番外編 ワールズレコード038: パーティ人数
このお話は《第五章26話》の少し前ぐらい、《ワールズレコード037》からだと少し後ぐらいのできごとです。
またちょっとしたおまけ程度の挿絵が含まれますので、苦手な方はお手数ですが、右上の表示調整から設定をお願いします
「そういえばさー、最近おっちゃん全然レベリングとかついてきてくれなくなったよねぇ? もっとボクを楽……じゃなかった、仲間を大切にしてくれてもいいと思うんだけどー?」
メイドさんの入れてくれた紅茶とスコーンで一息ついて早々、不満げにぷぅと唇をとがらせるトリア。
……お前今一瞬完全に本音をこぼしただろ。
「にゃうーん……! この子が産まれたのは嬉しいけど……こうやってウチらはないがしろにされていくのね……? しくしくしく……」
「きゃうー?」
「どこの三文芝居だ、またそうやって人聞きの悪ぃことを……前から少し話しちゃいたが、現状レベルの上がらない俺が戦闘ででしゃばっても旨みが少ないだろ?」
「えと……ジンドラクラックでもそう言ってましたね?」
「あぁ、そんでもってダンジョンに潜るパーティとして考えた場合、六人ってのは多い方ときている」
「ふむ、まぁ確かに普通は三~四人……多くても五人程度というのがパーティ編成におけるセオリーではあるが……」
「そこでだ、俺はいわゆる後見人っつーか……本格的に『サポーター』側にまわっていこうかと考えてるんだよ」
もちろん、今日明日思い立ってすぐにってワケじゃあ無いがな。
「サポーターっていうと……ダンジョンに潜らず後方支援に従事する、アカリ様みたいな人たちのことっすよね?」
「え!? じゃあもうおっちゃんはダンジョンに潜らないってこと!?」
「いや、そいつはちょっと違ってな、あー……まぁ一言で言っちまえば『ダンジョンにも潜るし、いざとなったら魔物とも戦えるサポーター』……ってところか?」
「……ん? お、おっちゃん、それは今までとどう違うんだ……?」
「なんつーかほれ、気持ちの問題だよ気持ちの。ま、その辺しっかりと考えるのはひとまずオークションの後かね?」
そうは言いつつも、俺自身にまったく展望がないワケじゃあ無い。
普段はゲートや戦闘力解放での後方支援に従事して、レベリングや戦闘による地力の底上げをサポートする。
んで、必要に応じて戦闘にも参加するってワケだ。
まぁ傍からの見ようによっちゃ『おいしいところだけ参加するズルい男』みたいになっちまうかもしれんが……。
トリア達には『俺のおかげで強くなれた』なんて風じゃなく『自分が頑張ったことで強くなった』っつうちゃんとした経験を積ませてやりたいからな。
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ワールズレコード038:パーティ人数
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――翌日。
フゥリーン家からの呼び出しに応じ、ゲートでミヅハミまでやってきた。
念のためクヨウにも同行をしてもらったんだが……。
「なるほど、イルヴィスどのがそんなことを……」
「うむ、そういった意味ではクレハとも少し似ているかもしれんな。あ、イルヴィスお茶のお変わりはどうだ? ほら……」
「え、あぁ悪いな。しかしこれ、コタツっつったか? いいのかねぇ職人サンたちに任せっきりでこんなぬくぬくと……」
急須から丁寧にお茶を注ぐクヨウを眺めながらそんな言葉を口にしてみる。
現在『信用できる』とお墨付きの職人サンたちの手によって、『夢幻の箱庭』で一本だけ無事に残っていた例の柱を調べてもらっているところだ。
これでなにか分かるとありがたいんだが……。
「まぁ私達がいたところで何ができるというわけでもないだろう? そういえば今まで聞きそびれていたな。クレハ、お前が『英雄級』だということを隠していた理由なんだが……」
「それはもう、クヨウさまをびっくりさせるためですよ。……怒らせてしまいましたか?」
「ふん、あぁ怒っているとも。……そうやって本当の理由を話さないことにな」
「……!」
「気を遣っていたのだろう? 確かに私はマナの大きさには恵まれなかったが、それでお前が変に気後れする必要などないというのに……」
「クヨウさま……ふふ、大きくなられましたね、よしよし」
「な!? こ、子ども扱いするんじゃない! だいたい私とお前は二つしか変わらんだろうがまったく……!」
クレハはクヨウの二歳上で18なんだそうだ。
それで『英雄級』だってんだから、まぁ言っちまえば才能だわなぁ。
もちろん、才能だけで英雄級になれるってんなら苦労はせんだろうが。
