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第27話 これで終わりってワケじゃあねぇだろうによぉ?

FANBOX(https://azitukenori.fanbox.cc/)やってます!

五章ラストまでの毎日投稿を目指して頑張ってますので、『応援してやるぞ!』って思ってくれる方がいらっしゃいましたらフォローだけでもしていただければ一層励みになります!

 オープニングセレモニーも無事に終わり、翌日からつつがなくオークションは開催された。


 流石に大規模なイベントだけあって、豪華な宝石からダンジョンの発掘品まで次々と入札がされていき、それも今日で六日目だ。

 俺たちにとっちゃ明日の最終日、本会場での公開入札が本番だが……。


=========================

「むぅ~! ねぇホントにおっちゃんは観光とか行かないのー? 一日ぐらい(・・・・・)は別にいいと思うんだけど……」


「えと、ハクも……ハクもちょこっとだけそう思います……!」


「前にも言ったろ? 俺は元々こうする(・・・・)つもりだったってよ」


「そ、それは聞いていたけど……や、やっぱりちょっと残念だ……」


「そう残念そうな顔してくれるなって。支障が出ない程度ならガンガン金を使ってきてくれていいからよ、五人で楽しんできてくれって、な?」


「うにゃーん、確かにお金を持ってるってアピールも大事だとは思うけどー……」


「まぁ仕方がないさ、私達でイルヴィスの分も楽しむとしよう」

=========================


 ……オークション初日のそんなやり取りを思い出しながら、夕暮れ時に一人、薄暗く人通りの少ない路地裏のような場所へと足を運ぶ。


 どれだけ賑わっている街でも、こういう場所ってのは必ず存在するモンだ。

 これなら……。



「――チッ! スマートじゃねぇなぁこんな直接的(・・・)なやり方はよぉ……!!」


「! 出てきたか……!」


 薄闇の中、不自然に佇むフードの男。

 黒い肌と白い髪……『ゼクセー』とやらで間違いなさそうだな。


「一応言っとくけどなぁ、オレはこっちでも(・・・・・)いろいろと用意してたんだぜ? それをてめぇ、ずっと引きこもって(・・・・・・)いやがって……」


 やっぱりか。

 『写本』の入手を目前にしたこのタイミング……ヤツが必ず何か(・・)を仕掛けてくるのはわかっていた。


 だからこそ俺は今日まで、『一歩も部屋から出なかった』んだ。

 ……トリア達にはちょっと渋い顔をされちまったがね。


 外部との接触を断ち、余計な波風もたてず……。

 やったことっつったら公開入札への参加のために、一度だけ『写本』に入札したことぐらいか?


 策をまるっとスルーされ、落札までの時間も少ない今……奴に残された手段となれば、パーティ唯一の入札者である俺を直接(・・)なんとかすることぐらいだろう。

 分かるかゼクセー、つまり……!


「しかし呑気に独り歩きとはなぁ? オレがテメェの大事な女どもを使う(・・)とは思わなかったのかよ? 制約(・・)をかいくぐる方法なんざいくらでもある……てめぇとの交渉材料(・・・・)にするにはうってつけだぜ?」


 ……!

 制約……エテリナが見つけた、『人を傷つけることも殺すこともできない』っつう例のアレか……。


「良いのかい? そんなモンがあることをあっさり認めちまってよ」


「はっ! てめぇがこんな手段をとったってことは、今さら隠しても仕方がねぇってことだろうが。……まぁオレたちもわかりやすく雁首並べて反応しちまったしなぁ」


 ……殿サマの別邸でのあの時か。


「だいたいオレは反対だったんぜ? 不確定な情報ってのはそれだけで武器になるってのに……まぁいいか。……んで、どうするよ? 今から女ども人質にして、てめぇに『写本』から手を引かせたっていいんだぜオレは……!!」


 強気な口調で脅しをかけてくるゼクセー。

 だが……。


「無駄なハッタリはよしとけよ、お前らは……いいや少なくともお前はそれ(・・)をしないはずだ」


「おいおいめでてぇなぁ!? 言ったろうが、制約の抜け道なんざいくらでも……」


「いいやしないね。だからこそ……お前は今『スマートじゃない』なんて言いながらも俺の前に立っている、そうだろ?」


「……!」


 そうでなけりゃとっくにそれをしているはずだ。

 ヤツらがその気になれば、それこそ単純な脅しでもなんでもして無理やり誰かを従わせる……なんてこともできるはずだからな。


「……クカカ、そうかい。だとしたら……やっぱりてめぇにゃ力づくで大人しくしててもらうしかねぇなぁ?」


「おっと、言っとくが俺は全力で駄々をこねるぜ? 無傷で捕らえるのは無理だと思うがねぇ?」


「はっ、余裕だよ余裕! ……まぁ気に食わねぇが、アーデムのヤツに仕込ませた『相手をただ眠らせるアイテム』なんてモンあるからよ、睡眠導入剤(・・・・・)はよりどりみどりってヤツだ……!」


 ……!

 アーデム……恐らくケインに首輪に関わっていた、『アイテム干渉』の力を持つフリゲイトか……!


「もちろんてめぇの『バッドステータス無効』のことは知ってるぜ? 特に……こういった状況じゃあ長くは持たねぇこともなぁ!!」


 瞬間、瞬く間に距離を詰めてきたゼクセーが、ポケットに手を入れたまま俺の足元を踏みつける。

 すると……!


