番外編 ワールズレコード036:エンカウント
このお話は《第五章十六話》から《第五章十七話》の間ぐらいのできごとです
また、内容を補足する程度の挿絵が含まれますので、
苦手な方はお手数ですが、右上の表示調整から設定をお願いします
――ジンドラクラック第四十二~四十三階層。
「おー、ここまで降りてきてもやっぱり底は見えないんだねぇ」
相変わらずの好奇心で崖の底を覗き込むトリア。
こういう時の行動原理が完全に子供のそれと変わらんってのがなぁホント……。
「おいトリア、何度も言うが……」
「だいじょーぶだいじょーぶ! だってほら、今はコレもあるしね!」
マジックアイテム『見守る追跡者』
こういった悪路なんかを進むとき、万が一にも落下しちまわないように補助してくれるっつう、まさに命綱の様なマジックアイテムだ。
起動させれば自動的に持ち主を追尾し、魔法の鎖で落下を防いでくれる。
やっぱりネルネは少しきつそうだったからな。少しでも安心でるようにと、あの後メイドさんに頼んで人数分を用意しておいた。
「でもさぁ、ぴゅーんて上手にとんでけば簡単に下の階層に行けそうじゃないこれ? ほら、あそこの道とか……」
「ひ、ひぃぃ……! と、トリア……こ、こ、怖いことを言わないでくれぇ……!」
「大丈夫だってやんねぇからな? つか、それができねぇのがダンジョンの不思議なところなんだよなぁ……っと、そろそろ日も暮れる頃か。もう少し進んだら今日はもう終わりにするぞー?」
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ワールズレコード036:エンカウント
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「そ、そういえば……なんでおっちゃんはあの人たちが、あ、アカバンだってわかったんだ……?」
夢幻の箱庭にもどり夕食のスペアリブにかじりついていると、ふとネルネがそんな疑問を投げかけてきた。
「あーあれな、まぁ半分はあてずっぽうみたいなもんだったんだが……アイツら俺たちの、つーか俺のことを知らなかったみたいだろ? まともに新聞なんかも読めてねぇんじゃないかと思ってな」
不本意にも結構有名になっちまったからなぁ。
実際、入り口前で並んでる間にもヒソヒソと聞こえてきたしよ。
以前シーレ達とも話題にしていたが、アカバンの連中は町に入ることができんからな。町に張られた『結界』の中に一歩でも足を踏み入れればもう、衛兵たちがすっ飛んでくる。
「新聞と言えば……一、二週間ほど前にも記事になっていたな。リバントンミュージアムの魔王級、『ノスタルシア』が討伐された、と」
「にゃふにゃふ、リバントンミュージアムっていうと、あの時の『アカシックピクチャー』のネームドだねー?」
メイドさんとの顔合わせでも思ったが、あれからもう二ヶ月か。
歳をとると時間が経つのが早く感じるねぇホント。
「むぐむぐ……ごくん。そういえばあの時もそうだったけど、なんでギルドは『ここに『魔王級』がいるぞ』って知ってるんだろうね? 階層図とかにもちゃんと書いてあるし……」
「なんでってお前……あぁほれ、また思いっきりほっぺにソースついてんじゃねぇかまったく……」
「むぎゅ……ぷは、だって魔王級の魔物と遭遇したら逃げられないわけでしょ? だったら情報を持ち帰る前にみんなやられちゃうじゃん!」
「たしかにそうです……! トリアさんすごいですね! ハクは全然気づきませんでした!」
「えへへ、でしょー? ボクってばやっぱり……あれ!? なんでおっちゃんはそんな冷たい目してるの!?」
「お前ねぇ……」
……まぁいいか、どのみちハクには一度教えとかねぇととは思ってたしな。
「まず前提としてだがトリア、魔物との遭遇方法が二種類あるのは知ってるな?」
「えっと……あ! 『シンボルエンカウント』と『ランダムエンカウント』だよね!」
「『シンボル』と『ランダム』……ですか?」
「あぁ、『シンボルエンカウント』ってのは……そうだな、まぁダンジョンのギミックの一部みたいなもんで、出現する場所がある程度決まってる魔物と遭遇することを言うんだ」
「『第○○階層のどこどこに出現するぞー』ってカンジでねー?」
