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第2話 『何に』縛られているっつうんだ?

「『人を殺せない』、か……」


「え!? で、でもさ、でも……」


 トリア達が俺の脇腹(・・)に視線を向ける。

 ……もちろん、俺もその事(・・・)を忘れたワケじゃあ無い、だが……。


「……なるほどな、制限じゃなくペナルティ(・・・・・)。マジューリカさんはあの時、『俺が死ねば自分も消える』と言っていたが……あれは別に、相手を俺に限った話じゃ無いってことか」


 対象が誰であれ、人を殺した時にその報いをうける。

 つっても『存在自体まで消えてしまう』ってのがどういう意味なのかは、未だに計りかねるところではあるが……。


「正確に言えば『蘇生も復活も出来ない殺し方はできない』って言ったほうがいいかなー? エンデュケイトの時なんかもー、蘇生屋さんが大活躍してたしね?」


「じゃあ、『間接的』にっていうのは……?」


「例えばほら、チャラ男くんたちが街で暴れた事件あったでしょ? パニティンサイドのダンジョンアウトといい、タイミング的にマジュりんの言ってた『時間稼ぎ』っていうのはそれらのことだったと思うんだけど……」


「……ジャマになりそうな相手がいるなら時間稼ぎなんて悠長なこと言ってねぇで、サクッと排除しちまった方が手っ取り早いはず……っつーことか」


「にゃふふ、オジサンそのと~り~!」


 物騒な意見だが確かにその通りではある。

 逆に言えば、奴らにはそれができなかったってことだな。


「ならばオウカやエンフォーレリアでの事件はどうなる? 町の住民が理性を失くしたあの状況では、いつ犠牲者が出てもおかしくなかったはずだが……」


「にゃっふっふ……! だからこそ、ウチが『ショータイムウィンドウ』を解いた瞬間にオウカのヒトたちは正気に戻ったんだろうねー? だってあのままだったらー……『ウチが殺されちゃうから』、ね?」


「あ! そうだお前なぁ……ぶっ倒れてた俺が言えることじゃねぇが、いくら算段があったとはいえあんな危険な……」


「にゃーん、だいじょーぶだいじょーぶ! あの時にはもう結構確信(・・)がありましたゆえー!」


 まぁ確かに、結果的にエテリナの予測は間違ってなかったワケだが……。


 オウカの住民はフリゲイトの干渉の力によって理性を失っていた。

 つまりあの時いきなり理性を取り戻したのは、ショータイムウインドウを解いたエテリナを殺しちまう前(・・・・・・)にそれを解除されたからってことか。


「そんでもってエンフォーレリアの事件……あの時暴れてた人達にはある共通点(・・・)があったでしょ?」


「きょ、共通点? えっと……。あ……! も、魔物(モンスター)化……!」


「にゃふー! ネルネルそのとーり! つまり万が一のことがあったとしても、それは魔物(モンスター)による『理不尽な死』として復活が可能だったってことなんじゃないかなーって」


 なるほど。

 今となっちゃ確かめる手段も無いが、予測としては的外れとは思えんか……。


「で、でもエテリナさん、その……生贄(・・)になっちゃった子たちはどうなるんですか……? お殿さまが……」


「! ……にゃうーんハクちー、ソコ(・・)はねー……」


 煮え切らないような表情で、エテリナが再び口を開く。


「あんまり気持ちの良い話じゃないんだけどー……呪術的な考えでは『おなかの中の胎児』は、お外に出るその瞬間(・・・・)まで『母体ママの一部』としてあつかわれるんだよねー……。だから母体ママさえ無事なら……」 


「……! そういうことか……」


「と、というか、それは呪術だけに限った話じゃないんだ……。た、たとえば回復魔法をお腹の中の赤ちゃんにかけるような時も、ぼ、母体の一部として指定する術式を組み込む必要があるからな……」


