第35話 本当にそれでいいんだな?
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「ガルルルルル……!!」
「キキャーーー!!」
「ギチチチチチ……!!!」
あちこちをうろつく奴らに見つからないよう、そっと窓から様子をうかがう。
嫌でも目に入る大量の魔物達と……。
「――シャアアアァァァ……!!」
……再び中央広場に腰を据える、巨大な蟲の女王。
あれから……魔物の大群が押し寄せてからものの数十分。
ジャラジャンドラの復活を皮切りに、吸収されずに残った魔物達は一斉に街へと解き放たれた。
……状況はまぁ最悪だ。
街を横断する大通りは魔物に溢れ、空から見下ろしてる奴らまでいる以上やみくもに動くことも出来ん。
かといってこのままずっと籠城していたところで、ジャラジャンドラがいる限り魔物がダンジョンに帰っていくことは無い、か……。
「ろ、ロンディベル付近にあるダンジョンは確か、な、七つだったっけ……?」
「あぁ、少し範囲を広げればさらにもっと……運の悪い事に東西南北の全方向に点在してるおかげで、まともな逃げ場も無いってワケだ」
さらに追い打ちなのが……恐らく奴らはこれからも増えていく。
もしダンジョンの浅層から順番に出向いてきているとなれば、時間がたつほどに強力な魔物が大挙してくることになるが……。
ジャラジャンドラを倒さなければ魔物は地上を徘徊し続け、かといってヤツを倒したところで何らかの対策をとらねぇと、その魔物によってジャラジャンドラは復活しちまうときている。さて……。
「い、イルヴィスさん、俺たちがここに居ても仕方がありません……! それなら少しでも救援の負担を減らすよう、俺たちだけでも避難すべきなんじゃ……!?」
「そ、そうよね、残ってる人を見捨てる形になっちゃうのは心苦しいけど……自力で避難できるならそうしないと逆に迷惑よね……!」
「イルヴィスさんはお強いんでしょ……!? だったらその……そう! ここに居る全員で協力すれば……!!」
コイツらはホントに……。
さて、コイツらに言っちまって良いもんか……いや、まぁしかたがねぇか。
「確かに俺は魔王級に対抗できる力を持っちゃあいるが……ソイツを使えるのは現状一時的なもんなんだよ」
「一時的……?」
「フルで使えば五分……それも一度使えばしばらくはインターバルが必要になる。魔物をかいくぐって街の外へ行くにはちょいと足りねぇだろうな」
実際はいつものようにステータスを調整すれば、ただ外へ逃げることぐらいはできるかもしれん。
……が、まぁゲートのことも含めてその辺りことはいろいろと伏せておく。
人の目があるこの状況じゃ、ゲートや召喚術も大っぴらには使えんしな。
「え……なにそれ聞いてない……!! はぁ……もう終わりだよこんなの……!!」
「しょ、しょうがないさ……。こうなったら運よく蘇生されるか、最悪教会で復活するのを待つしかないって……な?」
「……ディーンが言ったんだぞ、こうすれば必ずイルヴィスさんの力を借りて……『七大魔王』討伐の実績ができるからって……!」
「な……!? お前たちだって賛同したろうが!」
限界状態のせいなのか元々さほど仲が良いワケじゃねぇのか、言い争いを始める同盟の三人。
おいおい、何もこんな状況で……。
「み、みなさん落ち着いて……落ち着いてください……!」
「そ、そうだぞ……! い、今はそんなことで言い争ってる場合じゃ……!」
「はぁ!? 年下のくせになにを偉そうに……!」
「偉そうもなにも二人の言う通りだろうが。……職員サンや俺たちの忠告を無視してまで他人を出し抜こうとしたんだ、お前らも冒険者なら覚悟を決めろ……!」
「覚悟って……責任とって死ぬまで戦えってことかよ……!?」
「いいや逆だ、誰一人死なねぇように必死に頑張るんだよ。俺は足掻いて足掻いて……最後まで必死に足掻き続けるぞ」
「おっちゃん……う、うん……! わ、わたしもだ……!」
「もちろんハクもです!」
……そうだ、事実ゼクセーはジャラジャンドラを誰かにあてがおうとしていた。
となれば『使役』のため、ハレのように一度討伐する必要があるはずだ。
その方法を見つけ出せればあるいは――!
『――イルヴィス……! イルヴィス聞こえておるな……!?』
「……! シーレ!?」
こいつは……『チャネリングチャット』か!
エータ達の暴走時にも役に立った、遠方に声を届けることができる魔法で……!
