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第10話 ひとまずめでたしめでたしってことで

 とりあえず三人組を縛りあげた後、距離をとってもらっていたトリア達とも合流する。

 さぁてどうしてくれようか……!


「まさか男同士では発動しないという唯一無二の弱点を突かれるとは……む、無念デシ……」


「……つーかお前ら、優秀なヤツを孤立させて仲間に引きずり込むとかなんとか言ってたけどよ、冒険者には女もいるだろ? そういう相手はどうやって引き込むつもりだったんだよ?」


「た、確かにそうでゴンス……!」

「か……考えてなかったデシ……!」

「盲点でヤンしたねぇ……」


 えぇ……? 唯一どころかガバガバじゃねぇか。

 ……俺そんなのに追い詰められてたの?


「ふぐぅ……せっかく怪しいスキル屋さんに『ピンクルスキャッター』の骨組みを作ってをもらったというデシのに………」


「いや怪しいスキル屋て……。まぁこんなスキルを作るようなヤツがまともだとは俺も思わんが……」


「でんも、気前よくタダで作ってくれたんでゴンスよ?」


「見かけによらず、良い人でヤンしたねぇ」


 いやむしろ死ぬほど増してんじゃねーか怪しさが。

 気づけ気づけ。


「……にゃー、オジサンちょっといいー?」


「ん? どうしたよエテリナ?」


「デッシー達ってばオジサンの『バッドステータス無効』のことを知ってたよねー? それってどこからの情報なのかなーって?」


「で、デッシー? ……まぁいいデシ、あれは確か……二ヶ月半ほど前デシたかね? 他の冒険者が偶然話していたのを聞いたんデシ」


「……ム? 二ヶ月半ほど前というと……イルヴィス」


「あぁ、あの時の……パニティンサイドのダンジョンアウト後ぐらいだな」


 ザーネドを含む他の冒険者を納得させるために、各パーティのリーダーに向けて最上級までのステータスを公開したんだが……。

 冒険者カードにはパッシブスキルも表示されちまうからな。


 口外してくれるなとは頼んではおいたが、まぁいつかこうなるだろうとはある程度予想していた。

 それを危惧して、公開するステータスは最上級までに抑えていたんだしな。


「もちろんミーたちも、立ち話程度の情報を鵜呑みにしたわけでは無いでヤンスよ? しかし……」


「そのスキル屋のヒトも知ってたんデシよおじさんのこと。だから『ピンクルスキャッター』のプログラムや術式も、まずは対おじさんを想定して作ってくれたんデシ」


「グフフ……! 対象が限定されれば、オイの『メタるハンター』で効果を底上げできるでゴンスからね!」


 グフフじゃねーよ。

 もっぺんはったおしてやろうかコイツ……。


「にゃふふ、なるほどなるほど……。――ねぇねぇ! そのスキル屋さんってばどんな人だったのー?」


「え? ええと確か髪が白くて……あ、肌は黒かったでヤンスね」


「おぉそうでゴンスそうでゴンス! だども、生粋のオークって感じじゃなさそうでゴンしたねぇ? 多分ヒュームとのハーフか、クオーターだったんでゴンスな!」


「というかアッチらも顔をしっかり見てはないんデシよ。なんせ――」



「――ずーっと黒いフード(・・・・・)で顔を覆っていたんデシからねぇ」



 ――〰〰っ!?

 黒いフード(・・・・・)だと!? まさか……!


「にゃふふ、思ったとーり……!」


「し、白い髪に黒い肌……! た、たしかおっちゃん、あ、あの時フリゲイトの中にも……!!」


「あぁ『ゼクセー』つってたな……! だとしたら……おいおい、それじゃあなにか!? あのフリゲイトがこんな訳の分からん馬鹿みたいなスキルをコイツらのため作ったってのか!?」


「ば、バカみたいとはなんデシかバカみたいとは!!」


 いや実際ろくでもないスキルだったろ!

 そこはおっさんマジで譲らねぇからなホント!!


