど……! ハクちーの『ホワイトエコー』は魔物のマーキングを自分に向けるスキル……! そしてそのマーキングは……」
「そうか『魔素』……! ならばイルヴィスとハクの目的は……!」
「――いくぞハク!」
「はい!」
マーキングの魔素を利用した『先祖返り』……!!
一体一体の量は大したもんじゃあないが、これだけの魔物が集まれば……!!
「い、今の内だみんな……! お、おっちゃんとハクが魔物を引きつけてる間に……!!」
「ボク達はもっかいジャラジャンドラのとこへ行けばいいんだね! よーし、がんばっちゃうよー!!」
……………………
…………
……
「ギャオオオオン!!」
「キシャアアアアア!!!」
「はぁ……はぁ……! ……っ、もう少しで……!!」
胸に抱えたハクの息が徐々に上がっていく。
無理もねぇ、これだけ大量の魔物を引き連れてるっつうことはその負担も相当なはずだ……!
一通り街を一周し、すでにハクは狙いどおり『先祖返り』を起こせている。
だがまだ……!
「――イルヴィス!!」
「……! 屋根の上……ガングリッドか!? それにシーレも……今トリア達が中央広場に向かってる!! 二人もそっちに向かってくれ!!」
「何か算段があるのじゃな……! わかった、すぐに向かうとしよう!!」
魔物どもを上手く誘導し、その隙に二人にも中央広場へと向かってもらう。
人手は少しでも多いに越したことは無ぇ……ここで合流できたのは嬉しい誤算だったな……!
あとは――。
「もう少し、もうあと……――きた……!! おじさま!!」
「……! あぁ、たのむぜ!!」
俺の手を離れ、自らの翼で空へと羽ばたいていくハク。
そして――。
「――『ドラグエール』……!!」
『マディメア』と戦ったあの時のように、ハクのボウガンが竜の鱗に包まれる。
……いや、ボウガンだけじゃない。
「『ドラグハウル』……『ドラグプリマ』……『ドラグハート』……『ドラグフレイル』……!」
ケープマント、レガースアーマー、胸当て、矢筒……。
高速で魔物を振り切るハクの装備品が、次々とその形を変えていく。
「おとうさま……! ハクは、ハクは冒険者なんです……! はじめは成り行きだったかもしれません……でも今は……! だから――!!」
「――クレディブルオーナメント……『オールコーデ』!!」
全身に竜の力を身にまとい、さながら純白の竜人へと姿を変えるハク。
亜人の血と冒険者の戦い方……『魔素抵抗』や『恩恵』も含め、それらすべてを自分の力にするためずっとがんばってきたハクだからこその……!
「おじさま! 行ってください!!」
「あぁ! 向こうで待ってるからな!」
ハクが『ホワイトエコー』を鳴らしつつ、高速で空を駆けぬけながら魔物を引き連れていく。
俺はといえば手筈通り、急いでジャラジャンドラの元へと向かい……。
トリアやガングリッド達はすでに広場付近の魔物たちとやり合ってるみたいだな……!!
フェロモンの効果が濃いせいなのか、ハクの『ホワイトエコー』に釣られずに女王サマを守ってる奴らがいるようだが……!!
「クヨウ!! いけるか!?」
「……! あぁ、まかせておけ!!」
俺の意図を瞬時に理解し、『玄涜』を腕から外すクヨウ。
俺はそいつを受け取ると、再びクヨウの首元へとあてがってやる。
「来たねオジサン……! トリニャー、道はウチらが!! ――『ボルティオン……ノヴァ!!』」
「まっかせてー!! ――『キラメテオ……バンキッシュ!!』」
「わしらもゆくぞガングリッド! 『ノーノードイレイド』!!」
「まかせておけ……!! ……ヌオオオオオ!!!! 『ヴォルカノダンツァ』ァァッ!!!」
繰り出された攻撃によって周囲の魔物が蹴散らされ、一時的に生まれる花道。
俺とクヨウはすぐさまそれを利用し、ジャラジャンドラへと対峙する。
お次は……!
「――顕現ッ!! 『黒曜天煌華』!!」
姿を変える鬼神装と、黒く染まる雪凪。
同時にたちこめる雪と霧によって、クヨウの感覚器と化した領域がジャラジャンドラを包み込んでいく。
「――シャアアアアア……!!」
「蟲后ジャラジャンドラ……! こうなることもあろうかと、貴様の挙動は常に観察させてもらっていた……!!」
『フェロモンの能力』と『卵の殻』に魔素を全振りしているせいか、ヤツ本体のスペックは『魔王級』と同程度だった……!
つまり殿サマを……『勇者級』をも捻じ伏せたクヨウの一撃なら……!!
「括目せよ我が真髄の太刀!! ――『雪花双輪纏艶終』!!」
クヨウの放った神速の一撃が、ジャラジャンドラを真っ二つに両断する。
これで……!!
「……っ、はぁ、はぁ……!! ……イルヴィス!! これでよいのだな!!」
「あぁ、完璧だ! ガングリッド! クヨウを建物の中へ頼む!! 俺は……!!」
「――おじさま!!」
来たか! ベストなタイミングだぜ……!!
