第34話 これとまったく同じものを
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「ま、魔王級レベルの相手を程度って……」
「いやいやいや……いくらなんでも考えすぎでしょ……?」
考えすぎ……か。
確かにジャラジャンドラの体、はすでに浄化によって魔素に還っていってる。
普通の魔物なら間違いなく討伐の証ってことにはなるが……。
本当にそうなのか……?
それとも――。
「……ねぇなにこれ? なんか……ちょっとだけいい匂いしない?」
「匂い? ……あホントだ、なんていうんだろ……甘い、香り?」
甘い香り……?
スライムの中にいるせいか俺は感じねぇが……。
「――おじさまぁっ!!!」
「……!! ハク!? どうした!?」
避難誘導にあたっていたハク達が、慌てた様子で駆け寄ってくる。
「それが……だってそんな……! こんな、こんなにも……!!」
「にゃ……!? ハクちー落ち着いて……!!」
「え、エテリナさん……!! まだ、まだ終わってません……!! まだ――!」
「――おい、なんだよあれ!!?」
ハクがなにかを言いかけたところで、同盟の一人が何かに気付いて声を荒げた。
俺たちもそいつが指をさす方へ視線を向けると……。
「〰〰っ!!? そ、そんな……!?」
「嘘だろ……!!? 」
「――なんなんだよあの大量の魔物は!!!?」
空と街を覆い尽くさんばかりの勢いでこちらに向かってくる『魔物の大群』……!
その数は数千か、数万か……下手をすればそれ以上の……!!
「――だ、ダンジョンアウト!!? こんな時に……それもこんなに大量に!!? どんどん増えていって……」
「あちらだけではない、四方から……!! いや……街中を囲まれてしまっているのである……!!」
日の落ちた空と街をさらに黒く染めるように、大量の魔物の影が這い回る。
そして……その全てがまるで足並みでもそろえるようにここを目指してやってきている……!!
「ねぇ、逃げないと!! あ、あんな数の魔物に襲われたらひとたまりも……!」
「つってもどこへだよ!? どっちに向かったって逃げ場なんか……」
どうする……!?
せめてもう少しでもバラけてくれりゃあ突破口も……!
……まてよ? さっき誰かが感じていた甘い香り、そして……『色欲』の化身であるジャラジャンドラ……!
こいつはひょっとして……!
「――フェロモンか!!」
浄化によって少しずつ魔素に還っていくジャラジャンドラに目を向ける。
討伐したはずのその巨体が……正確に言えば虫で言う腹の一部だけがそのまま綺麗に、まるで最初に出現した『卵』のような形で残ってやがる……!
これがあの魔物を呼び寄せているんだとしたら……!!
「ネルネすまん!! もう一発いけるか!!? 」
「……! わ、わかった……!! ふぅ……す、『スライミングセル』……り、臨界増殖……っ!!」
「――『ギガンティックマテリア』ッ!!!」
再び巨大化させたブレイブスライムの右腕で、ジャラジャンドラの残したその卵に渾身の一撃を叩き込む……!
だが……!
――ガギイィィィン!!
「……っ!!? そ、そんな……!?」
「傷一つついてないだと……っ!?」
いくら消耗してるとはいえ、それでも魔王級なら一撃で討伐までもっていける威力だぞ……!!?
それがこんな……!
「はぁ……!! はぁ……!! ……っ、ご、ごめんおっちゃん……も、もう……」
「……!! 大丈夫だ、よくやってくれたなネルネ……!」
こくりと小さく頷くネルネ。
それからすぐにブレイブスライムが消滅していき、残った鎧の欠片もネルネのマジックアイテムに収納されていく。
無理もない、ゼクセーと俺の傷を治し、ブレイブスライムに加えて負担のデカいギガンティックマテリアを二回……。
相当に消耗させちまったはずだ。
「な……!? イルヴィスさんこんな状況でなんでそれをひっこめるんですか!?」
「『ブレイブスライム』は長時間使えねぇんだよ! ……だから俺は一度攻撃をやめろっつったろうが……!!」
「そんな……! ね、ネルネさん! こういう時こそ自分の限界を乗り越える時です!! 諦めずにもう一度……!」
クソ、勝手なことを言いやがって……!!
……落ち着け、コイツの相手をしていたところで魔物が待ってくれるわけじゃあ無ぇ……!!
そもそもこの卵が魔物を呼び寄せている狙いはなんだ……!?
見たところ、街や住民たちを積極的に襲っている様子は無い……一目散にこっちへ向かってきてやがる……!
