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番外編 ワールズレコード031:称号

このお話は《第四章第22話》と《第四章第23話》の間ぐらいの出来事です

「ただいまですおじさま!」


「おう、お帰りハク」


 アンリアットにある巡回馬車の停留所で、学校から帰ってきたハクを出迎える。

 このまま一度俺の部屋に帰ってから、一緒にミヤビへと向かおうって算段だ。


 ゲートを惜しみなく使っていくと決めたとはいえ、流石に人目の多い街中で考えなしにってワケにもいかんからなぁ。


「えへへ……! 最近はおじさまの左手でたくさんイける(・・・)ようになって、ハクとっても幸せです! ……あ! これはお外ではナイショなんでした……!」


 うん冒険にね。

 左腕の紋様(これ)のおかげで使えるゲートのおかげでね。


 あわてて小さく口を抑えるハクの様子が、ことさら周りのヤツらに不信さを感じさせているようだが……『夢幻の箱庭』のことを公言してねぇ以上、詳しく訂正するわけにもいかんしなぁ……。


 ……いや、別にやましいことなんぞありゃしないんだ。

 むしろ気にせず、堂々としていりゃあいい。


「? どうしたんですかおじさま、なんだか……あ! もしかしてまたたまっちゃってる(・・・・・・・・)んですか?」


 あー疲れ(・・)がね。

 疲れがたまってるかどうかを心配してくれてんのね、優しいなぁハクは。


 よーし、ぜーんぜんやましいことは無いな、うん。

 胸を張って堂々と……。


「じゃあいつもみたいにアレ(・・)が出ちゃうまで……おじさまの固くなっちゃったところを、ハクがたくさん気持ちよくしてあげますからね……?」


 うん肩とか腰をね。

 ゲート(・・・)が出るまでの間、固く凝り固まっちまった肩やら腰をこう……マッサージで気持ち良くしてくれるとかそんな感じのヤツね。


 ……今日はたたみかけてくるなぁ。

 おっさんの評判はもう、ダメかもしれんね。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード031:称号

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それじゃあそのクレハさんって方のおかげで、明日はミヤビのお殿様に会えるんですか?」


「あぁ。つっても流石に全員ってわけにはいかねぇかもしれねぇけどな。その辺は追々考えるとして……ハクは今日どんな勉強をしたんだ?」


「えっとぉ……あ! 今日は『称号』についてお勉強しました!」


「ほー『称号』か。今の第一学校じゃ、そんなとこまで勉強するもんなんだなぁ」


「はい! ハク達は来年にはもう第二学校ですから、覚えておいて悪い事はないって先生が!」


 なるほどね。

 『スキル第一主義の崩壊』とよばれた出来事からこっち、特に成果主義(・・・・)的な風潮は顕著になってるからな。

 

 そんなことを考えながらハクの様子とちらりと伺ってみると、なんだかうずうず(・・・・)しているような、そんな表情でこちらを見上げている。

 ……なるほど、いつものあれ(・・)だな。


「そんじゃあ今日も部屋に帰るまで、勉強したことを聞かせてくれるか?」


「えへへ、はい!」


 ……………………

 …………

 ……



「『称号』っていうのは国ごとに決められた基準を満たした人に……例えば、何かひとつのことやり遂げたり、特別な技術を持っている人達なんかに与えられる肩書のようなものです!」


 ふんすと胸を張りつつ、勉強内容を反芻していくハクと並んで歩く。

 相変わらず可愛らしいもんだねホント。


「称号はその人の特徴や個性を現している『銘』の部分と、どんな技術を持ってるのかを現している『技能』の部分に分かれています! ……ガングリッドさんの『深紅の戦刃』なら、『深紅』が銘で『戦刃』が技能ってことですよね?」


 アイツの恩恵(ギフト)『背水リベンジャー』は、自分の(ダメージ)が増えるほどに強くなってくっつー代物だからなぁ。

 『深紅』ってのはそういうことだ。


「それと……『戦刃』は斧を使って戦うのがすごく得意なヒトのことで、他にも剣が得意なヒトなら『剣聖』、魔法を使うのが得意なヒトなら『魔卿』っていう称号を持っています! ……あ! これはシーレさんの称号ですね!」


「あぁそうだな。他にも……槍使いに与えられる『神槍』や、変わったところで言えば特殊な食材を調理できる『厨師』なんて称号もあるな」


 もちろんそれは名ばかりモノじゃあない。

 それぞれの技能に応じた……というか、特別な称号を持っていないと就けない仕事ってのも少なくないからな。


 つまり称号ってのは、資格としての意味合いも強く持っているってワケだ。 



「そういえば、『称号持ち』になるためには実績(・・)が必要になるって先生が言ってたんですけど……そういうのって、どうやってわかったりするんですか? ……自分で『できましたよ!』って言えば良いのかな?」


