第31話 妙なところで律儀っつーか
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「……本当に、いつか報われる時が来んのかよ、なぁ……! オレたちも、そして……この世界も……――!」
この世界……?
今ゼクセーのヤツ『この世界』っつったのか……?
コイツらは……フリゲイトは本当に一体何を――。
「……おい女ども。そいつを……イルヴィスをオレんとこまで連れて来い……!」
「つ、連れて来いって……」
「あぁクソ、こっちはまだまともに動けねぇんだよ……! ごほ……! 間に合わなくなっちまっても知らねぇぞ……!!」
「ど、どうするのおっちゃん……?」
「……いや大丈夫だ、頼めるか?」
動けない体を支えてもらい、引きずられるようにゼクセーへと近づいていく。
荒い口調とは裏腹に敵意みたいなモンは感じねぇが……。
「……オラもうちょい……まぁそのぐらいなら今のオレでも届くか……ほらよ」
「――!」
俺に向かってゆっくりと手をかざすゼクセー。
その瞬間、あれだけ重かった体が嘘のように軽くなって……。
「これは……『再燃する走馬燈』の中毒症状がおさまったのか……!? いやそれだけじゃねぇ、戦闘力解放のインターバルも終わって……!」
「……マナや魔素によって起きるすべての事象は『属性』によって引き起こされる……てめぇを守ってやがるそれも例外じゃねぇ……」
「守る……!? ボイドシンドロームが俺を……!?」
「あ? ボイド……? ……あぁそういや名前つけてんだったな。……チッ、そういうとこがイヴェルトに似てやがってまたムカつくぜ……!」
「ま、まってくれ、守るってのは……!?」
「はっ、気づいてなかったのかよめでてぇヤツだな……。あったんじゃねぇのか? 最近になって、力を使ったあとの反動みたいなもんとかよ」
力の反動……?
確かに魔法薬や再燃する走馬燈の副作用でぶっ倒れちまうことはあったが、それ以外には特に思い当たるフシなんざ……。
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「――動くなって言ったデシ!! ぜったいに動くなって言ったデシぃぃっ!!!」
「わ、悪かった悪かったって!! ちょっとふらついちまって……!!」
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――いや、あった……!
『ピンクルスキャッター』を解除するためにデシレの手に触れようとした時……不意にめまいに襲われて、それでデシレの怒りを買っちまったんだった……!
あれも『ピンクルスキャッター』の効果なんだとばかり思っていたが……!
「てめぇの策でオレと『楔』のリンクは切れつつある……一週間もすりゃ完全に没収されちまうだろうよ。……つまり正真正銘、これが最後の『属性干渉』だ」
「にゃ……? 没収……?」
「……っと、あークソ口が滑った……! いくら頭が回ってねぇとはいえジョーダインのことを笑えねぇなぁ、ったくよぉ……」
自身を戒めるように自嘲するゼクセー。
……色々聞きたいことはあるが、この様子じゃあこれ以上のことは聞きだせそうにないか……。
「……なぁ聞かせろよイルヴィス。オレが女どもに手を出さねぇってあの話……あれもまったくのブラフだったのかよ?」
「――! ……いや、まったくってのは少し違うな、そりゃ完全に確信していたワケでもねぇが……。元々お前達のやり方は妙なところで律儀っつーか、一線を越えねぇようにしているとは感じてたんだよ」
「律儀……ねぇ」
今までもそうだった。
ケインもガングリッドもアルティラ達も、そして恐らく殿サマやマッフィーノや他の連中も……最終的にああすると決めたのは自分自身だ。
エータ達……っつーかビィトなんぞ、『危ないとは聞いてたけど誘惑には勝てなかったわ! めんご!』とか言ってたからな……。