「ですが……それ以外にもちゃんとした理由もあるのですよ? イルヴィスどのもお感じでしょうが、力を持つことでしがらみに捕らわれるのは世の常……フゥリーン家のシノビとして意図せぬモテ期は回避せねば……と」
「ま、確かにそいつは身を持って体験してるよ。そういやクレハはギルドにも所属してないんだったか?」
「はい。ですが最近、私の力を知ったあるお方にも勧誘をされまして……」
「勧誘だと? 一体誰に……」
そうか、クレハもクヨウやヒスイと一緒に殿サマ相手に戦ってくれたからな……。
それを目撃した誰かに――。
「まぁそのお方というのはトリアさんなんですが」
「いやアイツかよ!」
「確かに言いそうではあるな……」
いやもうホント、その光景が目に浮かんでくるようだぜ……。
「私としても、お役目さえなければやぶさかなお話では無かったのですが……」
「どうせ『人数が増えたほうが賑やかで楽しいし、その分ボクも楽ができるしね!』とかなんとか言ってたんだろ? どっちも本音なところがまたアイツらしいっつーか……」
実際シーレやアルティラたち、他にもシズレッタとネーリャなんかにも同じようなことをのたまってたらしいしなぁ……。
まぁ向こうが常識的だったおかげでそいつはご破算になったようだが。
「だいたいダンジョンってのは、雁首揃えて潜りゃ楽になるってモンでもねぇのにアイツはホントに……」
「ふふ、そう言ってやるな。まぁ確かに人数が増えれば戦力も比例するが……長く潜るならそれだけ食料なども必要になってくるからな」
「それに一人一人のケアも少人数の時と比べりゃ格段に難しくなる。人が増えればいろいろと擦り減る機会ってのはどうしても増してくるもんだからよ」
そういう部分はやっぱり、大人数だと疎かになっちまうことも少なくない。
体だけじゃない、精神面もあわせての話だ。
「さらにはマーキングの分散による、個人個人のEXP現象の目減りも見過ごせません。レベルが上がりにくくなれば、それだけ深層に潜ることも難しくなっていき……ふーむジレンマ」
「確か昔、北の大国ストロジフで『統制された冒険者の大群によるダンジョンの一斉攻略』が計画されたという話も聞くが……」
「ま、その戦法が『現在使われておりません』ってのはそういうことだわな」
ギルドもそれを知ってるからこそ大人数のパーティを推奨せず、状況にあわせて合同クエストを発注する程度に収めている。
現に俺たちが六人でやれてるのは『背中の一坪』と……今はなにより『夢幻の箱庭』の存在があってこそだ。
でなけりゃこないだのジンドラクラックの様な無茶な潜り方は出来んからな。
そりゃ『夢幻の箱庭』を活用すれば、もっと大所帯でもなんとかなりそうな気もするが……それはそれでへんに目立つ原因にもなっちまうからなぁ。
……と?
「おや……ふむ、わかりました」
突然天井からしゅたっと現れた黒装束の耳打ちに、小さく相槌を返すクレハ。
こういうところを見ると確かに『ニンジャ』って感じがするな、トリアが見たらはしゃいでたかもしれん。……あとで自慢してやろーっと。
「イルヴィスどの、柱の調査は一段落着いたようです。結果を精査して、報告は後日……ということでもよろしいでしょうか?」
「あぁそれで頼む。そんじゃあ俺たちも帰るとするかね。……っと、クヨウはどうする? おふくろさんに顔を出してくかい?」
「いや、母上も今は忙しいらしいのでな、またの機会にしておくさ」
「そうかい、それなら……」
「あ、そうですイルヴィスどの、これを……」
「ん? こいつは……」
クレハから手渡された、なにやら布に包まれた手のひら大のなにか。
中を見てみると……藁と縄で作られた、なんとも形容しがたい人形のようなモノが現れて……。
「……え、なにこれ」
「クレハちゃん人形です」
「クレハちゃん人形……!?」
「はい。幸運を祈るお守り代わりにと」
にしてはビジュアルが奇抜すぎんだろ……。
流石に本人を前にしては言えねぇが、どっちかっつーと幸運をもたらすより先に呪われちまいそうで……。
「ごそごそ……あ、上着の内ポケットはここですね? よいしょと……」
「ちょ、おっさんの懐なんざまさぐるんじゃないよ」
「まぁまぁお気になさらず。いいですか? こうして常に肌身離さず持っていてください、でないと……呪われてしまいますので」
「いや普通気にするのはお前の方で……って、は!? の、のろ……!?」
「冗談です冗談、フフフ……」
……ホントに冗談?
相変わらずのポーカーフェイスで、おっさんもうわかんなくなってきてるよ……?
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