ハクの引き連れてきた魔物が、卵から発生したフェロモンによって一瞬その動きを止める。その隙に俺とハクは卵の傍へと陣取り……そして再び、ジャラジャンドラへ身を捧げようと動き出す大量の魔物達。
――ようやくだ、ようやくここまではこぎつけた。
あとは……。
「……ねぇおじさま覚えていますか? ハクが正式に冒険者になって、初めて装備品をそろえに行った時のこと……」
「ん? あぁ、もちろん覚えてるさ……その髪飾りのこともな」
「えへへ……! 本当はこれ、綺麗だから欲しかったんじゃないんです。あ、綺麗だからってのは間違ってないんですけどそれだけじゃなくて……」
パチンと髪飾りを外し、それを大切そうに見つめるハク。
「おじさまがガングリッドさん達と飲んでたあの青くてきれいなお酒……一目見て、あのお酒にちょっと似てるなって思ったんです。ハクはまだ子供だし、ガングリッドさんたちほど一緒にいたわけじゃないけど……」
「……なるほど、なんだよ言ってくれりゃあ良かったのによ?」
「えへへ、だってそういうの子供っぽいかなって! ……あの時ハク、とっても嬉しかったんです。なんだかおじさまと気持ちが通じ合ったみたいで……だから――」
ハクの髪飾りが、他の装備品と同じように竜の力を纏っていく。
そして……。
「クレディブルオーナメント……『ドラグフィリア』――!」
掌から浮き上がった髪飾りは自身を起点に大きな指輪のような形となり、俺たち二人を囲むようにしてゆっくりと回り始めた。
「おじさま……ハクはおじさまと一緒なら、きっとなんだってできます……! ううん、きっとじゃなくて絶対に……!!」
「そうかい? それなら……そいつを親父サンたちにも見せてやらねぇとな!!」
「はい!!」
『ドラグフィリア』から光の膜が広がっていき、オーロラのように大きなベールとなって周囲をつつみこんでいく。
さらに俺の『傾向限界突破』と、ハクの『魔素感知能力』が共鳴していき――。
――まるで時間が遅くなったような感覚と、やがて見えてくるその兆し
辺り一帯を埋め尽くす魔物達の、どこに、どの角度で、どれぐらいの強さの攻撃をどう打ち込めばいいのか……その全てが手に取るようにわかる。
俺はただそれに従ってナイフを振ればいい。
おそらくハクも同じように……。
そうやって二人を中心に、斬撃と弓撃の嵐が巻き起こる。
そして……。
――キュドガガガガガガガガガガガガ!!!!!
「おおおおおおおおお!!」
「やああああああああ!!」
あとは我慢比べだ……!!
俺たちの力が尽きるのが先か、それとも……卵に残されたジャラジャンドラの魔素が浄化で尽きるのが先かのな!!
「すご……! あんなに沢山の魔物をいっぺんに……!」
「しかも無駄な力を使わずに最効率で……にゃふふ、これはウチらも――」
「――ガガンと負けてられねぇなぁ!! 『ブレイクインパクト』ォッ!!」
「……!? おぬしら……!!」
「よぉ勝ち馬に乗りに来てやったぜぇ!! ……おいお前ら死ぬ気で戦えよ! 魔物どもを卵に近づけるんじゃねぇぞ!!」
「「おおーっ!!!」」
「あのような子供が必死で頑張っておるのだ……我らも一体でも多く、その負担を減らすのである!!」
あいつら……『称号持ち』のガンガーとキルバか!!
それに他の冒険者達も……!!
「ええーい! 私もスキルで援護して……ってわー!? 直接こっちくんなデシー!! 私は食べてもおいしくなんか――」
「「――デシレさま!!」」
デシレに迫った魔物の前に、ずしんと現れる二人の人影。
そのまま魔物を殴り飛ばしたのは……!
「ヤンスゥ!! ゴンスモン!! うわーん、お前たちやっぱり無事だったんデシねぇー!」
「グフフ、当然でゴンス!」
「デシレさまもきっとここに居ると思ったでヤンスよう!」
デシレ、ヤンスゥとゴンスモンも……!
いや、それだけじゃねぇ……!!
「おじさま、これは……」
「あぁ……!!」
まるでハクに触発されたように、次々と集まってくる冒険者達。
フェロモンと『ホワイトエコー』にあてられたうえ、突然大量に現れた人の気配に魔物達は明らかに混乱してる様子だ……!!
これなら……!!
「――おとうさま、見ていてくれていますか? ハクはおじさま達と出会って、いろいろな『強さの形』があることを知りました……! それは今も……」
……あぁ、きっと見ているさ。
腕っぷしだけじゃあない、本当の意味でのハクの強さを……!
だから――!
「だから……これがハクたちの――!!」
「――『ドラゴンクレイドル』ッ!!!」
光のベールの中、ことごとく討伐されていく魔物達。
その中心で決してたどり着くことの無い養分を待ちながら、卵は急速にその光を失い始め――。
「……――今ですおじさま!! これでぇっ!!」
「最後オォォッ!!」
キュドドドドドドドドドッ!!
――ビシ……!! ピシ、ビキ……バギイイィィィン!!!!
……………………
…………
……
なんとか……なんとか今日中に投稿できた……!




