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番外編 ワールズレコード034:状態異常

このお話は《五章第10話》後半の少し前ぐらいのできごとです

また、内容を補足する程度の挿絵が含まれますので、

苦手な方はお手数ですが、右上の表示調整から設定をお願いします

 日曜日。

 朝からトリア達をダンジョンへ送り出した俺は、空いた時間で『夢幻の箱庭』を拠点にするための準備を進めていた。


 ……ん?

 あそこのベンチで座ってんのは……。


「うぅ、ひもじいデシねぇ……。マズい上にあんまり日持ちしないけど、安くて栄養価はバツグンだというこの謎の携帯食料のおかげでなんとかしのげてはいるデシが……」


「あ! ヤンスゥずるいでゴンスよ! ヤンスゥの分の豆パンの方が両方とも少し大きいでゴンス!」


「な!? ミーは二つでユーは三つ! 少しくらい大きさが違うからって細かいことを言うのはよすでヤンスよ!」


「こらー! 二人ともそんなことで喧嘩をするのはやめるデシ! ……ほら、アッチの豆パンも分けてやるデシから」


「な、何を言ってるんでヤンスかデシレさま! フェアリーの体の大きさに対する燃費の悪さは他種族と比べても随一……一日にヒュームの三分の一は栄養が必要になるんでヤンしょ!?」


「そ、そうでゴンス! オイ達もうケンカはしねぇから、マズい携帯食料だけじゃなくてちゃんと豆パンも食べてほしいでゴンス……」


 …………。

 ……はぁ。ま、仕方ねぇか。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード034:状態異常

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――うわああぁぁあん!! おいしいデシ!! おいしいデシぃぃ~っ!!」


「うぅ……!! こんなちゃんとした食事をしたのは久しぶりでヤンス……!!」


「ムグムグ……!! ご、五臓六腑に染みわたるでゴンス……!!」


 三人組を部屋に連れてきて、トマトリゾットを使ったチーズドリアとコカトリスのスープを振るまってやる。


 コカトリスは鳥肉の旨味と蛇肉の滋養を兼ね備えたハイブリッド食材だ。

 消化にいいミヤビ米のリゾットと併せて、胃に負担がかかりすぎるってこともねぇだろう。


「しかしよぉ、町で暴れた罰金と修繕費を払ってるってのはまぁわかるが……それにしたってお前ら、なんでそんなに金ないんだよ……」


「んむんむ……こくんっ。……っぷは! アッチらは普段、別の町(イルシュドゥーレ)を拠点にしてるんデシよ。それでおじさんを追っかけてアンリアットまで来たんデシけど……」


「コッチへ着いてすぐ、たまたま飛行船に乗り込むイルヴィスのダンナ達を見かけのでヤンス。ので、我々も有り金はたいて(・・・・・・・)その飛行船に乗り込んだのでヤンスよねぇ……」


「グフフ、善は急げというでゴンスからね! 足りない分は借金までしたんでゴンスよ!」


 えぇ……?

 俺が言うのもなんだが、もうちょい後先考えるとかさぁ……。


「ちなみに一応聞いとくが……あの『ピンクルスキャッター』とかいうスキル、あれからは使ってねぇんだろうな?」


「むぅ、ちゃんと約束は守ってるデシよぅ! ふぅ~まったく、おじさんもずいぶん用心深いんデシねぇ~?」


 ほっぺたに米粒をつけたまま、やれやれといったポーズで首を振るデシレ。


「いやそりゃ用心深くもなるっつの。スキルひとつであんな偶然を引き起こしやがって……」


「おやダンナ、正確には『偶然を引き起こしてる』わけじゃあないでヤンスよ? そんな大それたこと、それこそ高位のマジックアイテムや契約魔法レベルでもなければで不可能ヤンスからねぇ」


「そもそもアッチは『ウインドスカージ』以外には『状態異常系』の魔法しか使えないし、ヤンスゥも強化(バフ)スキル以外はからっきしデシ!」


「オイも『ピンクルスキャッター』の発射台になるだけで、他のスキルは使えないでゴンスよ!」


「そうなのか? しかし実際に……」


「ふーむ、そうデシねぇ……まぁおいしいごはんもごちそうになったし、特別におじさんに状態異常系スキルの素晴らしさを語ってやるとするデシ!」


 状態異常系?

 それと『ピンクルスキャッター』に何の関係が……。



「状態異常は大きく分けて三つ……身体(・・)に作用する『反応系』と、精神(・・)に作用する『衝動系』、それとマナ(・・)に作用する『変質系』に分けられる……っていうのは知ってるデシよね?」


挿絵(By みてみん)


「そりゃまぁ知ってはいるが……例えば『反応系』だと、体内に有害物質を発生させる『毒』や神経を狂わせる『麻痺』、あとは……平衡感覚や判断能力をおかしくする『幻覚』や『混乱』とかか?」


 特におっさん、『毒』には文字通り死ぬほど苦い思い出があるからな……。


「対して『衝動系』は感情の振れ幅を増幅させるものでヤンスね。好意ならば『魅了』、怒りならば『狂化』、特殊なところでは、声を出すことができなくなってしまう『沈黙』や眠気を誘う『睡眠』なんてものもあるでヤンス」


「『変質系』は体内のマナを一時的に別の性質にしてしまうのでゴンス! 体が石のようになってしまう『石化』や、氷におおわれてしまう『凍結』なんかが有名でゴンスな!」


挿絵(By みてみん)


