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番外編 ワールズレコード029:キメラ

このお話は《第四章第十三話》の数日後の出来事です

 俺たちが今後の計画や金策のあれこれなんかを話し合った日から数日後。


「……トリアは同窓会、ネルネはスライムの研究発表、ハクは学校、エテリナはフーと家族に会いに、んで、クヨウは一人で少し考えたいことがある、か……」


 意図してないうえでの一人身っつーのはひさしぶりな気がするな。

 と、そんなことを考えながら昼飯をどうするか悩んでいると……。


「お、イルヴィスクーン、うぇーい! あれ? 今日もお一人様的な感じ?」


「ん? おぉ、お前らか。……つか、今日『も』ってなんだよ人を寂しいヤツみたいに言いやがって……」


「うっへっへ、さーせーん!」


 ……ホントに悪いと思ってんのかね?

 相変わらず軽いヤツだよまったく……。


 声をかけてきたのはビィトで……エータとシグも後ろにいるみたいだ。

 エテリナの言う、チャラ男くんたちってヤツだな。


「イルヴィスクンうぃーす。お、そういやエータちょーど良かったんじゃね? イルヴィスクンにあの事(・・・)話しとけば?」


「ん? なんだよエータあの事って……」


「う……。いや良いっての別に今じゃなくても……」


「とか言ってエータクンちょーめんどくさい性格してるからさー? いつまでも『いつかは言うつもりだー』とか言ってそうじゃね?」


「あー、エグいくらいわかるわー」


「……っち、わかった、わかったっての。……あーオッサン? なんつーか……あれだ。……悪かったよ、うちの身内が迷惑かけてるみたいで……」


「身内? お前の?」


 なんとも身に覚えがないんだが……いや前にもこんなことあったな。

 あん時は確かエテリナとフーが――。


「あれ、イルヴィスクン知らなかった的な? えーっと……あ、あったあった。ほらこれ、この記事イルヴィクンのことっしょ? んで、このインタビュー受けてる冒険者ってのが……」


「あー、あのナンパ男のボンボンのことか? ……って、あれエータの身内かよ!?」


 んでまたこのパターンか!

 ちょっと世間狭すぎんじゃねぇのかねホント……。



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 ワールズレコード029:キメラ

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「くっそ、なんだよ……。知らねぇのなら黙っときゃよかったぜ……」


「まぁそうふてくされんなって、な? ほれ、特別になんでも好きなもん奢ってやるからよ」


 俺たちはその足で、とある店までやってきていた。

 ……昔はよく来てたもんだが、最近はあんまり来ることなかったなぁココ。

 その理由はといえば……。


「好きなモンって……ここ実質メニュー一種類しかねぇじゃねぇか」


「んなことねぇさ、火山蜥蜴(トカゲ)のテールステーキ200グラムに、火山蜥蜴のテールステーキ300グラム……他にも500グラムから一キロまでと、よりどりみどりだぜ?」


「トッピングやドリンクもあっしね!」


「お、なんだよビィト、お前は判ってんなぁ」


「っしょー? アリアトヤース! ……あ、オレ注文してくるわ! おねーさーん……!」

 

 ……とまぁそんな感じで、メニューが一点特化に秀ですぎてるからだ。

 トッピングも六角ニンニクやらデスペッパーやらとまぁ偏ってるもんで、なんとなくトリア達をつれてくるのは気が引けるっつーか……。



「あ、そーだ聞いてよイルヴィスクーン。シグのヤツ、ちゃっかり自分だけちゃんとしたカノジョつくんてんのよ~? ヒドくね? 裏切り行為じゃね?」


「そりゃあ……お前も逆の立場になった時、『彼女なんて作りません』っつーならそうかもな?」


「あーそれは……。そういや火山蜥蜴って何のキメラなんだっけ? サラマンダー? フレイムリザード?」


 コイツ露骨に話題をそらしやがったな。

 分かりやすいヤツだよホント。


「……確かフレイムリザードだったんじゃねぇの? つか、サラマンダーのキメラとかいんのか? よく知らねぇけどよ」


「俺もその辺は分からんが……知り合いの実家でキメラ農業をやってるところがあるみたいでよ、こないだも鋼豚をもらったんだよ。そういったとこなら知ってたりもすんのかねぇ?」


