第22話 頭に浮かぶのは
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「……!! シャグヤス……!? それじゃあハクの……!!」
「――えぇ、父親です」
――サーベイジュ・シャグヤス……!
そうかどこかで見たことがあると思ったが……前に新聞かなんかで顔を拝んだ記憶がある……!
そりゃあ変装魔法なんて高価なモンをポンポン使えるわけだ。
つっても、これはいくら何でも不意打ちすぎだとは思うがね……!
となると……オルハリコンのことを知ってたのも、恐らくハクからじいやさん経由でってところか。
この際だ、出どころがはっきりしたってのは悪い事じゃあないんだが……。
……今まで、それこそハクが正式に冒険者になるより前からずっと、何の反応も見せていなかったシャグヤス家。
それがなぜ今になって接触してきたのか……。
少なくとも、ただオルハリコンを買い取ってもらってはい終わり……ってワケにはいかなさそうだねホント……!
「驚かせてしまいましたかね? このような形で初顔合わせをすることになってしまって……」
「いやまぁ正直かなり。あーっと……すんませんね、こないだはハクに学校を休ませちまって……」
とりあえず、比較的当たり障りのない会話から切り出していく。
オルハリコンの採取では、出入りの際の手続きが必須だったからな。
『ジンドラクラックにいる筈のハクが何故か学校にいた』……なんて事態が起こらないよう、4~5日程学校を休ませることになっちまった。
一応学校の近くにゲートも作っておいたんだが……アカバンの連中のせいでチェックなんかが厳しくなりそうだったからなぁ。
まぁハクが変に疑われちまうのを避けてやれたのはよかっただろう。
そう考えると初日で奴らと遭遇したのは不幸中の幸いだったか?
まぁ、オルハリコンの換金にまで支障が出たのは完全に誤算だったが。
……シャグヤス家がハクのことを良く思っていないのは俺も知っている。
だとすれば何を目的として……。
「いえいえそんな。むしろこちらこそいつもハクがお世話になっていて……そう、ハクが……ハクが……」
……ん?
なんだ? なんだかサーベイジュの様子が……。
「ハクが……お世話に……おせわ……オセワ……! ……うおおぉぉぉおっ!!!! 何が……っ!! 何がお世話になっているだあぁぁあっ!!」
「うえええぇぇええぇええぇ!!!!??」
は!? おいなんだよコレ!?
今までの紳士的な態度からは考えられんほどにいきなり叫び出して……!
「ちょ、親父サン!?」
「ふぅううぅうう……! 貴様聞いているぞぉ……!! ハクに……ハクに膝枕をしてもらったことがあるそうじゃあないか……!! 私とて……私とてそんなことは一度もないと言うのにぃぃいっ!!」
「えぇ……? あ、いや、それはなんつーか……」
いやマジでどんな豹変ぶりだよ!!
別人と入れ替わったっつわれても今なら信じるぞ!? なぁ!?
「それだけじゃあない……! 貴様、ハクの……ハクのはじめての手作りクッキーも……! あああぁぁあぁあぁ!! 許さん! 許さんぞ! 断じて――!!」
「――おやめくださいお父様!!」
「おぶっ!!」
今にも飛びかかってきそうなサーベイジュの頭を、颯爽と部屋に入ってきた一人の女性がスパーンと軽快な音を響かせて叩き落とす。
……いやいやまってくれ。
展開に頭が追いつかんってホント……。
「は!? ぐ、グレーナ……!」
「まったくもう、やっぱり急いで駆けつけて正解だったわね。それにしてもハリセンっていったかしら? いいわねこれ、お父様をシバくのにはもってこいって感じで」
煌びやかに装飾の施されたハリセンを手に、父親の頭を叩いたその人物。
この娘さんは確か……。
「ハクのお姉さん……だったか?」
「ええ、グレーナ・シャグヤスと申します……ってあら? 申し訳ございません、どこかでお会いしたことが……?」
「ああいや、屋敷の前でちょっとアレしたっつーか……」
「屋敷の前……あ! ひょっとしてあの時……そ、それはお恥ずかしい姿をお見せしてしまいましたわ、ほほほ……!」
いやお恥ずかしいってんなら今もまさにそんな感じだとは思うが。
というか、あの時の印象とはまるで違って……。
「そ、そうだ思いだしたぞ……! ずるいじゃないかグレーナ! 一人だけあんな風にハクとおしゃべりして……!! 父さんも! 父さんもハクとおしゃべりしたかったのに!!」
「はぁ、いつまでも過ぎたことをグジグジと……そもそも役得ばかりではなかったと言ってるでしょ! これまでのことが無駄にならないよう、冷たい態度でハクを突き放して……お父様にそれが出来たのかしら!?」
「うぐぐ……! だ、だったら花を受け取るぐらい使用人に任せればよかったじゃないか!! それなのに直接……」
「それなら言わせてもらいますけど! お父様こそちょーっと風邪をひいたぐらいでわざわざじいやに大げさに騒ぎ立てて……大方、ハクに心配をしてほしかっただけだったんでしょ!? しかも……」
「ふふふ……! あの時のフラモネの花はぜーんぶプリザーブドフラワーにして大切に飾ってあるぞ……! あ、一輪だけは違うか、こうして栞にしていつも持ち歩いているのだからなぁ?」
「ぐぬぬ、これ見よがしに……」
……いやなにこれ?
