第27話 これで終わりってワケじゃあねぇだろうによぉ?
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オープニングセレモニーも無事に終わり、翌日からつつがなくオークションは開催された。
流石に大規模なイベントだけあって、豪華な宝石からダンジョンの発掘品まで次々と入札がされていき、それも今日で六日目だ。
俺たちにとっちゃ明日の最終日、本会場での公開入札が本番だが……。
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「むぅ~! ねぇホントにおっちゃんは観光とか行かないのー? 一日ぐらいは別にいいと思うんだけど……」
「えと、ハクも……ハクもちょこっとだけそう思います……!」
「前にも言ったろ? 俺は元々こうするつもりだったってよ」
「そ、それは聞いていたけど……や、やっぱりちょっと残念だ……」
「そう残念そうな顔してくれるなって。支障が出ない程度ならガンガン金を使ってきてくれていいからよ、五人で楽しんできてくれって、な?」
「うにゃーん、確かにお金を持ってるってアピールも大事だとは思うけどー……」
「まぁ仕方がないさ、私達でイルヴィスの分も楽しむとしよう」
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……オークション初日のそんなやり取りを思い出しながら、夕暮れ時に一人、薄暗く人通りの少ない路地裏のような場所へと足を運ぶ。
どれだけ賑わっている街でも、こういう場所ってのは必ず存在するモンだ。
これなら……。
「――チッ! スマートじゃねぇなぁこんな直接的なやり方はよぉ……!!」
「! 出てきたか……!」
薄闇の中、不自然に佇むフードの男。
黒い肌と白い髪……『ゼクセー』とやらで間違いなさそうだな。
「一応言っとくけどなぁ、オレはこっちでもいろいろと用意してたんだぜ? それをてめぇ、ずっと引きこもっていやがって……」
やっぱりか。
『写本』の入手を目前にしたこのタイミング……ヤツが必ず何かを仕掛けてくるのはわかっていた。
だからこそ俺は今日まで、『一歩も部屋から出なかった』んだ。
……トリア達にはちょっと渋い顔をされちまったがね。
外部との接触を断ち、余計な波風もたてず……。
やったことっつったら公開入札への参加のために、一度だけ『写本』に入札したことぐらいか?
策をまるっとスルーされ、落札までの時間も少ない今……奴に残された手段となれば、パーティ唯一の入札者である俺を直接なんとかすることぐらいだろう。
分かるかゼクセー、つまり……!
「しかし呑気に独り歩きとはなぁ? オレがテメェの大事な女どもを使うとは思わなかったのかよ? 制約をかいくぐる方法なんざいくらでもある……てめぇとの交渉材料にするにはうってつけだぜ?」
……!
制約……エテリナが見つけた、『人を傷つけることも殺すこともできない』っつう例のアレか……。
「良いのかい? そんなモンがあることをあっさり認めちまってよ」
「はっ! てめぇがこんな手段をとったってことは、今さら隠しても仕方がねぇってことだろうが。……まぁオレたちもわかりやすく雁首並べて反応しちまったしなぁ」
……殿サマの別邸でのあの時か。
「だいたいオレは反対だったんぜ? 不確定な情報ってのはそれだけで武器になるってのに……まぁいいか。……んで、どうするよ? 今から女ども人質にして、てめぇに『写本』から手を引かせたっていいんだぜオレは……!!」
強気な口調で脅しをかけてくるゼクセー。
だが……。
「無駄なハッタリはよしとけよ、お前らは……いいや少なくともお前はそれをしないはずだ」
「おいおいめでてぇなぁ!? 言ったろうが、制約の抜け道なんざいくらでも……」
「いいやしないね。だからこそ……お前は今『スマートじゃない』なんて言いながらも俺の前に立っている、そうだろ?」
「……!」
そうでなけりゃとっくにそれをしているはずだ。
ヤツらがその気になれば、それこそ単純な脅しでもなんでもして無理やり誰かを従わせる……なんてこともできるはずだからな。
「……クカカ、そうかい。だとしたら……やっぱりてめぇにゃ力づくで大人しくしててもらうしかねぇなぁ?」
「おっと、言っとくが俺は全力で駄々をこねるぜ? 無傷で捕らえるのは無理だと思うがねぇ?」
「はっ、余裕だよ余裕! ……まぁ気に食わねぇが、アーデムのヤツに仕込ませた『相手をただ眠らせるアイテム』なんてモンあるからよ、睡眠導入剤はよりどりみどりってヤツだ……!」
……!
アーデム……恐らくケインに首輪に関わっていた、『アイテム干渉』の力を持つフリゲイトか……!
「もちろんてめぇの『バッドステータス無効』のことは知ってるぜ? 特に……こういった状況じゃあ長くは持たねぇこともなぁ!!」
瞬間、瞬く間に距離を詰めてきたゼクセーが、ポケットに手を入れたまま俺の足元を踏みつける。
すると……!
