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第38話 言いたいことを全部

 FANBOX(https://azitukenori.fanbox.cc/)やってます!

 第五章毎日投稿もいよいよ終盤……『応援してやるぞ!』って思ってくれる方がいらっしゃいましたらフォローだけでもしていただければ一層励みになります!

 いつもフーとそうするように、冒険者ギルドには必ず個人対応用の別室みたいなモンがある。

 俺たちはそこへやってきて……。


「……まずはハク、お前も気付いたとおりオルハリコンを取引してくれたこの商人サンは……」


「おとうさま……ハクのおとうさまなんですよね?」


「……うむ、その通りだ」


 サーベイジュが変装魔法を解きながら返事をする。


 ……考えてみりゃ、ハクは一度も変装したサーベイジュに会ったことは無かったな。もしあの時にもハクがいたなら、やっぱりその場で気付いたのかもしれん。


「でもどうしてこんな……」


「そいつもこれから話すさ。……あの日俺がトリア達と別れた後、正体を明かした親父サンは相場でのオルハリコンの取引にあたって、ある条件(・・・・)を俺に提示してきたんだよ」


「ある……条件?」



「ああ……――ハク、お前に冒険者をやめるよう、俺から説得をすることだ」


「――〰〰っ!!?」



 目を見開いて動揺するハク。

 ……無理もない、今のハクにとっちゃ新しく見つけた拠り所を潰されるようなもんだからな。


「え!? だ、だっておっちゃんオルハリコンの取引は完了したって……!! じゃあ……!」


「そん、な……おじさま、ハクは……ハク、は……――」








「――だがなハク、俺はそいつを突っぱねた(・・・・・)のさ……!」


「――……え?」


 暗く影を落としつつあったハクの瞳に、ほんのわずかに光が戻ってくる。


「俺がお前に冒険者をやめろなんて嘘でも言うはずねぇだろ? ずっと頑張ってきたのを見てきた。傷ついて、立ち上がる姿もだ。……言えねぇさ、口が裂けてもよ」


「おじさま……!! ……っ、よかった……ハクは……!」


「悪かったな、一瞬でも不安にさせちまって……」


 瞳に涙をためたハクをそっと撫でてやる。


「けどなハク? 親父サンは何も意地悪でそんな条件を出したワケじゃあ無い。今は全部を説明してやれる時間はねぇがそいつは本当だ。……あの日俺たちは――」



=========================

「――君さえ首を縦に振ってくれれば、オルハリコンの件は必ず私が何とかしよう……! 約束する……! いや、君が望むのならばそれとは別に、私が直接『写本』を落札して譲ってもいい……! ハクのためにもどうか……!」


「お願いします、イルヴィスさん……!!」


「どうかハクを……! 私たちの妹を……!!」


 三者三様に、だがその誰もがハクのためにと……家族として頭を下げている。

 その言葉と光景に俺は……。


「……悪いな、やっぱりそいつは飲めねぇ相談だ。やり方の是非はどうあれ、アンタ達がハクのことを考えてるってのは理解したが……同じように俺も、ハクのことを大切に思っている」


「……!? た、大切だと言うのならば尚更……!」


「尚更なんだよ? 傷つかないよう苦しまないよう、大事に大事に箱にでも入れてしまっとけってか? ……そいつは俺の思う『大切』ってのとは大分違うな」


 ――なぁ知ってるか?

 ハクは一度だってアンタたちのことを悪くいったことなんざ無いんだぜ?


 やっとわかったよ、ハクはずっとどこかで感じとって(・・・・・)たんだろう。

 ……家族が自分に向ける感情の、その更に奥底にある物を。

 だからこそ……!


「……ハクに冒険者をやめさせろだと? そいつを決めるのはアンタたちでも、ましてや俺でもねぇ……他の誰でもない、ハク自身のはずだろうが!」


「しかしイルヴィス君、ハクはまだ11で……!」


「そうさ、まだ11……まだ11で、それでも自分の道を見据えて頑張ってるんじゃねぇか……! それをなんでわかってやれねぇんだよ!!」


「――っ!」

 

 そうだ、ハクがハクとして生きていく以上、ただ危ねぇモンから遠ざけるだけじゃ意味がねぇんだ……!

 それなら……!



「……親父サン、このまま『はいご破算』っつってもアンタも納得はしねぇだろ? だから……こういう(・・・・)のはどうだい?


「――……投資? オルハリコンを担保(・・)に……?」


「あぁそうだ。その金で俺たちは予定通り、まずは『写本』を手に入れる」


 あの量のオルハリコンを引き取ってもらうなら、知らねぇヤツよりよっぽど信用もできるしな。


「そうやって『ミストルノ手記帖原本』を含む『不落の難題』を追っていけば……俺たちはまたいずれ『七大魔王』と戦うことになるだろうよ。……もちろんハクも一緒にだ」


「な……!? 待ってくださいイルヴィスさん、それでは……!」


「親父サンも言ってたろ、『狙われた時に自らの身を守れるように』ってよ。自惚れに聞こえるかもしれねぇが、俺たちと一緒ならハクはもっと強くなる……おあつらえ向きだと思わねぇか?」


「だ、だが……」


「わかってるさ、すぐには首を縦にふれねぇこともな。……だがよ、話しぶりからしてアンタ達はハクのやってきたことを、自分自身(・・・・)で見聞きしたことはねぇんじゃねぇのか?」