「つまりお殿サマはさ、『人を殺した』って意味ではカウントされてないんじゃないかなーって………ウチらはやっぱり、そんなふうに割り切っては考えれないけど……」


「分かってるよ、言いにくいことを教えてくれてありがとな?」


 エテリナとネルネの頭をポンと撫でてやる。

 多少大げさに言えば、それが『世界の法則』ってワケだ。……確かに、あまり気分の良い話じゃあ無かったがな。


「でもそうやって考えていくと……フリゲイトが『人を殺しちゃうことができない』っていうの、間違いじゃないように思えるよね?」


「あぁ、だから躊躇もなく平気で人を殺しちまえるようなヤツ……ヴァシネにはコイツ(ヴァルハーレ)を渡すわけにはいかなかったってことか……」


 もちろん他にも理由はあるかもしれんが、少なくとも理由のうちの一つとして考えて問題はないだろう。



「……そういえばおじさま、あれからも左目の方はだいじょうぶなんですか? もし痛かったり苦かったりするなら、ハクがなでなでしてあげますからね?」


「え、目をか? ……ふーむ、流石にそいつはちょっと怖いなぁ」


「ち、ちがいますよう! お背中やあたまをってことです! ……もう、おじさまはいじわるです……!」


「はは、悪い悪い。……ま、何もなくて拍子抜けなぐらいだよ。ちょくちょく肉体強化の要領で、コイツにマナを流し込んだりもしてみたんだがな」


「マッフィーノが言ってたよね? すぐにって訳にはいかないけど、マナを与え続ければ『使役』が可能になるって……」


 ……『使役』、か。


「どうにもフリゲイトの奴らは、そのままだと暴れまわるだけの『七大魔王』の力を制御しようとしているように思えるな。マッフィーノや殿サマはその為の……言い方は悪ぃが『都合の良い人間』として選ばれたってところか」


 マッフィーノは冒険者への憧れから。

 殿サマはミヤビを立て直すという目的から、それぞれ力を欲していた。


 これがもっとめちゃくちゃなことを考えるような奴だったとしたら、おそらく奴らの眼鏡にはかなってなかったんだろう。


「そ、それじゃあフリゲイトたちの言ってる『魔王候補』って、そ、そういう人たちのことを言うのかな……? な、『七大魔王』を渡しても、あ、あんまりメチャクチャなことはしないっていうか……」


「いや『七大魔王』だけではないだろう。ガングリッドどのの時のことも考えると、もう少し広い意味を持っているようにも思えるな」


 ともあれ、どうやらフリゲイトは『魔王候補の手によって起きる混乱』と、『それを自分たちの手である程度制御すること』との両方(・・)を目指しているようにみえる。


 もちろん『人を殺さないため』ってのもあるんだろうが……だったらそもそもの話、なぜ混乱なんぞをおこそうとしてんのか。

 次につかむ尻尾はその辺りになってくるだろう。


 ……以前イヴェルトが言っていた『あのお方』という言葉が頭をよぎる。


 ミヤビで姿を見せた九人の中には、それっぽいヤツはいなかったように見えた。

 一瞬ヴァシネのヤツがそうなのかとも思ったが……どうやらアイツも最近になってスカウトされたようだったしな。


 ……『直接人を傷つけられない』。『間接的にも人を殺すことは許されない』。

 奴らのそんなルールはひょっとして、その『あのお方』とやらによって作られたモンなのか?


 仮にそうだとして……『魔王候補を選定してあちこちで混乱を起こしてね。あ、でもむやみに人を傷つけたり殺したりするのはNGだよ』ときたもんだ。

 目的とルールがあまりにちぐはぐ(・・・・)すぎる。


 ……いや、目的(・・)じゃあなく手段(・・)といってもいいかもな。

 フリゲイトがその騒動の先に、何か別の目的を見据えているのは間違いない。

 それが奴らの言う、単なる『娯楽』であるのか。それとも……。


 まぁどちらにせよ、やはりストンと腹に落ちんのは確かだ。

 たとえるなら……そうだな、『目的とルールを、それぞれを別人が作ったような違和感』とでもいったところか。


 そもそもの話、人を傷つけたペナルティとして『大陸の楔』を消滅させちまったり、マジューリカさんの言葉を借りれば『存在そのものを消してしまう』、なんてことができるヤツが本当にこの世に存在するのか?


 そんなことが出来ちまうんってんなら、そいつはまるで……。



 ――だとしたら、フリゲイトは一体、『何に』縛られているっつうんだ?

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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです♪ 謎が謎を呼ぶ展開で、今回も楽しく読ませて頂いています。 なにかと大変なご時世ですが、あまり無理しすぎないで下さいね。
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