第26話 どのツラさげてこういうこと言ってんの?
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現在風邪をひいた上にまさかのぎっくり腰まで再発しているあじつけのりに同情をしてくれる方がいらっしゃいましたら、フォローだけでもしていただければすごく嬉しいです……!
「――それでは必要なお手続きは以上となりますが……入札者のご登録はイルヴィス様ご本人のみでお間違いはございませんか? ご不在の場合でもお連れ様からの入札は受け付けられなくなってしまいますが……」
「あぁ大丈夫、それで頼みます」
「かしこまりました。それではお部屋の方へご案内させていただきます」
受付でのチェックインを済ませ、部屋へと案内される俺達六人。
扉を開けるとそこは……!
「「「おおおおぉ~っ!」」」
「お部屋ひっろーい!! シャンデリアまでついてる!!」
「内装も豪華で……それでいて嫌味の無いよう考えられているのがよく分かるな……」
「シャワールームちょーすごい!! おっきなお風呂もあるよ!!」
「こ、こっちにはサウナルームまでついてるぞ……」
「これならみーんなでは入れますね! もちろんおじさまも一緒に……ふふ……!」
「ベッドもフカフカで! まるで雲みたい!!」
「にゃふふ! 体に負担がかからないようにフィットして……どうやらこれもお高い魔導器具のようですなー?」
「――……あびゃぁ、なんて素敵なお部屋なのかしら……ボクもう一生ここに住む……」
「とろけきった顔しやがって……。気持ちは分かるが無茶言うんじゃないよ」
「ひ、一部屋一泊で120万ぐらいだっけ……? い、一日でスライムまんじゅうDXが千箱は買えてしまう計算になる……すごい……」
いや逆にわかりにくいだろそれ……。
もうちょい別の良い例えが……えDX? また新しいのでてんのアレ?
商品開発に余念がないねぇ……。
「しかし六人部屋として考えても少々気後れしてしまうな……私の実家も広いには広いが、また趣が違うと言うか……」
「だよなぁ、それでもまだ上があるってのが恐ろしい話だぜホント」
「あ! ほらほらおじさま、バルコニーからは街を見下ろせますよ! きっと夜景もきれいなんだろうなぁ……!」
「にゃふふ……! ロマンチックに夜景を楽しんだそのあとは、オトナなフンイキでベッドへと押し倒されて……にゃーん! ウチはもう少しシゲキ的でもいいんだけどなー?」
「べ、ベッドに……!!? だ、だめだおっちゃん……! み、みんなが見てる中でなんてそんな……!」
「わ、私もその、い、嫌というわけでは無いんだが……最初はもう少し普通に……」
「そ、そうだよまったく……! おっちゃんのえっち! せっそーなし!!」
……いやおっさんなーんも言ってないよ?
なーんも言ってないのにこうなるならもう手の施しようもないんだわホントに。
――クインクリフ連合王国。
シルヴァーネと同じエウラファ大陸に属する一国で、俺たちは今その首都である『ロンディベル』へとやってきていた。
その目的は言わずもがな……。
「まず前提としてだが……オークションは明日から一週間。その内の六日間はほれ、各部屋や施設に備え付けてあるそこの魔導器具から、いつでも好きなときに入札できるんだそうだ」
「へぇ~、便利なんだねぇ」
「で、期日までに一番高い値段をつけた奴が落札ってのが基本なんだが……『写本』なんかの目玉になってるの出品物については、そこからさらに本会場での公開入札が行われるらしい」
「あ! さっきも見たおっきな建物のことですね!」
「あぁそうだな? 他にもいろいろと書かれちゃいるが……要するに最終的に、その本会場で『写本』に一番高い値段を提示すりゃいいってワケだ」
……そう、オルハリコンと引き換えに手に入れたあの13億を使って……な。
……
…………
……………………
「――つきましてはささやかではございますが、お食事をご用意させていただきました。ぜひお召し上がりながら、ご交流をお楽しみいただければ幸いで……」
その日の夜。
慣れない服に袖を通した俺たちは、とあるパーティ会場へとやってきていた。
まさかオープニングセレモニーとやらに招待されるとはなぁ……。
最近の知名度とヴァレリアスの紹介状のおかげかね?
「えへへ、おじさまとっても素敵です……!」
「そうかい? そういうハクもお姫様みたいだぞ? もう立派なレディだなぁ」
「そんなぁ……!! えへへへへ……!」
「あ! ねーおっちゃんボクは! ボークーはー!?」
「にゃふー、ウチもウチもー!!」
「あーもう引っ張んな引っ張んな。お前らもちゃんと似合ってるよ、目移りして困っちまうぐらいだ」
「にへー! まぁねー?」
ったく……まぁ実際ひいき目抜きに見てもうちの子たちは美人さんぞろいだからな、こういった格好も映えるってもんだ。
あとはもう少し中身がついて来れば言うことはねぇんだが……。
「ねぇおじさま、これとってもおいしいですよ!」
「お、そうかい? ……っと、んじゃあハク食べさせてくれるか? ちょっと両手が塞がっててよ?」
「わぁ……! もちろんです! はいおじさま、あーんしてくださいね?」
「あーん……ん、うまいうまい」
ハクから一口、あーんして料理を食べさせてもらう。
すると……。
――カシャン!
