第32話 乗っかる方が得策ってことさ
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『――冒険者ギルドからお知らせします。現在ロンディベル中央広場にて、《七大魔王ジャラジャンドラ》と予測される魔物の出現が確認されました』
すっかり日の暮れた街の中、屋根を伝ってギルドへと向かう。
……しかしアンリアットと違って街中に拡声器まで備え付けてあんのか、流石大国の首都ともなると違うねぇ。
『現在対象は沈黙を保っておりますが、いつ活動を始めるかもわからない状況です。そこで冒険者の皆様には当ギルドから大規模共同クエストを発注し、その対処にあたっていただきたいと考えております』
「大規模共同クエスト……じゃあおししょーたちのお話は聞いてもらえたんだね」
「そ、そうみたいだな……。でも……」
『まずは住民の避難を最優先、然る後、指定の条件を満たすパーティのみジャラジャンドラの討伐へとあたっていただきます。住民の皆様は混乱を避けるため、指示があるまでは付近の建物内での待機をお願いします』
「……ま、そう言われて全員が全員『はいわかりました』と落ち着けるんなら苦労はせんわな」
突然の事態に混乱する街の住民たち。
無理もない話だ、リーズシャリオでの惨劇もとっくにニュースになってるしな。
『つきましてはただいまより三十分間、ギルド周辺の冒険者カードに意思確認のための魔法を展開いたします。参加をされる方はカードの左側、緑に発光している部分に少量のマナを流し込んでてください。クエストの決行は一時間後を――……』
と、繰り返されるアナウンスを一通り聞き終える頃には、俺たちもギルドへと到着していた。
共同クエストか、上手くいけば今までよりずっと楽に戦えるかもしれんが……。
「――だからよぉ! ここにゃガンガンに実力のある冒険者も集まってるじゃねぇか! 避難民の護衛なんて悠長なこと言ってねぇで、とっととアイツをブッ倒しちまった方が早いだろ!! なぁギルドの職員サンよぉ!」
「何度も言いますが、エンデュケイトの出現によってリーズシャリオはほぼ壊滅状態に陥りました……! ヴァルハーレも城内で食い止めることができず、そのまま街への進行を許してしまっていたら……!」
「ふむ、つまりそうなる前にあれを討伐してしまえば良いのであろう? 聞いた話では出現した七大魔王は二体とも、ワンパーティにやられたそうではないか」
「だったら余裕じゃねぇか! こんだけの冒険者がまとめて向かえば、むしろガンガンに首の取り合いになっちまうんじゃねぇのかぁ!?」
「ですから……! 迂闊な行動は控えていただかないと……!!」
「はぁ~いやだいやだ……こんなことで揉めてても一銭にもならねぇってのに……」
……どうやら、そう簡単にはいかなさそうだ。
「ム……彼女の言う通りだ。まとめて向かうというのであれば住民の避難後、足並みをそろえておこなうべきだろう」
「ほっほ、息巻くのは構わんが……時と場合は弁えてほしいところじゃの?」
「……あぁ!? てめぇら確かシルヴァーネの……ガンガンに言っとくが『称号持ち』がお前たちだけだと思うなよ! 『怒涛の激槌』ガンガー・ダイダラッタとは俺様のことよ!」
「……『漆黒の呪祖』、キルバ・ンヴァーレである」
「うえ、これ名乗らなきゃならねぇ流れですかい……? 『不転の義賊』ラットボゥ・イーで……はぁ、アッシはちゃんとした報酬さえいただけりゃあなんでもいいんですがねぇ……」
……どうにも一部の冒険者がギルドの職員サンに詰め寄っているみてぇだな。
聞いた感じ、七大魔王を討伐して名を上げようってってところで……。
「――! おいあれ……! イルヴィス・スコードだ……!」
「イルヴィス・スコードだと……!?」
「『七大魔王殺し』……エンデュケイトとヴァルハーレを討伐したっつーあの……!?」
おっと見つかって……え?
俺知らんうちに『七大魔王殺し』とか呼ばれてんの?