「……! それは……」


 どうやら図星のようだ。

 さっきもじいやサンに『近況を報告させてる』っつってたし……グレーナのハリセン(・・・・)もそうだな。


 ミヤビじゃたいして特別でもないそれがあんな豪華なモンになっちまったのも……ハクの様子見ついでに聞きかじった情報で再現した結果ってとこだろう。

 つまり……。


「俺たちへの投資が正しいものなのかどうか……そいつを見極めるためにもアンタ達はその目で、その耳で、直接(・・)ハクを見据える必要がある……! ……今までとは違って、だ」


 そうだ、この投資はきっかけに過ぎない。

 本当に必要なのは――。


「そして家族と言うならきっちり知るべきだ……! 今のハクの強さと、そして……ハクの想いを――!!」

=========================



「――おじさま……そんなことが……」


「じゃああのお金はそれで……」


「あぁ、最初はそれでも渋られたんだが……その後も少しあってな。んで結局……」


「ハクやお仲間たちにも黙っていること条件に、私も投資の提案を受け入れた……というわけだ」


 ありのままの姿を見なければ納得できないっつってたからなぁ。

 やましいことは無かったとはいえ……黙ってることに罪悪感が無いと言えば嘘にはなったねホント。



「……ハク、今さら私にこんなことを言う資格が無いことは分かっている。だがそれでも私はハクのことを愛している……! もちろんグレーナとアッシュもだ……!」


「おにいさまと、おねえさまも……」


「今までのことを許してくれとは言わない……! この際だ、冒険者をやめろとも……だが! だがしかし……! 冒険者として生きるのであれば、もっと普通の道もあるはずだ……!」


 ……直接目の当たりにしたことで親父サンも分かってるんだろう。

 この後ハクが……いや、俺たちが何と(・・)戦うのか。


「『七大魔王』は普通の魔物(モンスター)とは違うのだろう……!? もし『蘇生』も『復活』も出来ないような力を持っているものがいたら……いいや、ジャラジャンドラがそうではないなどと誰が分かる……!? そうなったら私は……!!」


 サーベイジュがハクに向かって手を伸ばす。

 ハクもそれに答えるように、そっとその上に手を乗せる。


「『七大魔王』と戦わずとも……『不落の難題』を追わずとも……! 『勇者』の称号を得ずとも立派に冒険者として身を立てている者はごまんといる……! そうだろう……!?」


「おとうさま……」


「ハクも……ハクもそれでいいじゃあないか……! なにも必要以上の危険に身を晒すことどない……! それもこんな歳で……こんな……!」


 ハクの小さな手を握りながら、ぶるぶると肩を震わせるサーベイジュ。


 ……ハクへの仕打ちが酷なものだとわかっていて、それでもサーベイジュ達は今までそう(・・)してきた。

 それもきっと、一つの愛の形ではあるんだろう。


「ね、ねぇおじさま……ハクはどうしたら……」


「……悪いがハク、そいつは俺からは応えてやれねぇよ。それを決めるのは他でもない……お前自身でなけりゃならねぇからだ」


「で、でも……ハクは……」


「……けどま、少なくとも今この瞬間にやることは決まってると思うぜ?」


「え……?」



「……ぶつけてやれば(・・・・・・・)いいのさ。ヴァシネとの戦闘の後、ハクが俺にそうしてくれたように……今お前が思っていることや言いたいことを全部……な?」


「……! 言いたいことを、全部……――」



 一度小さく目を伏せ、それから決意を決めた目でサーベイジュを見つめるハク。


「……ねぇおとうさま? 今ね、ハクちょっとほっとしてるの。みんなに嫌われてたわけじゃなかったんだなって……でもね、それでもやっぱり寂しかったんです。だから――」




「――えへへ、だからそんなおとうさまの言うことなんて聞いてあげませんから!」




 ハクは柔らかく微笑み(・・・)ながらその一言を口にする。

 ……強い子だよ本当に。


「ハク……私は――」



 ――ゴガアァァァアンッ!!!!



「!? 今の音は……町の外れの方からか!?」


「にゃ……! ひょっとしたらランクA以上の魔物(モンスター)が出現し始めて……!!」


 恐れていたことが起きちまったってことか……!

 本来ならきっちりと作戦を煮詰めたいところだが――。


「ハク、さっきのあれ(・・)で行くぞ! ネルネ、トリア達に詳しい説明をたのむ!!」


「わ、わかった……! あ、まってくれおっちゃん……! ふぅ……大丈夫、ず、ずっと練習してきたんだ……!」


 ネルネが髪の分け目を左右入れ替える。

 すると……。


「――す、『スイッチ』……! 『ムーバルスライム』……!」


 ネルネの袖から素早さを上げる『ムーバルスライム』が飛び出してきた。

 これは……!


「あれ!? ブレイブスライムの反動でしばらく他のスライムは使えないんじゃ……!?」


「ぶ、物理的な動作で感覚を切りかえるイメージを練習してたんだ……じ、実は上手くいったの初めてなんだけど……ど、どうかなおっちゃん……?」


「あぁメチャクチャ助かるぜ! これで相当……!」




「――は、ハク!! イルヴィス君!!」


「……っと、なぁ言ったろう親父サン? ハクの強さをその目でちゃんと見てやってくれってよ」


「おとうさま、ハクね、帰ってきたらたくさん……たくさんお話したいことがあるんです……! だから……行ってきます――!」

ネルネの片目を隠したキャラデザ、やっと回収できた……!

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