……お、やっぱりいたな。
変装魔法で顔を変えちゃいるが、あの狼狽え方から見ておそらくサーベイジュ達で間違いないだろう。
しかしついてくるにしても急な話だったろうに、しっかりとこのパーティにも出席できてるあたり、やっぱりシャグヤス家ってのは名が知れて……。
「――あ、イルヴィスさん!」
……げ。
背後から俺を呼ぶ……どちらかと言えばよくない方の意味で聞き覚えのある声。
げんなりしながら顔を向けてみれば……。
「やはりイルヴィスさんもこちらに来てたんですね!」
思った通り、シズレッタたちをナンパしてたアイツかよ……。
そういや良いとこのボンボンだったな……。
確か名前はディーンっつったか? エータの兄貴らしいが……。
……ん? つーことはエータのヤツも良いとこの坊ちゃんだったのかよ。
分かんねぇもんだなぁ……。
「へぇ~、ディーンホントにイルヴィスさんと知り合いだったんだ~?」
「だから言ったろ? 見ましたよイルヴィスさん、ミヤビではまた活躍したみたいで……俺も友人として鼻が高いですよ!」
……コイツ、マジでどのツラさげてこういうこと言ってんの?
新聞じゃあさんざん人のことをこき下ろしてくれてたってのによ……。
「実は新聞の件も謝ろうと思っていたんです……。あんな悪意のある切り取り方をされて……くっ! そうだお詫びって言うとあれですけど、今度一緒に飲みに行きません? 女の子たちも連れてきますよ!」
「あー、私たちもお話聞きたいでーす!」
「というかディーン、イルヴィスさんも俺たちの『同盟』に誘ってみたらどうだ?」
「確かに……イルヴィスさんほどの人なら、きっと俺たちの理念も理解を示してくれるはずだしな!」
……同盟だぁ?
後ろにいるのはディーンのお友達みたいだが、またややこしいことに巻き込まれそうな……。
「イルヴィスさん達もここへは『写本』を目的としてきたんでしょう? もし『写本』が『原本』の手がかりになるのだとしたら……それを独占してしまうのは世界のためにならないとは思いませんか?」
「世界のためねぇ……」
「『不落の難題』を解き明かすかもしれない貴重な手がかり……であればこそ、その内容は広く共有するべきなんです!」
「共有……つーとあれかい? 例えばお前たちが『写本』を落札した暁にゃ、中身をそっくり世間に公開するつもりで……」
「いえ、そうしたいのは山々なんですが……やはり本気度というか熱量は大切だと思うんです! 冷やかしや、利己的にそれを利用しようとする人たちもいると思うので……」
「そこで俺たちの『同盟』です! 熱意を計るために会費は安くないですが、その価値があると分かる人だけを集めて……いずれは『写本』だけじゃくて、他の『不落の難題』にも挑む予定なんですよ!」
……相変わらずべらべらと舌のまわるこった。
というかコイツ、過去の俺にどんな態度とったとか覚えてねぇのか?
まぁ別に、今さらそれをどうこういうつもりもねぇが……。
……少なくともエータ達は自分たちのやらかしたことに対し、自分達でちゃんと尻拭いをしようとしていた。
ビィトもシグも『エータはヘンにマジメだからー』なんて言っちゃいるが、しっかりそれに付き合うあたり根っこは似たようなモンだと思うがね。
ま、もうちょっと落ち着いてくれても良いとは思うが。
それに比べるとコイツの言葉は……。
「あー……悪ぃけど遠慮しとくよ。俺はほれ、お前たちみたいに出来た人間じゃあねぇからよ」
「え!? で、でも……!」
「前にも言ったが、俺は優先するべきモンがあるならそっちを選ぶ人間なのさ。そいつがたとえ世界のためじゃなくても……な。……んじゃ、お互い頑張ろうぜ」
まぁ『写本』を譲ってやるつもりはさらさらないが、別にコイツらのやってること自体を否定するつもりは無い。
ただ俺はそのやり方についていこうとは思わんってだけだ。
個人的な感情としてはもうちょっと嫌味でも言ってやりたいところだが……。
ここは突っぱねるだけでガマンしておくか。
「……あーあ、断られちゃったじゃん」
「まぁどれだけ強くても物の価値が分からない人ってのはいるもんだしな」
「いやいや仕方がないって、今はまだ急な話だったし……。……そうさ、どうせいつかはあの人も俺の――」