『すまぬ、連絡が遅くなった……! そちらは無事か……?』
「あぁ、幸い致命的な怪我もしちゃいない。ハクとネルネも……っと、こっちの声は届かねぇんだったか……」
『いいや聞こえておる、ワシもワシで精進しておるからのう? と言ってもこの『チャネリングボイス』はそう長くもたぬのじゃが……トリア達の無事は確認した、クヨウとエテリナも一緒じゃ』
「そうか……! ネルネ、ハク……トリア達も無事だとよ」
「よ、よかった……!」
「はい、本当に……」
「そんで……お前たちの方は? まだギルドに居るのか?」
『いや、ワシらもすでに避難誘導にあたっていたのでの。ひとまず建物の中へ退避させていたおかげで、惨事には違いないがこちらも致命的な被害は恐らく出ておらん。……魔物の大群が人を狙わず、まっすぐ中法広場へ向かったのも幸いした』
「確かに……こっちもそのおかげで命を拾ったようなもんだ」
『うむ、しかし逃げ遅れたり巻き込まれるような形で負傷した者も多い。そのうえで全員の避難をとなれば……』
「現状では難しい、か……」
そうでなくても街には魔物達が溢れかえっているからな……。
『すでにギルドからは他の街への救援要請もでておる。じゃが……』
「あぁ、街がこのありさまじゃあ体制が整うのにも時間がかかるだろうな」
どうする、夢幻の箱庭を使うか……?
大勢の命がかかっているこの状況じゃ、隠しておくだのなんだのと言ってる場合でも……。
……いいや逆だ逆、むしろそっち側の考え方に捕らわれるな。
そもそもリバントンミュージアムでも感じたが、そういう使い方には向いてないんだコイツは。
ゲートが一人ずつしか通れない以上、仮に一分に一人を救出できたとしても一万人を避難させるのには一週間かかる。
そいつはもう非現実的どころの話じゃあ無い。
むしろ下手に『助かる手段』という部分だけが悪目立ちすれば、余計に混乱を招くことになる。
やはりこの状況を打破するには……。
「――ジャラジャンドラの完全な討伐、それしかねぇか……! シーレ、ひとまずトリア達と合流したい。向こうにもギルドで落ち合うよう伝えてくれるか?」
『じゃが……いや、そうじゃな。分かった、伝えよう』
「頼む。その後はシーレもそっちの状況を優先してくれ」
向こうにも魔物はうろついてるはずだ。
それならシーレにもマナは温存してもらわねぇと……。
……
…………
……………………
「パーティと合流する!? こんな魔物だらけの状況でどうやって……!」
「そうだな……まずは玄関とは別の出入り口を探す。裏口か……あるいは魔物に見つからずに外に出れるようなら窓でもなんでも良い」
どうやら奴らはフェロモンにあてられて軽い興奮状態にあるらしく、頭の方はさほど回っちゃいないらしい。
建物の中に居ればやり過ごせているのもそのためだ。
だったらその隙を上手くついていけば……。
「幸いギルドはここからそう遠いワケじゃあねぇからな、裏道や建物の影を利用して奴らの死角を進むつもりだ。できれば地下水路も使えると良いんだが……」
「ち、地下水路はどうしても動ける範囲が決まっちゃうからな……。も、もしもの時には逃げ場がなくなっちゃうかも……」
「じゃあ水路を使うのは最小限にしたほうがいいですね?」
向こうにはエテリナもいる。
恐らく俺達と同じ考えでギルドまでたどり着いてくれるだろう。
あとは……。
「あとはお前らがついて来るかどうかだが……どうするよディーン?」
「ど、どうするって……」
「話を蒸し返すようで悪いがな、こんな状況を招いたのは少なからず、お前らが軽率な行動をとったことにも原因がある。だから――」
「――ち、違う! 俺たちのせいじゃない!!」
「……!」
「だって……だって、ジャラジャンドラを倒したのはイルヴィスさんじゃないですか……! そのせいでこんな目にあって……俺たちは完全な被害者ですよ!」
どこか虚ろな目でそう答えるディーン。
「そんな……!! おじさまは……!」
「そ、そうだぞ……! お、おっちゃんがあの時ジャラジャンドラを倒す判断をしてなかったら……!」
「そりゃあ犠牲も出たかもしれないけど……こんな状況にはならなかったかもしれないじゃないか!」
「そ、そうよ……! 私達だってこんな風に……」
「――……そうか、お前らは本当にそれでいいんだな?」
「……っ、な、なんですかその言い方、まるで俺達を責めるみたいな……! 責任転嫁はやめてくださいよ!! こうなったのも全部イルヴィスさんのせいでしょう!? 俺たちは……!」
「巻き込まれただけだ、ってか? ……わかったよそれでいい、確かに俺の判断でこうなっちまってるのは間違いじゃあねぇしな。……ネルネ、ハク、行こう」
「おじさま……」
「う、うん、わかった……」
ぬおお……ストックも尽きてそろそろマジでキツくなってきてるぞ……!
残り6話……!