つまりフリゲイトのヤツらは『餌を巻く』だけ……善意も、悪意も、決意も、それ以外も、あくまで本人が持っていたそれらの感情を『後押し』してやっただけに過ぎない。
もちろん特殊な状況をつくってそうなるように仕向けたり、何なら結構なレベルであくどいやり方はしちゃいたが……それでもヴァシネのように、直接『拷問』まがいの手段をとるようなことはしなかった。
……特にゼクセーのヤツは他のフリゲイトとはまた違ったやり方をしてるように感じたしな。
それらは人を傷つけられないっつう『制約』がある以上当然とも言えるし、逆に考えりゃ全員が全員、律儀に『抜け道』を使わずに従っていたとも言いえる。
なんなら一つ二つ覚悟を決めちまえば、その『制約』とやらは全て無意味になっちまうからな。
……俺の脇腹にナイフを突き立てた、マジューリカさんのように。
つまり……。
「力を持たず、蔑まれ、上り詰めるためにはなんだってしてやると思ってたあの頃……まぁまだ一年も経っちゃいないんだが、それでも『その一線』を越えちまばそれはもう俺じゃあなくなる……そんな境目が俺にもあった」
「……」
「自分語りみてぇになっちまうがよ、だからこそなんとなく分かるのさ。お前達がヴァシネのような手段をとらなかったのは、なんつーかこう……プライドみたいなもんなんじゃねぇかってな」
トリアたちに直接手を出したりしないと踏んでいたもそのためだ。
そして――。
「――……はっ、プライド、か……」
小さく苦笑し、そのまま空を見つめるゼクセー。
「……もう気付いてるだろうがよ、オレたちは『七大魔王』には手を出せねぇ……いやもういいか、『楔』以外の他の『不落の難題』にもだ。……間接的ならまだしも、直接的に関わることは出来やしねぇ」
「そいつは……また別の制限があるってことか? 人を傷つけられないっつう『制約』みてぇな……」
「……ま、似たようなもんだ。それどころかこういったデカいイベントも潰せねぇんだぜ? 心底『潰してぇ』とか思ってるようなヤツでも居りゃ、ソイツをけしかけることはできるがよ……」
……やっぱりな。
実際のところ、土壇場になってオークション自体を潰しにこられたら、俺たちには打つ手がねぇとは危惧していた。
だが奴らは換金の妨害はしてきても、『オルハリコン採取解禁』ってイベント事態を潰そうとはしてこなかったからな。
今回もそうだと踏んで決め打ち気味に策を練ったワケだが……。
「そのへんはなんつーか、オレらの根底に関わる部分だからなぁ。……クカカ、死ぬほど不自由なモンだろ?」
「……いいのかよ、そんな情報を俺たちにくれちまって」
「あん? 良くねぇに決まってんだろうが。……けどま、イヴェルトのクソ野郎はオレのやってきたことを知ったうえでヴァシネのやり方を選んだ……ちょっとした腹いせだな。オレももう、アイツらのとこに帰るつもりはねぇしよ」
「……! だったら……」
「はっ! てめぇらの方にでもつけってかぁ!? ……たとえやり方にゃクソほど納得できなくてもよ、オレもイヴェルトも目的とするところは同じなんだよ。……笑えるぐらい腹の立つことにな、よっと……」
「ゼクセー……」
少し体力が戻ってきたのか、ゆっくりと体を起こすゼクセー。
……『報われる』か、その言葉の真意は――。
「ま、そんな訳であとは好きにやってくれや。オレは……しばらくはもういい。あぁそれと……ネルネっつったか? ……悪かったな、傷やら毒やらを治してもらったのにうるせぇなんて言っちまってよ」
「え……? う、ううん、別にそんなことは……き、気にしてないから……」
「……クカカ、そうかい。……そんだけだ、じゃあな」
足元に落ちていた俺の眼帯を拾い上げ、ぽいと放り投げるゼクセー。
俺がそいつを受け取った時には……アイツの姿はもうそこには無かった。
イルヴィスとゼクセーのセリフ見分けつきにくいかな……。
分かりにくいなって人はコメントで意見をいただくか、もしくは一人称で見分けてください……!
イルヴィス→俺
ゼクセー→オレ