「っと、そうか。まぁそのへんも近いうちに習うとは思うが……」


 この際折角だ。

 復習のついでに予習とでもしゃれこむとしようかね。


「『恩恵(ギフト)』が戦女神ガッチャの加護によって与えられてんのは知ってるよな? 実は同じように他の女神からも、俺たちは『加護』ってもんを受け取ってんのさ」


「他の女神さまからも……ですか?」


「あぁ。簡単な説明になっちまうが……人それぞれの開花するパッシブスキルを定める、ラーンの加護『熟練度(スキルツリー)』。教会への祈りを通して復活する場所を固定する、セイヴの加護『帰還地点(リスポーン)』……」


 指を一本ずつ立てて数えながら、ハクへの説明を続けてやる。


「んで、ステータス傾向なんかの個人の能力を決定づける、システィマの加護『基礎能力(アビリティ)』……つっても、システィマについてはそれ以外のことは俺もよく知らねぇんだがね。そんでもって……」


「あ! ハク分かりました! じゃあジエムさまの加護っていうのが……!」


「お、その通りだ。それが実績の確認手段……自分のやってきたこと(・・・・・・・)が蓄積されていく、ジエムの加護『実績一覧(アチーブメント)』ってワケだな。流石ハクは冴えてるなぁ」


「えへへ、そんなぁ……!」


 照れるような表情のハクをよしよしと撫でてやる。


 『実績一覧(アチーブメント)』を利用すれば、例えば『どんな武器でどんな魔物(モンスター)を何体倒したか』なんてことすらも参照ができるって話だ。

 それをもとに、それぞれに応じた称号を選定するって寸法だな。



「あ、でもおじさま? 『実績』が大事だってことは……どれだけすごい能力を持っていても、それだけじゃ認められないってことなんですよね? それってちょっとだけ、かわいそうな気もしますけど……」


「ま、そういう考え方もあるんだろうけどな。そうだな……例えば、めちゃくちゃ回復魔法に向いてるスキルをアホほど持ってるA君がいるとするだろ?」


「えと、はい。A君……こんな顔かな?」


 頭の中で律儀にA君の顔を想像していくハク。


「しかしそのA君はな、実際に回復魔法で人を癒したことが一度もねぇのさ。だがその点、A君ほどスキルを持ってないB君だが、勉強や経験を重ねて、今までになんと一万人の人をしっかりと癒してきた! ってな話になった時……」


「あ……! それならハクも、B君に回復魔法をお願いしちゃうかもしれません……!」


「だろう? ま、実際にはそう単純な話じゃあ無ぇんだが……そうやって『何ができるのか』ってことよりも、そいつが自分の力を駆使して『何をしてきたか』ってのが重要視されてるってワケだ、今の世の中じゃあ特にな」


「実績……何をしてきたかが大切……。えへへ、わかりました!」


 もちろん、現実的な話をすりゃあ実績だけ(・・)が重要視されるってワケでもない。

 その辺りのことも、ハク自身がいろんなモンに触れて成長していく内に、自然と学んでいくことだろう。



「……ねぇおじさま? お部屋に戻るまでハク、手を繋いで歩きたいなって……えと、ダメ……ですか?」


「手を? そいつはかまねぇんだが……いいのか? なんつーか……今の俺の評判ってのはあんまりいいもんじゃねぇからよ。ハクのことも変な目で見てくる奴ってのもほれ、いないとは言い切れんっつーか……」


 ただでさえ、一時はハク達をたぶらかしてる(・・・・・・・)なんて噂もたったぐらいだしなぁ。


「そんなの関係ありません! そんな方たちより、ハクの方がおじさまのことをよく知ってますから! ……あ、でもおじさまのご迷惑になるっていうなら……」


「いやいやいや、そんなことはねぇさ。……むしろちょうど俺も、ハクと手を繋いで歩きたいなと思ってたんだよ」


「ほんとですか! えへへ……!」


 ハクの小さな手をきゅっと握ってやる。

 ……関係ない、か。

 そう言ってくれる仲間がいて、おっさんは本当に幸せモンだね。






「――むしろそたくさんの人に見られちゃった方がハクにとっても……。……そうやって実績(・・)をつくっていけばいつかは本当におじさまと……ふふふ……!」


 何やらぽそぽそと呟きながら、随分とごきげんな様子のハク。

 俺の右腕一本でそんなに喜んでもらえるってんなら、貸した甲斐があるってモンだぜホント。


 ……しかしなんだ?

 何故だか妙に、背筋に寒いもんが走ったような……。

仕事やら私生活やらで、またしばらく投稿ペースが不安定になると思います……!

申し訳ないです……!


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