第17話 私達がやりたいこと
「あーと、お前らは確かあん時ヴァレリアスと一緒にいた……」
「はい! おれはリグ・ナックスといいます! それとこちらの二人はナッティ・エンブラハイドとムゥリ・シーンです! どうぞよろしくお願いします!」
「いやリグ、ヨロシクは違うデショ。これから仲良しこよしでやっていこうってワケじゃないんダカラ……」
「……(こくり)」
「はっ、そうか……! でしたら……あまりよろしくお願いいたさないよう、どうぞよろしくお願いします!」
いやややこしいややこしい。
しかしこれは……まーた厄介なことに巻き込まれそうな予感がしてきたぞ。
勘弁してほしいねホントに……。
「それではあらためて……先程のセリフ! やはり聞きましたよイルヴィス・スコードさん! 貴方が彼女たちを物扱いしていると話を!」
「いやいやいや、さっきのアレはちょーっとニュアンスが違うっつーか……」
ただ11歳の女の子を本人の望み通り抱き寄せながら、小説のようなセリフを呟いてやったりしてるだけで……いやダメだわ。
どう説明したところでむしろ余罪がつきかねん。
「……はぁ、まぁいいか。んで? お前たちはあのヴァレリアスってヤツに『何か証拠をつかんで来い』とでも言われたってところか?」
「いいえそれは違います! なぜなら……おれたちは完全に独断で、先生には内密にここまで来ておりますので!」
えぇ……?
それはそれで問題なんじゃないの?
おっさんそっちのパーティの事情とかよく知らないけども。
「それじゃあえっと、三人もボク達みたいにダンジョンの探索に来たってコト?」
「……(ふるふる)」
「そういうわけじゃナイ。……ソッチも階層図は持ってるデショ?」
「え? あぁ、そりゃ持っちゃいるが……」
こういった時のためなんかに、飛行船にはいくつかの空にあるダンジョンの階層図が常備されてるからな。
「ではお手数ですが第六階層をご覧ください! 中央付近に魔物ルームがありますよね! そこで我々と『勝負』をしていただきたいのです!」
「……勝負だぁ?」
「えーっと……あ、ここだね?」
開いた階層図をのぞき込みながら指をさすトリア。
確かにあるみたいだが……。
「はい! そこでどちらが多く魔物を討伐できたかを競います! おれ達が勝ったらそれはつまり、先生の教えの方が正しかったということになりますよね! そうなった時はもう一度先生の話を聞いてください!」
「いやお前ら、いくら何でもこの難易度のダンジョンの中でいざこざを起こすつーのはよ……」
そもそもの話、俺は自分のやり方が正しいだの正しくないだの論ずるつもりは無いっての。
俺がヴァレリアスに腹を立てているのは、うちのヤツらを金で買おうとしたって部分だけだからな。
「そんな訳でこっちにはメリットもねぇし、悪ぃけど――」
「――いいだろう、引き受けよう」
「は!? おいクヨウ……!?」
「にゃふふ! ウチもウチもー! ……オジサンの正しさが証明できるっていうならー、むしろ願ったりかなったりってカンジ?」
「ヘェ、もう勝った気でいるンダ? ……早く目を覚ました方が良いと思うケド?」
いやもうバチバチの雰囲気じゃねぇか。
さて、どうしたもんか……。
「クヨウもエテリナも、気持ちはありがたいがもう少し冷静になってだな……」
「イルヴィス、お前も言っていただろう、『やりたいことは全部やる』と。……これが今、私達がやりたいことなのだ」
「……! ……はぁ、わかった、わかったよ」
……………………
…………
……
――雲型の未踏破ダンジョン、第六階層。
階層図に記された通り、中心付近には少し開けた空間が広がっていた。
あの辺が魔物ルームになっていて、足を踏み入れた瞬間に大量の魔物が襲ってくるってワケだな。
少し離れたところから確認してみるに、ルームつってもビジレスハイヴのような囲まれた空間じゃあなさそうだ。
行動範囲を制限されないってのは動きやすくていいんだが……その分周りの警戒も必要になってくるか。
そんじゃあっと……。
「――『戦闘力解放』。先に言っとくが、俺が危険だと判断したらその時点で中止してもらうからな? 不服かもしれんが、そこは従ってもらうぞ」