 ――ぐにゃん。


「……な!?」


 まるでスライムのように、グニャグニャとうねっていく地面。

 まずい……! 完全に足をとられちまう前に離れて……!


「おらどうしたぁ!! てめぇの思惑通り釣られて(・・・・)やったんだ! タイクツなんざさせてくれるんじゃねぇぞ!!」


「……っ! はっ、まぁ努力はしてみるさ!!」


 ナイフを抜き、戦闘態勢をとる。

 『制約』とやらがある以上、ヤツは俺を直接攻撃できない……!

 となりゃあ断然、こっちに有利なはずだが――。


=========================

『――勇者級程度の力で、俺を抜けると思わない方がいい……!』

=========================


 ――いつかのジョーダインの言葉が頭をよぎる。

 そいつを振り払うようにゼクセーと距離をとろうとするが……。


 ……ぶにょん。


「は……!?」


 今度は唐突にあらわれた柔らかいなにか(・・・)に、それを遮られた。


 結界……!? いや違うこれは……空気の壁(・・・・)か!?

 さっきの地面といいこいつは――!!


=========================

「――デッシーたちの『ピンクルスキャッター』もあのロープドインキュバスの能力も……ちょっと普通じゃない(・・・・・・)挙動をしてたんだよねー? 状態異常を伝播でんぱさせたり、魅了の対象をオジサンにしたり……」


「だとしたらやっぱ『魔術干渉』とか……あーでも、マジューリカさんはもう力を使えないんじゃないかって話だったよな?」


「うにゃーん、マジュりんの話を抜きにしても、効果を延長する『魔術干渉』とはちょっと違う気がするってカンジ? ……まるで『性質』自体を『別の性質』で上書きするような力、アレは恐らく――」

=========================


「――『属性干渉』か!!」


「さぁて、どうだろうなぁ!!」


 ゼクセーがポケットから小さなマッチを投げ捨てると、石畳の継ぎ目にそって足元に炎が吹き上がる。


 が……その炎は熱くもないし、なんなら火傷すらすることはねぇ……!

 ただ炎特有のゆらめきと接着剤(・・・)のような粘着性を持って、確実に足をからめとってくるだけで……。


 炎だけじゃない……今この瞬間、床も、壁も、空気さえも……!

 すべてが奴の手足となって、俺の敵となってやがる……!


 ――これが『属性干渉』……!!



 ……いや、いくらなんでも反則すぎだろ!?

 これがフリゲイトの……『大陸の楔』の力かよ……!!


 ヤツが狙ってるのは戦闘力解放(ステータスオープン)の時間切れによる『バッドステータス無効』の無力化で間違いない……!

 その為に少しでも、俺に力を使わせようってワケだ……!


 俺は瞬時に背中の一坪(リビングパック)から『夜のカーテン』を取り出すと、大きく広げて体を覆い隠す。


「おいおいそんで隠れてるつもりかよ!? あぁ!?」


「もちろん……そんなつもりは毛ほどもねぇよ!!」


 ――瞬間、辺り一面に走る閃光。


 マジックアイテム『刹那の栄光(ラッシュフラッシュ)』。

 コイツを燃料として補給することで、普段は魔物(モンスター)除けに使っている『暁のカンテラ』が強力な目くらましになる。


 俺達は『夜のカーテン』で閃光を防ぎつつ、ゼクセーだけの気をそらして……!


「――甘ぇよ!!」


「ぐ……!!」


 『暁のカンテラ』が光を失うと同時に、再び飛びかかってくるゼクセー。

 だが……!


「随分と小賢しいまねもしてくれるじゃねえか! なぁイルヴィスさんよぉ!!」


「こっちも必至なもんでね……!! 気を悪くしたってんなら謝るよ、手は止めてやれねぇけどな!!」


「っと! クカカ……いいや、それでこそだ……!! 知力をつくし、死力を尽くし……全力でオレという存在に抗ってみろや!!」


 戦闘力ステータスを細かく調整し、俺を捕らえようとするゼクセーの攻撃をどうにかこうにかさばいていく。

 そのまま数分の攻防の末に壁際に追い込まれ、そして……。


 ――そして俺は、そこで足を止めた。



「……おいおいどうしたぁ? これで終わりってワケじゃあねぇだろうによぉ?」


「……いいやお前の言う通りだ、これで終わりだよ」


「はっ、つまんねぇ嘘ついてんじゃねぇよ。……それが『もう諦めました』ってヤツのするツラかよ? えぇ?」


 再びゆらりと構えをとるゼクセー。

 ……やれやれ、嘘つき呼ばわりとは心外だぜ? なんせ――。


「――いいや終わったのさゼクセー。勿論……お前の言う通り諦めちゃあいないがな……!」


「……あ? なに、を……?」


 ――夕暮れの紅い光が俺たちを照らす。

 その中においてそれ(・・)は……ヤツの目にはより一層赤く映ることだろうよ……!


「――〰〰っ!!? て、てめぇ……!!!」


 ……どうやら気付いたようだな?

 第一ラウンドが……俺の勝利で終わった(・・・・・・・・・)ってことに……!!




「どういうことだ……!? てめぇの……てめぇのその頬の傷(・・・)は――!!?」

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