――ぐにゃん。
「……な!?」
まるでスライムのように、グニャグニャとうねっていく地面。
まずい……! 完全に足をとられちまう前に離れて……!
「おらどうしたぁ!! てめぇの思惑通り釣られてやったんだ! タイクツなんざさせてくれるんじゃねぇぞ!!」
「……っ! はっ、まぁ努力はしてみるさ!!」
ナイフを抜き、戦闘態勢をとる。
『制約』とやらがある以上、ヤツは俺を直接攻撃できない……!
となりゃあ断然、こっちに有利なはずだが――。
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『――勇者級程度の力で、俺を抜けると思わない方がいい……!』
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――いつかのジョーダインの言葉が頭をよぎる。
そいつを振り払うようにゼクセーと距離をとろうとするが……。
……ぶにょん。
「は……!?」
今度は唐突にあらわれた柔らかいなにかに、それを遮られた。
結界……!? いや違うこれは……空気の壁か!?
さっきの地面といいこいつは――!!
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「――デッシーたちの『ピンクルスキャッター』もあのロープドインキュバスの能力も……ちょっと普通じゃない挙動をしてたんだよねー? 状態異常を伝播させたり、魅了の対象をオジサンにしたり……」
「だとしたらやっぱ『魔術干渉』とか……あーでも、マジューリカさんはもう力を使えないんじゃないかって話だったよな?」
「うにゃーん、マジュりんの話を抜きにしても、効果を延長する『魔術干渉』とはちょっと違う気がするってカンジ? ……まるで『性質』自体を『別の性質』で上書きするような力、アレは恐らく――」
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「――『属性干渉』か!!」
「さぁて、どうだろうなぁ!!」
ゼクセーがポケットから小さなマッチを投げ捨てると、石畳の継ぎ目にそって足元に炎が吹き上がる。
が……その炎は熱くもないし、なんなら火傷すらすることはねぇ……!
ただ炎特有のゆらめきと接着剤のような粘着性を持って、確実に足をからめとってくるだけで……。
炎だけじゃない……今この瞬間、床も、壁も、空気さえも……!
すべてが奴の手足となって、俺の敵となってやがる……!
――これが『属性干渉』……!!
……いや、いくらなんでも反則すぎだろ!?
これがフリゲイトの……『大陸の楔』の力かよ……!!
ヤツが狙ってるのは戦闘力解放の時間切れによる『バッドステータス無効』の無力化で間違いない……!
その為に少しでも、俺に力を使わせようってワケだ……!
俺は瞬時に背中の一坪から『夜のカーテン』を取り出すと、大きく広げて体を覆い隠す。
「おいおいそんで隠れてるつもりかよ!? あぁ!?」
「もちろん……そんなつもりは毛ほどもねぇよ!!」
――瞬間、辺り一面に走る閃光。
マジックアイテム『刹那の栄光』。
コイツを燃料として補給することで、普段は魔物除けに使っている『暁のカンテラ』が強力な目くらましになる。
俺達は『夜のカーテン』で閃光を防ぎつつ、ゼクセーだけの気をそらして……!
「――甘ぇよ!!」
「ぐ……!!」
『暁のカンテラ』が光を失うと同時に、再び飛びかかってくるゼクセー。
だが……!
「随分と小賢しいまねもしてくれるじゃねえか! なぁイルヴィスさんよぉ!!」
「こっちも必至なもんでね……!! 気を悪くしたってんなら謝るよ、手は止めてやれねぇけどな!!」
「っと! クカカ……いいや、それでこそだ……!! 知力をつくし、死力を尽くし……全力でオレという存在に抗ってみろや!!」
戦闘力を細かく調整し、俺を捕らえようとするゼクセーの攻撃をどうにかこうにかさばいていく。
そのまま数分の攻防の末に壁際に追い込まれ、そして……。
――そして俺は、そこで足を止めた。
「……おいおいどうしたぁ? これで終わりってワケじゃあねぇだろうによぉ?」
「……いいやお前の言う通りだ、これで終わりだよ」
「はっ、つまんねぇ嘘ついてんじゃねぇよ。……それが『もう諦めました』ってヤツのするツラかよ? えぇ?」
再びゆらりと構えをとるゼクセー。
……やれやれ、嘘つき呼ばわりとは心外だぜ? なんせ――。
「――いいや終わったのさゼクセー。勿論……お前の言う通り諦めちゃあいないがな……!」
「……あ? なに、を……?」
――夕暮れの紅い光が俺たちを照らす。
その中においてそれは……ヤツの目にはより一層赤く映ることだろうよ……!
「――〰〰っ!!? て、てめぇ……!!!」
……どうやら気付いたようだな?
第一ラウンドが……俺の勝利で終わったってことに……!!
「どういうことだ……!? てめぇの……てめぇのその頬の傷は――!!?」