「へぇー、イルヴィスクン料理できんだ! ウケんね!」


 いやなんでウケるんだよ。

 相変わらずテキトーな相槌うちやがって……。


「農業かー。将来は田舎で農業でもしながら、のんびり暮らすってのもいいかもなー?」


「……シグお前、それ農家の皆さんの前で言ったらぶん殴られるヤツだからな? んな簡単なもんじゃねぇだろ、そうでなけりゃ『キメラ』なんてもんも生まれなかったんだろうし」


「確かキメラって、地上の魔物(モンスター)に襲われてもマジ平気なように生み出されたんだっけ?」


 まぁそのとおりだ。

 その名の通り、鋼の肉体を持つ鋼豚なんかは分かりやすいな。


 本来魔素から生まれる魔物(モンスター)には、生殖機能なんてもんは存在しない……のだが――。


 マジックアイテム『未来の結晶(ハローベイビー)』。


 フェアリーとジャイアントのような著しく体格の違う男女の間でも、そういうあれこれ(・・・・)を上手い事なんやかんやして子孫を残せるようにしてくれるっつう有名な代物だ。


 流石に専門的なとこまでは分からんが、特殊な方法でそいつ使ってやると、普通の動植物に魔物(モンスター)の性質……いわゆる『属性』を付与することができるらしい。


 んで、そうやって生み出された生物を総称して、俺たちは『キメラ』と呼んでるってワケだな。


「つっても、どんな動物にどんな魔物(モンスター)の特徴でも付与できるかっつわれると、そういうワケにもいかんらしいがね」


「あー……『獅子の牙と山羊の身体能力、それと蛇の毒をもつ最強の生物』……だったか? なんかそんな話があったよな」


 エータの言う通り、キメラ技術が発達してきた当初にはそういった無茶な生物を産みだそうとしたやつらもいたらしいが……現状俺たちが目にしたことがないってのはまぁそういうことだ。


 それこそ火山蜥蜴ならフレイムリザード、鋼豚ならアイアンボアってな具合に、掛け合わせる魔物(モンスター)には相性みたいなもんがあるらしい。


 その辺を大きく逸脱しちまうと、そもそも『未来の結晶(ハローベイビー)』自体が作用しなくなっちまうっつう話だ。

 


「街に張られてる結界内も、敷地が無限にあるわけじゃあ無ぇからなぁ。普通の家畜以外にも安定した食糧の供給のために、魔物(モンスター)に襲われてもある程度平気な『キメラ』が生み出されたワケで……っと」


 そんな話をしていると、どうやら料理が運ばれてきたようだ。

 ふーむ、肉の焼けるなんとも香ばしい匂いが漂ってきて……。



「お待たせしました! こちらチャレンジメニュー、『火山蜥蜴のテールステーキニキログラム(・・・・・・)&山盛りガーリックバケット』を人数分でーす!」


「「「うええええええええっ!!!!?」」」



 二!? 二キロ!!?

 うわホントだ! ちょっとした岩みたいなヤツ出てきたぞ!?

 

「おいビィトお前……!」


「いやーすっげぇねコレ!! これ30分以内に食いきったら半額なんだってさ! 肉めっちゃ食えてー、イルヴィスクンのお財布にも優しい! やっば! オレ天才過ぎん!?」


「……そうだった、コイツこういう時アホ程食うんだったわ……」


「おいおい……そいうことは先におっさんにも言っときなさいよ……」


「しかたねぇだろ忘れてたんだから……」


 ……ま、なんでも奢るっつった以上文句も言えんか。

 半額なんぞ気にせずに、ゆっくりいただくとするかね。


「しっかしすげぇビジュアルだなコレ……おっさん時間かけても食いきれるか不安になってくるぜ……?」


「……! ……ま、オレはこれくらいはぜんぜん平気だけどな。どっかのオッサンと違って鍛え方が違うからよ」


「……ほ~う、随分挑発してくるじゃねぇかエータ。だったら三十分なんて悠長なこと言わねぇで、どっちが先に食いきれるか勝負でもするか? ん?」


「は? ヨユーだっつの。……負けた方は残ってる分にクリムゾンデスペッパー爆盛りトッピングして完食だかんな……!」


「いいだろう……! そんじゃあ……スタートだ――!!」




「……はぁ、うちのエータに負けず劣らず、イルヴィスクンも結構ガキっつーか負けず嫌いっつーか……」


「あれ? ほらシグも急がねぇと半額になんねぇよ?」


「どうせイルヴィスクンの奢りっしょ? オレはゆっくり食うとするよ。……なぁビィト、オレのも少し分けてやろうか?」


「え、まじで!? 神すぎん!?」


「だーろー? まぁオレってばそういうとこあっからねぇ」

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