ジャラジャンドラを倒した俺達への報復……!?
いや、わざわざ仇討ちをさせるぐらいなら最初っから自分を護らせておいた方が良いはずだ、だとしたら……!!
「――全員できるだけここから離れろ!! 魔物には攻撃しなくていい……そのまま近くの建物か、入れなくても死角になるような場所に身を隠せ!!」
「そ、そんな方法であの大群をやり過ごせるわけが……!!」
「このままここに居ても同じだろうが!! いいから言う通りにしろ!!」
魔物の大軍はもうすぐそこまで迫っている。
周りの冒険者に檄を飛ばし、俺自身もネルネを抱え……ついでに震えて動けなくなっちまったような奴を引っ張りながら、すんでのところで建物へと身を隠す。
そして……。
――ドドドドドドドドドドドッ!!!
「ギシャアアア!!!」「ゴガアァァァア!!!」「ギャアァ!! ギャアァ!!」
「ひ、ひぃぃいい……っ!!」
興奮した様子で街を駆け抜けていく、大量の魔物達。
……どうやら思った通り、脇目もふらずに卵へと向かってるみてぇだな。
卵のフェロモンに夢中で建物の中まで意識が向いてないってとこだろう。
今の内に……。
「ほらネルネ、マナポーションだ。飲めるか?」
「ん……こく、こく……! ぷは、ふぅ……あ、ありがとおっちゃん……ちょ、ちょっとだけ落ち着いた……」
マナ欠乏も程度によっちゃ、そのまま気を失っちまうこともあるからな。
とりあえずこれでその心配はねぇが……。
「ここに居るのは俺とネルネ、ディーンの他に同盟のお友達が二人、それと……」
「おじさま……!」
「ハクも無事だったか……! だが……トリア達とははぐれちまったな。いや、アイツらなら……っ!?」
『戦闘力解放』のリミットを迎え、一瞬ぐらりと視界が揺れる。
これは……。
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「――あったんじゃねぇのか? 最近になって、力を使ったあとの反動みたいなもんとかよ」
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力の反動、か……。
それはつまり、『勇者級』の力に俺の体がついてってねぇってことなのか……?
そして『ボイドシンドローム』はゼクセーの言う通り、その反動によって俺自身がぶっ壊れちまわねぇよう守ってくれているんだとしたら……。
……『バッドステータス無効』の効果が無いワケだ。
デシレ達の『ピンクルスキャッター』同様、ある意味でこれは強化スキルみたいなもんだったってことか……。
そんなことを考えていると、ようやく外の足音もおさまってきたようだ。
どうやらあの大量の魔物のほぼすべてが、中央広場付近に到達したらしいな。
「通り過ぎていった……? 本当に、襲ってこないで……?」
「じゃ、じゃあ助かったの……!? よかった……だったら今の内に私たちも避難を……!!」
「――グギ……グギャアアアァァアッ!!!」
「……!!?」
なんだよこの不穏な魔物の叫び声は……!?
中央広場の方を隠れて見てみれば、気持ち悪いぐらいにうぞうぞと集まった魔物達が卵へ群がっていき……。
「――ギャオオオオンッ!! ギャキ……ギャ……」
「グオオオオォォォォ……!!」
「ギシュシュシュ……シュ……シュ……」
「……!? おっちゃん、た、卵にとりついた魔物達が……!!」
「しぼんでいってる……!? いやあれは……卵に吸収されていってんのか……!!?」
まるでそれが最上の喜びだとでも言わんばかりに、次々と卵へその身を捧げていく魔物達。
こいつは……!!
「――〰〰っ!? おじさま! 卵から……卵からまた……!!」
「……っ、おいおい冗談だろ……!? 勘弁してくれよ……!」
まぁ実際そうなるわな……!
なんとなくあの光景からこうなるような気はしちゃいたが……。
――たらふく魔物を吸収した卵が、ドクンと大きく脈動する。
そして再びビキリと亀裂が入り、またじわじわと中身が溢れだす。
……この光景を、俺たちは知っている。
なんせついさっき、これとまったく同じものを目の当たりにしたばっかりだからな……!
「あ、あ……!!」
「――…………シャアァアァァアァァァ……!」
「う、嘘でしょ……ジャラジャンドラが……」
「ジャラジャンドラが……復活した……!?」
まったく、いやになるぜ……!
毎度毎度『七大魔王』の非常識さに付き合わされてるこっちの身としちゃあよ……!!