「はい! 問題ありません!!」
返事はすげぇ良いんだよなぁ……。
向こうは三人とも『上級上位』っつうことで、こっちからはクヨウとエテリナ、それとトリアが参戦することになった。
クヨウは中級だが、勇者候補に選ばれているぐらいだからな。
役不足なんて文句を言われることも無いだろう。
「……コッチは五対三でもいいんダケド?」
「それを負けた時の理由にされてはかなわんからな。……ゆくぞ!」
合図と同時に六人が走り出し、魔物ルームに足を踏み入れる。
その瞬間、そこらの雲から飛び出てくるようにして、魔物が襲い掛かってきた。
「ナッティ! ムゥリ! いつも通りおれが前に出る! 二人は援護を!」
「言われなくても分かってル!」
「……(こくり)」
「トリア! 私たちは二人で前に出るぞ!」
「おっけー! エテリナは後ろをお願いね!」
「にゃっふっふ! おまかせあれー!」
「……確かに、向こうさんから仕掛けてくるだけあって、三人とも実力は確かみたいだな」
一人一人の力量ももあって、お互いの連携もしっかりとれている。
ヴァレリアスの奴、大口をたたくだけあって指導者としちゃあ優秀なようだ。
それでヤツを好きになれるかどうかは別の話だがね。
……『先生のため』ときたもんだ。
随分と慕ってくれてる奴らがいるってのによ、その本人があんなくだらねぇやり方しやがって……。
そんなことを考えていると、勝負も中盤にさしかかる。
「――む、向こうは今ので十二体目……と、トリア達は十体目だな……」
「少しずつ、離されちゃってます……!」
「みたいだな。だが――!」
「いける……! このままおれ達で、先生の正しさを証明するんだ!」
「……っ!? リグ! アッチのペースが上がってきてル!!」
「な!?」
……どうやら本人たちも気付いたようだ。
力量も連携も申し分ないが……向こうに足りてないのは経験だ。
うちの子たちは随分と修羅場もくぐってきているからな。
直接戦闘以外の……例えば連戦における自身の体力やマナのペース配分なんかについても熟知してきている。
そうやって迎える最終局面。
魔物一体一体との戦闘を見れば向こうの方がそつなく立ちまわってはいるが、全体の流れで見れば……。
「これで最後の一体! ――『メテオパンチ』!!」
……どうやら、うちのヤツらの勝利みたいだな。
「はぁ……! はぁ……! そんな……」
「はぁ、はぁ……! ……ふぅ、決着はついたようだな。これで――」
「――こんなところで何をしている。リグ、ナッティ、ムゥリ」
「! せ、先生……!」
「戦闘の形跡を辿ってきてみれば……随分と、愚かな真似をしていたようだが?」
突如として現れたヴァレリアスが、リグたちをジロリと睨み付ける。
……ここまで一人でか。
『英雄級』ってのは伊達じゃあないみたいだな。
「……どうしたリグ、リーダーであるお前が説明をしてみるといい。吾は『余計なことはするな』と、そう言い渡しておいてはずだが?」
「それはその……申し訳ありませんでした……」
先程までとはうってかわって、気落ちした様子を見せるリグ。
「せ、先生、リグを怒らないでやってヨ……! 反対しなかったワタシたちにだって責任があるカラ……!」
「……(こくりこくり)」
「……まぁよい。それよりもイルヴィス・スコード……本来であれば、このようないさかいも戒めてやるのが、我々の役目だと思うのだがね」
いやまぁそいつは確かに反論しづらいところではあるんだが……。
「やはり、貴様の元には――」
「……っ!? おじさま!! また……また来ます!」
「ハク!? まさか……!」
瞬間、足元にふっと影が落ちる。
コイツは――!!
「――二重トラップだと!?」
見上げてみれば上空から次々と現れる魔物達。
その中の一体、二対の羽をもつ巨大な鳥の様な魔物が目に入る。
あれは……!
「ヘブンリーフェニックス!? まずい!!」
ヘブンリーフェニックス。
討伐したはずの魔物を蘇生する力を持つ、ランクSS+の魔物だ……!
ここにはさっきまでトリア達が戦っていた、大量の魔物が転がっている。
つまり……!
次回の投稿は明後日の予定です!