「……ム、しかし一体なんのためにこんな……」


「にゃーん、たとえば一つ考えられるのは――」




「……あの~、お取り込み中のところ大変恐縮なのでヤンスが、ミー達はこの後どういう処遇になるのでヤンスかね……?」


「……っと、あー……まぁあれだ、街中で暴れだした件については衛兵さんに絞ってもらうとして……あのろくでもねぇスキルについても、きっちり落とし前はつけてもらわねぇとなぁ?」


「とほほ、やっぱりそうなるんでゴンスねぇ……」


「うぅ……二人ともすまんデシ……! アッチが不甲斐ないばかりにこんな……!」


「そんな、デシレさまの責任じゃあないでヤンスよぅ!」


「仮にそうだとしてもオイたちは一心同体……! デシレさまだけを責めるようなマネはしないでゴンス!」


「お、お前たちぃ……! うぅ……! アッチは良い仲間を持ってほんとーに幸せ者デシぃ……!」


「「で、デシレさまぁ……!」」


 ……なんだかなぁ。

 被害を(こうむ)ったのは確かなんだが、コイツらどうにもこう憎みきれないっつーか……。


「ねぇおじさま? その、なんていうか……」


「あー……言いたいことは何となくわかるけどよ。ほんとにいいのかよそれで?」


「むしろ最初のターゲットが他の人じゃなくてよかったんじゃない? さっきも言ったけど、ボクたちはおっちゃんにエッチなことされるのなんて今に始まったことじゃないしね?」


 いやだから、それ誤解を生むからやめてくれってのに……。


「にゃふふ! ウチとしてはむしろ願ったりかなったりなイベントだったかなーってカンジだしー?」


「お前というやつは……。まぁ元々の動機も誉められたものではないが、それも新しい力によって魔が差したというのであれば、更正の余地は与えてもよいだろう」


「こ、今回のことも、お、おっちゃんが鬼畜な人だと勘違いして、正義感から先走っちゃったみたいだしな……」


 正義感ねぇ……。

 間違った正義感ほど厄介なものもないとは思うが……。


「……はぁ~、ま、一番の被害者は俺じゃあないからな。つーワケで……だとよお前ら。二度と変な気をおこさねぇと約束してコイツらに頭を下げるってんなら、あのろくでもないスキルの方は水に流してやるよ」


「ほ、本当デシか!? も、もちろんデシ!」


 返事をするやいなや、五人に向かって頭を下げはじめる三人組。

 どうやらトリアたちもこれ以上根に持つことはなさそうだ。

 さてあとは……。



「それじゃあおじさん、手……はちょっと大きいから、指を出すデシ」


「指? あー、こんな感じか?」


「ストップ! ……スキルの範囲外で四十八時間経過するか、アッチのマナに直接触れること……それが『ピンクルスキャッター』の解除方法デシ!」


 ロープをほどいてやったデシレが、ふよふよと俺の指先に近づいて来る。


「良いデシか!? ぜったい動くんじゃないデシよ! むやみにアッチまでおじさんにセクハラされたらたまったもんじゃ無いデシからね!」


「自分でやっといてコイツ……」


 はぁ、まぁいいか。

 これでようやく、平穏な日常が戻ってくるんだからな。


 そんなことを考える俺の指に、デシレの小さな手が触れようとしたその瞬間。


 ――気疲れからか、不意に軽いめまい(・・・)に襲われてほんの少し……本当にほんの少しだけふらついてしまった。


 そう、距離にすればたった数センチにも満たない程度だ。

 だがフェアリーであるデシレにはたったそれだけで……。


 ふにん。


「あ」

「「……あ」」

「……ふえ?」


 指先に感じる、小さくも柔らかい感覚。

 これはひょっとしなくとも……。


「で、デシいいぃぃいいぃいぃぃッ!!??!???」


「おわぁ!!? す、すまん!!」


 差し出していた俺の人差し指は、ふらついた拍子でデシレの手をすり抜け……そのままデシレの胸のあたりをつついちまったようだ。

 ……いや最後の最後までこれかよ!!


「動くなって言ったデシ!! ぜったいに動くなって言ったデシぃぃっ!!!」


「わ、悪かった悪かったって!! ちょっとふらついちまって……!!」


 というかこれも『ピンクルスキャッター』の効果なんじゃねぇの!?