…………悪い気はしねぇなぁ。
「……おっちゃんちょっとニヤけてる」
「まったく、こんなときまでお前と言うヤツは……」
「べ、別にやけてなんかねぇよ、これはほれ、なんつーかこう……なぁ?」
「「じー……」」
……いやわかったわかったって。
わかったからそんな目でおっさんを見るのは辞めてくれ……。
「ム、来たかイルヴィス……!」
「ほっほ、身体の方はもうよいのか?」
「あぁ問題ねぇ、こっちでもいろいろあってな。とりあえず……話は聞かせてもらった。俺も職員サンの言う通り迂闊に攻撃すんのは反対だ」
もちろん警戒は怠るべきじゃあないだろうが、むやみにこっちから仕掛けるのはヤブヘビもいいところだね。
「ほう、何を根拠にそんな……」
「体験談だよ痛い目見てきたな、これ以上の根拠があるかい? ……『こんな風』に無くしたい部分があるってんなら、他人を巻き込まずによそでやってもらいたいもんだがね」
わざとらしく眼帯をコツコツとつついて、失くした左目をアピールしてやる。
まぁ俺の左目は半分自分で手放したようなもんだが……エンデュケイトとの戦闘で失くしたのは確かだしな、黙っとこう。
「はっ! その程度でガンガンにビビるようなヤツがここに居るかよ!」
「そもそも七大魔王の出現には、君が一枚噛んでるという話もある。そんな男の話を信用しろという方が難しいというものであるぞ?」
新聞に書かれた例の記事か。
だが……。
「おいおいそう思ってんならむしろ逆だろうがよ?」
「逆……?」
「この場で無実の証明なんざ出来ねぇが……俺には今まで『教会復活無し』で七大魔王を討伐したっつう確かな実績はある」
「まぁ……確かにそういう話はアッシらも聞いてますねぇ……」
「だろ? つまりだ、ホントに俺が『自分で仕掛けて自分で解決してる』ってんなら乗っかる方が得策ってことさ。……もっとも、『誰がどんなに犠牲になろうが功績を独り占めしたい』ってんなら話は別だがよ?」
「「……!」」
あえてわかりやすく印象の悪い言葉を口にして釘をさす。
腐っても称号持ちだ、分の悪い状況でただ我を通すような真似はしないだろう。
「……ほっほ、では決まりじゃの。そこの職員や、この街の魔物対策はどうなっておるのかの?」
「あ、はい……! ロンディベルの建造物には全て、対魔物用の防御魔法を施してあります。ですが……」
「ふむ、避難指定区域や一部の重要建造物でもランクS~S+……一般居住区の方ではランクAを想定している程度……と言ったところかのう」
まぁSを超える高ランク魔物のダンジョンアウトなんざ稀も良いところだからな。
むしろ建造物全てにって方が流石といったところだが……。
「『七大魔王相手』となりゃ、とてもじゃないが心強いとは言い切れんか……」
「ム、となれば住民は付近の町へ……最悪でも中央広場から少しでも遠い建物や施設へと避難させた方が良いだろう」
「おいおい街中の奴らを全員ってか!? それこそガンガンに現実的とは思えねぇがなぁ!?」
「もちろんそれはそうじゃろうて。じゃが……それ以上に非現実的な脅威に襲われかねん今、やれることはやっておかねばの?」
「ちっ……!」
非現実的な脅威、か……。
作ってもらった『再燃する走馬燈』は二つ……。
二つ目を買う時にゃ『もう一個目を使っちゃったの!?』って怒られたりもしたが、そこはまぁ問題じゃあない。
ねぇちゃんの話じゃたまたま在庫があった特殊な素材を使っているらしく、すぐに新しいのは作れないらしい……。
つまり……『ガンメタルエフェクト』は現状使えないってことだ。
有効的な手段が限られてる以上、シーレの言う通りやれるべきことは少しでもやっておかねぇと……。
「……ふん、そんな悠長なことをしている間にヤツが行動を始めたらどうするのである? それこそ被害は計り知れず……」
「いや、こいつはまだ確信とまではいかねぇんだが……どうにも『七大魔王』はこっちからちょっかいを出すまでは自発的に動かねぇ可能性があんのさ。現に――」
「――た、大変です!!」
……! なんだ……!?
ギルドの奥から別の職員サンが血相を変えて現れて……。
「げ、現場の職員から連絡が有りました! 一部の冒険者が制止を振り切り……ジャ、ジャラジャンドラと思われる対象に攻撃を始めているそうです!!」
「えぇ!!?」
「なんと……!!」
「ちぃっ、出遅れたか……!!」
はぁ!?
おいおい、どこのどいつだ考えなしに先走ったアホは……!?




