第29話 たとえ刺し違えてでも――!!
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「――うんだからさ、彼の知り合いにも同時に同じことをしてあげたんだよね。確か200人ぐらい……だったかなぁ? まあしっかり数えてないんだけど」
「………………は?」
ヴァシネのその言葉に、俺の背中にもぶわりと汗が噴き出していく。
同じこと、そいつはつまり――。
「あれ、わかんない? 映像電話で彼の状況を見せながら、まったく同じ拷問をみんなにもしてあげたのさ。……おっと誰一人殺しちゃいないよ? 回復魔法も使って……そこはほら、約束だからねぇ」
「な、なにを……」
「最初はさぁ、みんな僕に向かって言うんだよ? 『もうやめてくれー!』とか、『ふざけるなー!』とかさ。でもね? でも……くくく……!」
「なにを言って……」
「だ、だんだん時間がたってくると、今度は声も聞こえない彼に向かって言うんだよ? 『もう耐えるなー!』とか『お前が我慢するせいでー!』とか……あはは! いやー笑っちゃうよねぇ? 彼は何も悪くないってのにさぁ?」
「……っ!! てめぇ……!」
「それで……君がいなかった一週間ぐらいの間だったかなぁ? それぜーんぶ記録しておいてさ、後でまとめて彼に見せてあげたんだよ、全員分ね」
「てめぇはぁ……!!」
「彼もう、死んじゃうんじゃないかってぐらいににうなだれちゃってさぁ……! で、憔悴しきってるみたいだから聞いてあげたんだよ、『まだ続ける?』って。……そしたら快く話してくれたよ、あはははは!!」
「――〰〰あああぁあぁああっ!!!! てめぇは!! てめぇは殺すっ!!!」
刺された個所など意にも介さないように、悲痛な形相で身をよじるゼクセー。
だが……!
「おいおい、物騒なことを言うのはやめてくれよぉ。だいたい僕を殺したら君も消えちゃうんだろう? やめといた方が良いって、ね?」
「知ったことかあぁああぁっ!!! クソ、動け!! 動きやがれぇえぇ!!」
「えぇ……? 僕は親切心で言ってあげてるのに……」
コイツは……この男は――!!
「やーでも拷問なんてするもんじゃないねぇ。うるさいし、汚れちゃうし、何よりカワイソウだしさぁ……あんなのを楽しんでやるヤツの気が知れないよ。……なぁ、お前もそう思うだろうイルヴィ――」
「――ヴァ……シ……ネェーーーーッ!!!」
体を縛っていた何かを力ずくで引きちぎり、ナイフを抜いてヴァシネへと飛びかかる……!!
そうだ……!! この男は……!! この男だけは!!!
「っとと、どうしたんだよイルヴィスそんなに怒って……。というか、すごいじゃないかあれから抜け出すなんてさぁ!」
「黙れ……っ!! お前はここで……!!! ――ここで俺がぁっ!!!」
戦闘力を勇者級まで引き上げ、傾向限界突破の力で全身を強化しながらヴァシネ目がけてナイフを振るう。
……が、ヴァシネはひょうひょうとした様子で、その全てをさばいていく。
クソ! 残り時間が少ない中、コッチはほぼフルで力を使ってるってのに……!
なんで届かない……!? なんでこんな……!!
「……っ!! 答えろヴァシネ!! なんで……なんで親父とおふくろを!!」
「なんでって……あー、まぁあの時は事故死を理由に姿を消そうと思ってたんだけど……『息子である僕が死ぬ』、なーんて悲しい経験を二人ににさせちゃうのは酷ってもんだろ? だから親孝行みたいなものっていうか……」
「……っ!?」
「そんな理由で……」
「――〰〰っ!! ふざけるなあぁぁ!! だったらなんで俺はぁっ!!!」
「おいおい、お前はまだ五歳にもなってなかったんだぞ? そんな弟を殺すなんて酷いマネ、僕にできるわけ無いだろうにまったく……」
……クソッ! クソッ!! クソォッ!!
コイツは……! コイツは――!!
「あ、あのヒト……い、言ってることがむちゃくちゃだ……」
「あぁ、だが……」
「嘘はついてない……ううん、きっとその必要性すら……つまり――」
――つまりこれがコイツの本質……!!
この男の……! ヴァシネの……! 血を分けた俺の兄の……!!
だからこそ俺は――!!