「しゅ、周囲に比べてランクが高めだったり、え、エリアボスになってたりすることも多いんだけど……い、一番の特徴は『討伐しても定期的に同じ個体が復活する』ってところかな……」
ネルネの説明した通り、普通は数年単位、早いヤツだと数ヶ月どころか数日で再出現するような厄介なヤツもいる。
……まぁさらに狂気じみてんのは、冒険者の中にはレベリングやドロップアイテムのために同じ個体を執拗に狩り続けるやつがいるってことなんだよなぁ。
どっちの方が怖ぇのか、おっさんちょっと分からなくなるよホント……。
「そして『ランダムエンカウント』というのは、魔素から偶発的に生まれた魔物と遭遇することを指すのだ。ダンジョンで出現する魔物の大半は、こちらに分類されると考えてよいだろう」
「偶発的? えっと……」
「分かりやすく言えばほれ、ダンジョンのあちこちで遭遇するようなヤツらのことだよ。こっちは『シンボル』のヤツらと違って討伐しても復活しないだろ?」
「で、でもさ、ゾンビとかのこわい魔物の中には倒しても起き上がってくるのとかもいるけど……」
「にゃふふ! あれは厳密に言えば完全に討伐できていないか、そもそも別個体だったりするんだよねー? ちなみにちなみに、それぞれ『シンボル魔物』とか『ランダム魔物』とかよんだりもするんだよー?」
「『シンボル魔物』と『ランダム魔物』……はい! ハクちゃんと覚えました!」
「うんうん、ハクちーはやっぱり飲み込みが早いねー?」
「えへへ……!」
ハクの頭をくしくしと撫でるエテリナ。
最近ハクはエテリナにも勉強を教えてもらってるみたいだからな。あれで結構ちゃんと先生をしてるのかもしれんね。
「で、さっきのトリアの疑問だが……『シンボル魔物』の魔王級、それも過去に討伐されたことがあるってヤツなら話は早い。あとは情報の共有でどうとでもなるからな」
実際、階層図なんかにもそういった情報は記してある。
「問題は『ランダム魔物』と、未知のダンジョンで出現する『シンボル魔物』の中に『魔王級』が出現した場合だ。あんまり気分の良い話じゃねぇんだが……」
「ほ、ほら……わ、わたしたちもまったく見ないわけじゃないだろ……? ほ、他の冒険者の遺留品とか、い、遺骨だったりとか……」
「あー……」
「ま、それらが大量に残ってるってことは、それだけその場所で冒険者がやられちまってるってことだからな」
「んでんでそうなるとー、『強力な魔物がいるぞー!』ってことで討伐クエストが発注されるでしょー? もちろん周辺の魔物より高クラスの冒険者が向かうことにはなるんだろうけど……」
「先程トリアも言っていた通り、相手が魔王級の魔物となれば並の冒険者では返り討ちにあってしまうからな。必然的に、クエストは未達成となってしまう」
「で、そいつが続けば続くほどその魔物に対する警戒度が上がっていくだろ? それがある一定のラインを越えた時……」
「『ネームド』として名前をつけられる……っていうことですね!」
大正解。
まぁ正確にはその後、地図士なんかが魔素の痕跡を調べたりそいつをギルドへ登録したりといろいろと手順を踏むんだが……その辺は省いといてもいいだろう。
「なるほどなー……あれ? でもみんなよくそんなこと知ってたね? ボクぜんぜん知らなかったんだけど……ちょ!? おっちゃんやめてよその目するの!」
トリアのその一言に、俺は再び冷たい視線をぶつけてやる。
「と、トリア今の話はな……? ぜ、全部戦闘系の第二学校で、ちゃ、ちゃんと習う話なんだぞ……?」
「にゃふふそうそう~! まぁウチ自身は第二学校行ってないんだけどねー?」
「えぇ!? だってボク習ってないよ!? ……は!? まさか先生が授業をサボって……?」
なワケあるかい。
どうせ授業中に居眠りでもしてたんだろうがまったくよ……。
番外編を週一投稿と言っておきながらちょっとずつ遅くなってしまい、大変申し訳ないです……!
その辺りにも少し関係しているのですがpixivFAN BOXなる物を始めてみました!
https://azitukenori.fanbox.cc/
詳しいことは活動報告に長々と書き連ねさせていただきましたので、
もし余裕のある方がいらっしゃいましたらご支援をいただければありがたいです……!
何卒何卒、よろしくお願いいたします……!