 ま、そのへんは冒険者をやってりゃ基本中の基本といってもいい。


 ちなみに、ちょっとした風邪だとしても状態異常と違ってスキルやアイテムで治せないことがあるのは、一時的に弱い『定着』が起きてるからだ、なんて話も聞いたことがあるな。


「うんうん、基本はしっかりと出来てるデシね。そして……実は『ピンクルスキャッター』は、それらの状態異常を組み合わせて(・・・・・・)作られているんデシ!」


「もちろんあくまで効果は薄~くでヤンスよ? デシレさまの隠ぺい系の術式を組んでるとはいえ、やりすぎて気付かれてしまっては意味がないでヤンスからね」


「ここぞという時のみ、瞬間的(・・・)に大きく効果を発揮させるでゴンス!」


「瞬間的に?」


「その通りデシ! 『幻覚』で平衡感覚を奪い、『混乱』や『睡眠』で判断能力を鈍らせ、『麻痺』や『石化』で関節の動きを制限してやれば……何をしてもちょっと噛み合わない(・・・・・・)『究極のドジッ子』が誕生するのデシ!」


 究極のドジッ子……。

 身に覚えがある分、こうなんともいたたまれない気分になるっつーか……。


「さらにもう一つ! 一定範囲内の異性に対して『魅了』状態になってしまうような術式も組み込んであるのデシが……一番のキモ(・・)は、これらすべての状態異常がその相手の女性にも一時的に作用するという点デシ!」


「相手にもっつーと……」


「まずお互い軽い『魅了』状態になったおじさんと女のヒトは、無意識のうちに近づいてしまうんデシ! さらにえっちい部分に触ったり触られたりすることなんかの警戒心が薄れてしまうデシね!」


「グフフ、両方とも究極のドジッ子状態でゴンスからねぇ! その状態で不用意に近づいたりすれば……」


「必然的にラッキースケベなイベントが引き起こされる、という仕組みになっているのでヤンス!」


 ……そういうことか。


 お互い(・・・)冷静な行動がとれなくなっちまってる……つまり、風でめくれたスカートを瞬時におさえることができなかったり、着替えを用意するのを忘れちまったりといったあいつらの迂闊(・・)さも、スキルの効果だったってワケだな。


 そんでレベル最大までその効果を引き上げれば……たとえおっさんが部屋で引きこもっていたとしも、何かの拍子で近づいてきた女性が扉をノックなんかすれば俺は不用意にドアを開けちまう、ってことなんだろう。



「ちなみに、この『相手にも作用する』って部分の骨組みを作ってくれたのが、例の怪しいスキル屋ってワケでヤンスね。もちろん強化(バフ)スキルとして防御力も一緒にあげているので、怪我をする心配もないでヤンスよ!」


「フフフ、このよーに気配りも万全……どうデシ! 状態異常を良いカンジで組み合わせれば、こんなスキルも作れちゃうんデシよ! これでおじさんにもその素晴らしさが分かったはずデシ!!」


「いや気を配るっつーならもっと別のところをだな……。しかしまぁなんだ、正直あのろくでもないスキルに対する評価が覆ることはねぇが……それでも状態異常を組み合わせてどうのっつう部分はちょいと感心したよ」


 うちには状態異常(そういった)スキルを使えるヤツはいねぇからな。

 新鮮さも相まってって部分もあるんだろうが……。


「でっしょー! 普段ないがしろにされがちな状態異常系のスキルも、組み合わせ方によっては無限の可能性を秘めてるのデシ!」


「それにしたって、もうちょい努力の方向性がなぁ……。……ん? けどよ、あんまりいねぇよな状態異常スキルをメインにする冒険者って。この辺りだけか? 極めれば相当便利っぽいのによ」


「う……! もちろん、その理由も知っているデシ……。なぜならば……!」


「……? なぜならば……?」



「……ある程度以上の高ランク魔物(モンスター)の中には、状態異常への耐性が異様に高いヤツが多いからデシ……っ!」


「あー……」



 そういやそんな話はよく聞くな。

 同じ魔物(モンスター)でもエリアボスやダンジョンボスになってくるようなヤツだと、多数の状態異常耐性を身に着けたりするって。


「何故デシーーー!? そりゃあ状態異常スキルが不遇な扱いにもなるってもんデシよーーー!! うわーん!!」


「うぅ……おいたわしやデシレさま……!」


「まさに悲劇……悲劇でゴンス……!」


 テーブルの上で膝と手をついて悲痛な叫びをあげるデシレと、同調して涙を流すヤンスゥとゴンスモン。


「あー……まぁあれだ、なんつーかそのー……ドリア、おかわりいるか?」


「うぅ……いただくデシぃ……。……あとさっきみたいにチーズの上にパン粉もふって、サクサクのおいしいヤツにしてほしいデシ……」


「へいへい、っと……」


 うつむいた体制のまま、デシレが片手でそっと器を差し出してくる。

 ちゃっかり一言つけ加える余裕もあるようだが……ま、それで慰めになるってんならちょいとぐらい聞いてやってもいいだろう。

以前もお話したのですが、次回更新までにはまた少し間が空いてしまいそうです……!

まったく音信不通っていうのも流石にアレかとも思いはじめまして、

これからはTwitterで進捗なんかをあげていこうかなとかも考えたりしているので、

お暇な方はたまに覗いてやってください……!

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― 新着の感想 ―
[良い点] イラストが可愛いところ。 [一言] 次回も楽しみにお待ちしてます♪
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