「ガングリッド! ワシの『夕方鳴流』をもってお主の拘束だけでもなんとかする! ……『黄昏の魔卿』の二つ名、伊達では無いことを――!」
「分かった、ならばオレも……!!」
「――いいや……! 手を出すなガングリッド……!!」
「……ム!? だがイルヴィス――!!」
「何を言うておる!! 下らん意地で命を落とせば……いいや、仮にヤツの言う通り命だけは長らえたとしても、場合によってはそれ以上の……!!」
「わかってる……! けど……頼むよシーレ……!! コイツは……コイツは俺の……!!」
「〰〰っ! この……ばかもの……!! ばかものがぁ……」
「おししょー!? ダメだよそんな……おっちゃんもなにバカなこと言ってるの!! おっちゃんにはボク達がついてないとダメなんだからぁ!!」
「おじさまぁ!!」
……悪いなシーレ。
トリアも、ハクも……だが――!!
「――そうだよなぁイルヴィス? せっかくの兄妹水入らずなんだ、お人形たちのジャマなんかはいったら興ざめだよなぁ……!」
攻撃の合間を縫って俺をはじく、ヴァシネのデコピン。
次の瞬間……たったそれだけで自分の体が壁にめり込むほどに吹き飛ばされたんだとやっと気付く。
「オジサン!!?」
「イルヴィス!!」
「んふふ、元気が有り余ってるのは昔から変わらないねぇ。あ、そうだ覚えてるかい? お前が町で迷子になった時も――」
「――……スクラムアーツ……『ガンメタルエフェクト』ォッッ!!!!」
『再燃する走馬燈』を噛み砕き、再びヴァシネに肉薄する……!!
もう時間は残っちゃいない……!! これが最後の――!!
「おおおおおおおおお!!!!!」
「ははは、すごいすごい……! でも急がないと、それ、そんなに長く持たないんだろう? 僕に会えてはしゃいじゃうのは分かるけど……」
「だぁ!! まぁ!! れぇぇぇぇっ!!!」
コイツを野放しにしちまえば、きっとまたどこかで同じことが起こる……!!
そしてその狂気はいつかトリア達を……それだけじゃない、俺の大事な奴らにだって牙をむくときが必ず来る……!
『殺さない』なんて口では言っているが、コイツがそれを守る保証なんざどこにも無い……!
ともすれば親父やおふくろのように……!!
そんなのは駄目だ……!!
だから俺が今……たとえ刺し違えてでも――!!
……………………
…………
……
「――あー……残念、時間切れだねぇ?」
膝をつく俺に向かって、本当に残念そうにヴァシネはそう言い放つ。
同情かそれとも……いや、そんな殊勝なもんがコイツにあるわけねぇか……。
「でも頑張ったもんなぁイルヴィス? 最後の……『ガンメタルエフェクト』だっけ? あれはうん、お兄ちゃんも感心しちゃったよ~」
「はぁ……はぁ……! ……はっ、やっぱり……だな……」
「ん? なんだって?」
俺の言葉を聞き逃さないように、顔を覗き込んでくるヴァシネ。
……聞こえなかったってんなら言ってやるさ、もう一度な……!!
「……やっぱりメイドさんの言う通り――コツコツ貯蓄するってのは大事だって言ったんだよ……!!!」
「え――?」
「――『ガンメタルバッシュ』……ッ!!」
振り上げたナイフを追うように、バギンと音を立てて鈍色の斬撃が迸る。
その切っ先は間違いなくヴァシネを捕らえ――!
「……っ!? お、イルヴィスお前……! 僕にも気づかれないくらいに少しずつ……!!」
「あぁそうだ……! ほんの一瞬を繰り返し……一撃分、なんとか力を温存しておいた……!! おかげで……テメェの面の皮一枚は道連れにできたぜ……!!」
ぼたぼたと目元から血を流すヴァシネ。
はっ……不意打ちで……温存した最後の力を振り絞ってでもこの程度かよ……!
俺は……。
「これは……僕が……見誤ったのか……? いいやそんなはずは無い、だとしたらまさか……ひょっとしてイルヴィスも……?」
……? なんだ?
今度は何をぶつぶつと……。
「そうかだからさっきのアレも振りほどけて……! ふふ、フフフフ……あはっ……!」
「――――ア ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ !!!!!」
「〰〰っ!!?」




