第9話 さぁ~選びやがれ……!!
「くふふ、思った通りデシ……! どうやら知らない人に突っ込んでろーぜきを働くよりはと、パーティの仲間を犠牲にする道を選んだようデシねぇ……!」
「でんもデシレさま、それならこのまま待ってるだけでいいんでゴンスか?」
「問題ないデシ! 最初は『しかたがないと』許していても、好きでもない男からセクハラされ続ければ次第にギスギスしていくはず……いずれパーティは崩壊し、その後なんやかんやあってオジサンは無事檻の中へ……って寸法デシ!」
「流石流石、見事な作戦でヤンスねぇ! ……しかしデシレさま? もしあの男がお仲間さん全員から結構な好意を抱かれてたとしたらどうするんでヤンス?」
「ぷぷぷ! ヤンスゥ随分と残酷なことをいうデシねぇ! あーんな冴えないおじさんがモテモテだなんて、そんな夢みたいなことあるはずないデシよ~!」
「そうでゴンスそうでゴンス!」
「それもそうでヤンスねぇ!」
「「「あーはっはっはっはっは!!」」」
「――悪かったなぁ! 冴えないおっさんでよぉ!!」
やっと見つけたぜえぇ……!!
こそこそと路地裏に隠れる三人を睨みつけながら、俺たちは屋根から飛び降りる。
「……な!? ば、ばかなデシ! 『ピンクルスキャッター』は最大レベル……たとえ屋根を使ったのだしても、まともにアッチらを追ってこれるはずがないデシ!! 一体どうやって……!?」
「はっ、そいつはなぁ……こういうことだ!」
「そ、その姿は――!!?」
飛び降りた時に舞い上がった土煙も晴れ、奴らにもよーくみえることだろう。
――コイツの脇腹に抱えられて、荷物のように運ばれているこの俺の姿がなぁ!!
「…………カッコ悪いデシ」
「カッコ悪いでヤンスねぇ」
「カッコ悪いでゴンス」
「るせー!! 誰のせいでこうなってると思ってんだ!!」
こちとら好きで丸まってるワケじゃねーんだぞ!
「……ム、どうやら探していたのはヤツらで間違いないようだなイルヴィス」
「ああそうだ……! しかしホント助かったぜ、なぁ……ガングリッド!」
あの時……どうしたもんかと思い悩んでいた俺たちの前に現れたのは、何を隠そうこの男、ガングリッドだったってワケだ!
元々朝から俺が一人で出歩いていたのも、コイツんとこに顔を出すためだったんだが……いやーまさかこの抜群のタイミングでレベル障害が治まるとはな!
持つべきものは親友だぜ!
「が、ガングリッド……!? ひょっとして……デシレさま! あれ『深紅の戦刃』ガングリッド・アールディムでヤンスよぅ!!」
「うえ!? しょしょしょ、称号持ちデシか!?」
「おごごごごご……でででデシレさま、どうするんでゴンス!?」
「ひ、ひとまず落ち着くデシ! 『ピンクルスキャッター』の効果はまだ続いてるデシ……それならまだ――!」
「ム、残念ながらそうはいかない。たとえまた女性が近づいてきたとしても、オレがイルヴィスを抱えて動く速度の方が早いだろうからな」
「そういうこった! 思ったとおりお前らの『ピンクルスキャッター』は男相手には発動しない……つまりもう詰んでるってことだぜ! なぁ!?」
ひとまず一度地面に足をつけてから、びしっと奴らに現実をつきつけてやる。
「く、くぅぅ……! つよい冒険者をパーティから孤立させて仲間に引きずり込むというアッチらの計画は完璧だったはずデシ……! それなのに……! ――それもこれも! おじさんがガチ鬼畜ヤローだったせいデシよ!!」
「おいやめろ! 人を犯罪者みたいに呼ぶんじゃねーよ!!」
いやまぁいい、とにかく今は……!!