 しかしあれだ、この状況で『だから自業自得だろ!』と言っちまうにはあまりにもアレっつーか……!


「くぅぅ……やっぱりとんだゲスヤローデシ……!! まさに女の敵!! 次に会った時はぜったいに、また別の方法で社会的信用をズタボロにしてやるから覚悟しておくんデシいいぃいぃ!!!」


「んだんだ! 覚悟しておくでゴンスよー!!」


「それはそうとちゃんと今回のことは自分達から衛兵に出頭するのでその点はご心配なくでヤンスー!!」


 とんでもねえのか律儀なのか分からん捨てゼリフともに、一目散に退散していく三人組。

 あー……と。


「……はは、なんつーかあれだな? 一応これであの妙なスキルも解除されて……ま、ひとまずめでたしめでたしってことで……」


「「「じー……」」」


「うっ……。ま、待てって、三人ともそんな目でおっさんを見るんじゃないよ、な? 本当にこう、フラッときちまって……が、ガングリッド、お前からも何か――」


 ……………………

 …………

 ……




 ――数日後の朝。

 カーテンの隙間の光に照らされて、自宅のベッドの上で目を覚ます。


 とりあえず、あの『ピンクルスキャッター』とやらの効果はきっちり消え去ったようだ。

 どうやらデシレ達も、約束通りあれからは使ってないようだしな。


 これでようやく、普通の生活を送れるってワケだ。


「ふああぁあ……っと……。しかしなんだな、おかげで大変な目にあって……ん?」


 なんだ? 

 なんだかシーツの中がやけにぬくいような……?


 ……おいおい、またエテリナ辺りが勝手に潜り込んでんじゃねぇだろうな?

 どうにもあの三人組の一件から、また一段とスキンシップの境界がゆるくなったっつーか……。


 はぁと小さくため息をつきながら、軽く布団をめくってみる。

 すると……。



「きゃうー?」

「…………え?」



 ……どうやら俺の予想ははずれちまったようだ。

 そこにいたのはエテリナじゃあなく、俺の胸にぴったりひっつきながら首をかしげている、二、三歳にも満たないぐらいの見知らぬ女の子だった。


 なるほどね、もぐりこんでいたのはこの子だったのか。

 どうりでエテリナにしては軽かったワケだ。いや別にアイツが重いとかそういう話じゃないんだが……。



 ………………いやまてまてまてまて……!?

 え!? だれ!? どういう状況!?


 とりあえず……とにかくよくない……!!

 非常によくないぞコレは……!!


 もちろんどこぞの幼女をさらってきた記憶もなければ、その記憶をなくすほど深酒なんぞをした覚えも無い。

 最近はネルネやクヨウの監視の目も厳しめだしな。


 が……『良い歳したおっさんが見知らぬ幼女とベッドイン』。

 状況だけを見ればそりゃあもう、お縄まっしぐらといってもいいだろう。

 つらい。


 ……よーし落ち着け、落ち着いて現状を把握するんだイルヴィス。

 そうすれば何か……。


「? きゃうー?」


 俺の焦りを知ってか知らずか、あどけない様子で頭をこすりつけてくる目かくれ幼女。

 気楽なもんだなぁホント……ん?


 そういやコイツ、どこかで見覚えがあるっつーか……。

 いや、そもそもよく見てみれば……!


「……! まさか――!!」


 とっさにはね起きて左目(・・)に手をあてる。

 ――おいおい、ひょっとしてこの子(・・・)は……!


「おっちゃんおはよー! 今日もボクが来てあげたよー!」


「お、おはようおっちゃん……。ぱ、パンも買ってきたから、一緒に……」




「「「……あ」」」

土曜日中に投稿できた!

次回はいつも通りの番外編を、二話ほど週一ぐらいで更新する予定です!


次パートについては……お、おそらく三ヶ月以内には何とか……!

いや、こ、構想は出来てるのでモチベーション次第ではもっと早くなるかもなので……(震え声)!

どうかお待ちいただけると嬉しいです……!

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[良い点] パパになるにはいい時期か? ~独身だった俺が勇者候補と魔王幼女を見守る最強の後見人に至るまで~
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