第28話 同じことを
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「どういうことだ……!? てめぇの……てめぇのその頬の傷は――!!?」
目を見開いたまま俺の頬にできた小さな『傷』を睨み付けるゼクセー。
さて……そろそろ種明かしといこうかね?
「なに、なんてこたぁねぇさ。ちょっとばかりマナを調節して、防御力を弱めた部分でお前の攻撃を受けただけで……」
「んなこた分かってんだよ!! ……そうだ、いくらなんでも『気づかないワケ』がねぇ……! こんな単純なやり方に俺が――!!」
「――ひょえぇえ……!? おじさんあんなに強かったんデシか……!?」
「あの時まともにやり合わなくてよかったでゴンスねぇ……」
「ちょ、二人とも……! あんまり顔を出すと見つかるでヤンスよ……!」
「――!?」
物陰からひょっこりと顔を出す三人のシルエット。
……どうやら隠ぺい魔法もギリギリもったみたいだな。
「アイツらは……!」
「デシレ! ヤンスゥ! ゴンスモン! 助かったぜ、後は……!」
「了解でヤンスダンナ! ――『クイックムーヴ』!」
「それ逃げるデシー!」
「約束通り、またご馳走をふるまってもらうでゴンスからねー!」
あぁまかせとけ!
とびっきりのヤツを振るまってやるさ!
「アイツらの『ピンクルスキャッター』な、状態異常なんかで相手を究極のドジッ子に仕立て上げようってスキルなんだが……あぁ知ってたかそういや。そいつをちょいと改良してもらったんだよ」
「……っ、てめぇあの目くらましは……!」
「そういうことだ。流石に究極のドジッ子とまではいかなかったが……傷一つ分、お前の気はそらせたみてぇだな――!!」
そして……!
「――おっちゃん!」
「イルヴィス!!」
ほぼ同時に現れる、五人+二人の人影。
流石マーカースライム、いーいタイミングだぜ……!!
「来たよおっちゃん、って……あれ!? おししょーなんでここに!?」
「が、ガングリッドさんまで……!」
「ほっほ……まだまだ修行が足りぬのうトリア?」
「……ム、俺たちはずっとお前たちのそばにいた」
「ええ!? そ、そうなんですか!?」
ま、驚くのも無理はないか。
変にぎこちなくならねぇよう、五人には内緒にしておいたからな。
「イルヴィスの女ども、それと……ガングリッド・アールディムにシーレ・ルテリオか……!」
「あー、さっきハッタリはよせなんて言ったがよ……悪い、アレもブラフだ。念のため、二人にはトリア達の護衛をしてもらってたのさ」
『トリア達には手を出さない』ってハナシにゃ情報が不十分で、まだまだ確信を持てていたワケじゃなかったからな。
まぁ実際のところ、確率は限りなく低いとは思っていたがね。
「はっ……! まんまと食わされたってわけかよ……! ククク……!」
コイツのこの反応……こんなだまし討ちみてぇな方法でも恐らく、ヤツは俺を傷つけたことにより『大陸の楔』の力を失うはずだ……!
だとしたら――!
「――クハハハハッ!! ……はぁーあ完敗だ。どうやらこの読み合いはてめぇの勝ちみてぇだなぁイルヴィスよぉ?」
っと……? てっきりブチ切れるかとも思ったんだが……。
予想に反して随分と冷静だな、いやむしろ……。
「おいおい、ハメられたってのに妙にご機嫌じゃねぇか?」
「そりゃあそうだろ? やっぱ凌ぎ合いの醍醐味ってのはこういうトコだ、じゃねぇと……『楽しくねぇ』からなぁ」
「……楽しくない、か。お前たちが常々口にしているその言葉の意図、そろそろ教えてもらってもいいんじゃねぇのかい?」
「知りてぇか? 良いぜ教えてやっても、ただし……」
「……!」
「――本気の俺に勝てたらの話だがなぁ!!」
再び構えるゼクセーに感じる、今まで以上の威圧感……!
これが本当の――!!
「さぁ来やがれイルヴィス!! もちろん殺しゃしねぇが……枷が一つ外れたぶん加減はしてやらねぇからよぉ!! 痛ぇ目にあうのは覚悟して――!」
「――……うーん、それはちょっと見逃せないねぇ。ほら、僕って弟想いだからさぁ?」
「「「――!?」」」
不意に頭上から聞こえてくるそのセリフ。
今の……今の声は――!!
「……!? ヤツはあの時の……!!」
「おじさまの……おにいさま……――!」
「……っ、ヴァシネ……!!」
「やぁイルヴィス、お兄ちゃんが来てあげたよ?」
ひらひらと手を振りながら、ゆっくりとこちらへ降りて来るその男。
ヴァシネ・スコード……俺の……!
「おらてめぇヴァシネ何しに来やがった! 余計な手出しをすんならてめぇも……!!」
「おいおい酷いなぁ……僕達はお仲間、そうだろうゼクセー?」
「ちっ、なにが仲間だ……! イヴェルトのヤツはどういうつもりだか知らねぇが、オレはまだてめぇを認めたわけじゃねぇぞ!!」
「あ、そういうこと言っちゃう? はぁ~、君ってばそういうこと言っちゃうヒトなんだ、傷つくなぁ……」
ゼクセーの言葉にわざとらしくうなだれると、そのままぴっと指を小さく振り下ろすヴァシネ。
――瞬間、まるでヴァシネの指先に操られるように、ゼクセーのヤツがその場でうつぶせに倒れ込んだ。
これは……!?