「さぁ~選びやがれ……!! 観念して大人しくスキルを解くか、おもくそどつかれてからスキルを解くか、アホ程くすぐられてからスキルを解くかをなぁ……!!」
「ム……イルヴィス、気持ちは分かるが完全に悪役の台詞だぞそれは」
はっ! かまうもんかよ!
どうせここでスキルを解かせなけりゃ似たようなもんだしな!!
……つらい。
「むむむ……ええい、仕方がないデシ!! たとえ称号持ちだろうが数的にはこっちが有利……ヤンスゥ!! ゴンスモン!! こうなったら実力行使でボコボコのギタギタにして、自らの悪事を白状させてやるデシよ!!」
「「い……イエスマームッ!!」」
おいおい今度はそう来たか……!
よっぽどおっさんを悪人に仕立て上げたいのかね、街中で暴れるのはご法度だってのにまったくよ……!!
「ゴンスモン、準備は良いでヤンスね!! ――『クイックムーヴ』!! アーンド『ビルドマッスル』!!」
「ぬおおおおん!! グフフ……力が溢れるでゴンス……!! ――ぬううぅんッ!!」
――ゴガアァアァン!!!
ヤンスゥの強化スキルを受けたゴンスモンが、その巨体に見合わねえ身軽さとともに繰り出した一撃により、路地裏中に轟音が響き渡る。
「はっ! 確かに大した威力だな……!! だったらこっちも――!!」
「させんデシ!! ――『ウインドスカージ』!!」
俺たちが反撃に移ろうとした瞬間、デシレが小さな腕輪を向けてスペルを叫ぶと、少し遅れて巻き起こった突風によって俺たちは体勢を崩されてしまう。
ちぃ……!! またあの風かよ……!!
「風の魔法か……! しかしこれは……出どころが分からん……!! 発動のタイミングも……!!」
「恐らく隠ぺい系の術式の効果だ! あのちっこいの、フーと同じ恩恵持ってんだよ!」
「ム、『乙女のヒミツ』か……! 確かにそれは厄介だな……!!」
「フフフ! たとえ『ピンクルスキャッター』がなくてもアッチらの連携は無敵デシ!! このまま一気に――!!」
「――なるほど、実力行使を口にするだけあって確かによく連携がとれているようだ……! ……だが!!」
「あぁ! 俺たちの敵じゃあねぇってなぁ!!」
瞬間、ガングリッドが強く踏み込み、ゴンスモンの眼前へと躍りでる。
オークであるガングリッドとジャイアントのゴンスモン。体格だけ見れば相手に軍配が上がりそうなところだが……!!
「ぬうううぅうん……!! 力比べなら負けないでゴンスよ……っ!!」
「……ム、それはこちらも同様だ……!! ――ぬおおおおぉぉっ!!!」
「……!? ぐ、ぐわああぁあぁ!!?」
ずしんと豪快な音を立てながら、ゴンスモンの巨体を抑え込むガングリッド。
まずは一人! そして……!!
「ゴンスモン!? 待ってるでヤンス、今強化を重ねがけて……!!」
「おーっと、そいつはさせねぇよっ……と!」
瞬時にヤンスゥの背後に回り込み、足をかけてすっ転ばしてやる。
そのまま杖を奪って眼前につきだしてしてやれば……!
「ま、参ったでヤンス~……」
「オイも……こ、降参するでゴンス……」
「よーし、ま、こんなもんか。それにしても……ガングリッドお前、前よりちょっとばかり強くなってんじゃねぇか?」
「……ム、体内でレベル障害を起こしていた大量の魔素が、EXP現象でそのままレベルアップにつながったようでな。……そういうお前も、以前より『戦闘力解放』を使いこなしているようだが?」
「まぁな。俺は俺で、この短期間に随分と修羅場をくぐらせてもらったもんでね。……さぁてデシレ、お前はどうするよ?」
「ヤンスゥ……! ゴンスモン……! ぐぬぬぬ……! ……はぁ、仕方がないデシね……」
しゅんとした表情で構えを解くデシレ。
どうやらひとまず、これで決着はついたようだな。