想像してた家族像とは180度違ってて、おっさんもう何が何だか……。
「はぁ、まぁいいわ。それでお兄様は……」
「俺もここに居るよ、ちょうど今しがた着いたところだ」
一息ついたところで、扉から姿を現す一人の好青年。
お兄様っつーことは、コイツもハクの……。
「初めましてイルヴィスさん、私はハクの兄のアッシュ・シャグヤスと申します」
にこやかな笑顔とともに握手を求めるアッシュ。
良かった、どうやらこっちはまともなようで……ん?
「……なるほどこの手……!! この手が……この手がハクをたぶらかした男の……!」
……おいコイツもかよ!!
ホントにどうなってんだよシャグヤス家!!
「この手がハクに……!! 俺たちの大切なハクにあんなことやこんなことを……!!」
「いやいやしてねーよ! あんなこともこんなことも!」
「いいや信じられるものか……! そんなことを言って実際は……ほっぺにちゅーぐらいはしたんじゃ無いのか!!? どうなんだ!?」
「だからしてねぇっつの! やましいことなんざ何一つしちゃいねぇって……!」
「……そうか、なるほど。そうか……何一つ、か……」
良かった……。
どうやら納得してもらえたようで……。
「――んなぜだああぁぁあ!!??」
「うええぇええぇ!!?」
いやもうそれは完全にこっちのセリフなんだよ!!
なんでまたブチ切れてんだ!?
「非常に……! 非常に不本意だが、貴様の話は聞いている……! ハクが貴様に少なからず好意的な感情を抱いているのもだ……! そんなハクの純粋で可愛らしい気持ちに応えないとは……貴様一体どういう了見なのだあぁあ!!」
「そうだそうだ! もっと言ってやれアッシュ!!」
えぇ……?
もうこれなに言ってもめんどくさいヤツじゃねぇか……。
「あー……いやほれ、歳の差とか……な? いろいろあるだろそういうの?」
「歳の差だとぉ……!? そんなもの、ハクの愛らしさと健気さの前には問題にすらならん! 法とハクのどちらを優先すべきかなど悩むべきも――!!」
「――おやめくださいお兄様!」
「おぶ!!」
再び振り下ろされるグレーナのハリセン。
さっきも似たようなのを見たその光景に、やっぱり親子なんだなぁとかどうでもいいことを思ったりした。
……
…………
……………………
「ほら二人ともちゃんと謝る! でないとじいやに言いつけて、二度とハクの近況を報告させないようにするわよ!」
「わ、分かってるよグレーナ……。すみませんでしたイルヴィスさん、歳の離れた妹なせいか、どうにもハクのこととなると熱くなってしまって……」
「ほら、お父様も!」
「すまなかった……じゃない、すみませんでしたイルヴィスさん。私もハクのこととなるとどうにも……あ! もちろんハクだけじゃなく、グレーナもアッシュも父さん同じように大切に思っているよ!」
「はいはい、今そういうの良いですから」
……なんとなく、シャグヤス家におけるパワーバランスが垣間見えるな。
「いやまぁ実害も無かったし、俺としちゃあ別に……」
――と、そこまで言いかけて、出かかっていたその言葉を飲み降す。
そうだ、確かに俺には実害はなかった、だが……。
頭に浮かぶのは、健気に微笑むハクの笑顔と――。
「……お考えになっていることは分かります。そこに憤りを感じていただけていることも。……まずはその辺りのお話からさせていただこうかとは思いますが……ひとまずお料理をいただくことにいたしませんか?」
俺の考えを察した様子でそう提案するグレーナ。
確かに少し冷静になる必要があるか……。
……そうだ、冷静に見極める必要がある。
本当に愛されているというのであればなぜ、ハクは今の境遇にさらされなければならなかったのか……。
その理由と、そして――。
ハク関係のこのシーンは連載前から構想してたんだけど、ってことはもう三年も前なん……?
嘘やろ……。