「な……っ!? んだこれ……!!? 体……が……!!?」
「んふふ、ほとんど動けないだろう? なに、ちょっと最近必要になったからさぁ、作ったんだよねぇこのスキル。そんでもって……よっと」
ヴァシネはゼクセーを見下ろしつつ、どこからともなく二本の剣を抜き出す。
そしてそれをゼクセーの両肩へ――。
「――〰〰っ!!? ぐっ……があぁあぁっ!!??」
「えっ!?」「な……っ!?」「きゃあ!?」
……っ! おいおい、アイツら手を組んだんじゃなかったのかよ!?
なんだってこんな……!!
「ちょっと傷ついちゃったからさぁ、お・か・え・し。……効くだろうこれ? 他にはまったく悪影響を与えることなく、痛みだけを何倍にも増幅できるんだよ?」
「ぐ、ぎ……!! て、てめぇ……!!」
「まぁ落ち着くといいよ、ほら、仲間同士でこんな風にいがみ合いしてたって無益も良いとこだろう? ……そうじゃないと、僕もまたこういう手段に出るしかないから……さ!」
「……っ!? ぐがあぁあぁっ!!!!」
そう口にしながらまた二本、今度は腕と足へ剣を突き立てる。
その凄惨な光景に、思わず足を踏み出そうとするが……。
「おっと、イルヴィスは少し待っててね」
「――な!?」
その指の一振りで動かなくなる俺の体。
俺だけじゃねぇ、トリア達も全員……!!
「ヴァシネてめぇ……! 今度は一体何を……!!」
「お? イルヴィスってばお兄ちゃんのことが気になっちゃう感じ? いやぁ思いだすなぁ、お前は昔から僕の背中にずっとついてきてて……」
「ふざけるなっ!! 俺は……!!」
「まぁまぁそう熱くなるなって、ほら、しー……。冷静に広い視野をもって、よーく周りも見てみないと……なぁイルヴィス?」
まるで子供をあやすように、ピンと立てた指を鼻先へ持ってくるヴァシネ。
そしてそのままその指を空に掲げると……。
「空に……魔法陣……?」
「にゃ……!? あの術式は……!!」
「転送魔法じゃと!? 馬鹿な……! この規模で、あのように複雑な……!」
「あ、わかるぅ? イルヴィスのお人形達にしては優秀だねぇ、うん。――それじゃあ問題だ、あの転送魔法からはナニが出てくるでしょうか? ヒントは……君たちもだーい好きな、魔物のお姫様さ……!」
「も、魔物のお姫様……?」
「まさか……!!」
「――その通り……! 『バグ属』の頂点にして『色欲』の化身――七大魔王『蠱后ジャラジャンドラ』ちゃんだよぉ!!」
ジャラジャンドラだと……!!?
それに転送……『七大魔王は』全員、何かしらの出現条件みたいなモンがあるんじゃなかったのかよ……!? それとも……!
「……ぐ、ぎっ……! ば、馬鹿言ってんじゃねぇぞてめぇ……!!」
「なんだいゼクセー、僕が嘘をついてるとでも?」
「あたり……まえだ……!! ジャラジャンドラは……ジャラジャンドラはアイツが……!!」
「あーうんそうそう、君の大事な相棒が必死に出現条件を満たそうとしていたんだよねぇ? それをさ、まぁちょっだけ強引な手段で譲ってもらったんだよ。あー……拷問って知ってる?」
「ご、拷問……!?」
唐突に吐き出されたその衝撃的な言葉に、思わず青ざめるトリア達。
だが……。
「クカカ……! 拷問だぁ……!?」
その中で唯一、ゼクセーだけは不敵な笑みを浮かべていた。
「くだらねぇホラを吹いてんじゃねぇぞクソが……!! アイツが……アイツが今までどんな地獄を見てきたか知りもしねぇくせによぉ……っ!!」
動けない体で、強くヴァシネを睨み付けるゼクセー。
「アイツの信念はホンモノだ……! 血と、地獄と、ぶっ潰された尊厳と……それを全部覆すほどの執着で塗り固められて……てめぇのダルい拷問ごときで折れるような男じゃねぇんだよ!!」
「……ム、イルヴィス、ヤツらの言っているアイツというのは……」
「あぁ、恐らくはな……」
ジョーダインがマッフィーノを、ジュジュニャンが殿サマを選んだように……ゼクセーが見出した『魔王候補』。
恐らくそれが……。
「なるほど……いやー実際そうなんだよねぇ? ホントにまいったよ、どれだけ痛めつけてもぜーんぜん口を割ろうとしないんだもの。君たちも七大魔王のこととか、僕には全然教えてくれないしさぁ」
「クカカ、早速ボロが出ちまったなぁ……! 何の目的でこんなことしてんのかはしらねぇがとっとと――」
「――うんだからさ、彼の知り合いにも同時に同じことをしてあげたんだよね。確か、200人ぐらい……だったかなぁ? まあしっかり数えてないんだけど」
「………………は?」
前話(五章27話)での目くらましの時、実はイルヴィスがちゃんとデシレ達のことも含めて『俺達は~』と言ってる(考えてる)シーンがあります!
お暇な人は探してみてね!




