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第11話 ただのおっさん

「……くっそーぅ。あることない事好き勝手に書いてくれちゃってまぁホントによーぅ」


 ソファの上で新聞を広げつつ、愚痴ともため息ともつかない文句なんかを吐きだしたりしてみる。


 ――あれから一週間。

 押し掛けてきた記者たちが『取材』と称してわちゃわちゃとやっていった結果がこれだってんだから、やりきれんもんだぜホント……。


「にゃふふ~! 記者さん達もー、最近やーっと少なくなってきたってカンジ?」


 膝の上で寝そべりながら『ミストルノ手記帖』の写本を読みふけっていたエテリナが、ぱたぱたと足をふって反応する。


「エテリナまたお前はそんなはしたない格好で……。イルヴィスも、もう少し注意をしてやるとかだな……」


「あー……いやほれ、『ウルトラ相思相愛』も『アルティメット一致団結』も、人との繋がり(・・・)みたいなモンが鍵だっただろ? だったら普段からスキンシップをとることもこう……大事なんじゃねぇかってな?」


 決して、『どうせ注意したところで聞きやしねぇからもういいかな』とか思っているワケではない。

 決してな。


「……! まぁ確かに、それなら普段からのふ、ふれあいというものも大切なのかもしれんな? ……あくまでも! あくまでも変な意味ではなく、目的を見据えたうえでの話だが!」


 ……相変わらず丸め込むのに労力のかからんヤツだ。

 おっさんちょくちょく心配になるよホント。


「――にゃっふっふっ……! 順調に慣れて(・・・)きてるねーオジサン……? このままいけば……」


「ん? なんか言ったかエテリナ?」


「にゃふ? オジサンの膝の上はー、ウチのお部屋のベッドよりもずーっと快適ですなーって!」


「なに? お前んちのベッド石かなんかで出来てんの?」


 おっさんの太ももなんて、堅いだけだろうによ。



「それにしてもさぁ、『勇者か魔王か!? リーズシャリオを救った一人の冒険者』って……むー、ボク達だってがんばったのに、おっちゃんばっかり注目されてー!」


「ま、まぁこういうのは話題性というか……お、面白さみたいなものが優先されることも、す、少なくないからな……」


 ネルネの言う通り、そういうことなんだろう。

 実際、記事の内容も……。


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 先日、リーズシャリオで出現した巨大な魔物(モンスター)

 それが『七大魔王』の一角である『エンデュケイト』だと世界中で噂され始めたのは記憶に新しいことだろう。

 

 そして……そんなエンデュケイトを討伐したのが『勇者』の称号を持つ者であるどころか、一人の無名の冒険者だというのだから驚きだ。

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 とまぁ、そんな感じで続いていくんだが……。


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 一方で、そんな彼の功績を疑問視する声も上がっている。


 それもそのはず、彼はつい数か月前までは『荷物運びしかできない役立たず』とまで呼ばれており、果ては『国家反逆罪』の疑いまでかけられていたというのだ。


 そんな彼が『七大魔王』と呼ばれる存在を相手に立ちまわり、あまつさえ討伐に至ることが本当に可能だったのか……真相をつきとめようとする我々は、彼のことを良く知ると言う一人の冒険者に話を聞くことができた。


 そしてその中で、この一連の出来事への『疑惑』とも感じられる、知られざる背景を目の当たりにすることになったのだ。

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 なんて、明らかに不穏な方向へ舵を切っていってるからなぁ……。


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「本来あの状況であれば、全員で協力して危機を乗り切ることがセオリーで、もちろん私も彼にそう進言しました。ですが彼は『そんなことよりも』と言わんばかりに、明らかにエンデュケイトの討伐を優先していたんです」


 以前、イルヴィス・スコード氏とパーティを組んだことがあるという彼は、神妙な顔つきでそう語る。


「結果的に見れば、それは正しかったのかもしれませんが……彼はまるで『自分ならあの魔物(モンスター)を倒せる』と、初めからそんな確信を持っていたようにもみえました」

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 本当に好き放題言いやがって……。

 確信なんてねぇよ、気合い入れてただけだっつの。


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「実は偶然にも、私はあのエンデュケイトが出現する瞬間に立ち会ったんです。そして……そこには彼、イルヴィスさんの姿もありました。これが単なる偶然なのかそれとも――」


 彼の情報から垣間見える深い闇。

 もしかしたらこの一連の事件そのものが、イルヴィス氏の手によるものである可能性も――。

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「いやまぁ確かに偶然じゃないっちゃあそうなんだが……しかしこの内容は流石に悪意があると思うねぇホント」

 

 マッフィーノの話からするに、エンデュケイトの出現は俺達が居合わせたタイミングを見計らってのことだったみたいだしな。

 ま、悪者じみて書かれてるのが俺だけだってのは、不幸中の幸いってところか。


「あのおじさま……? このお話をしている冒険者さんってひょっとして……」


「ん? あぁ、十中八九、シズレッタとネーリャをナンパしてた例のアイツ(・・・)のことだろうよ」


「内容から見ても、まず間違いはないだろうな。しかし……お仕着せがましい言い方をするのは本意ではないが、イルヴィスがいなければあの男も無事では済まなかったというのに……」


「ま、なにも思うことは無いっつったらそりゃあ嘘になるがよ。今までさんざん似たようなことも言われてきたんだ。今さらそんくらいでへこんだりしねぇさ」


 どうせまたいい格好でもしたかったんだろう。

 今の内ぐらいは好きにやらせておけばいい。


「にゃふふ、さっすがオジサン! じゃあじゃあー、『オーヴァナイフ』が折れちゃったことも、ぜーんぜん平気ってカンジ?」


「はっはっは、おいおい俺もいい大人なんだぜ? そんなお気に入りの武器が壊れちまった程度のことでいちいち落ち込んじまうようなことなんざ――」






「……………………あるわけ無いに決まってんだろ……」


「あぁ!? おじさまがまたどんよりと!」


 つきつけられた現実の重みに耐えかねて、うなだれるように下を向く俺の頭……。

 あぁ……。


「どこが『あるわけ無い』のだまったく……ほらイルヴィス、しゃんとしないか」


「うぅ、だってよう……。オーヴァナイフが無けりゃおっさん、『オーヴァクラック』も『オーヴァボルド』も使えないんだぜ……?」


 ガングリッドのパーティにゃ『職人ギルド』に所属するドワーフがいるんだが……そいつの話によると、そこいらの職人じゃあまず修復するのは無理だって話だしなぁ……。


 ネルネにも『ブレイブスライム』みてぇに術式を繋ぎ合わせることはできねぇかと聞いてみたが、それも難しいらしいし……。


「おっさんは今や、『勇者級』の力を時々使えるだけのただのおっさんでしかないってワケだ……。はは、笑ってくれよ……」


「いやまぁそれだって相当すごい部類のおっちゃんだと思うけど……。もー、おっちゃんってばこうなるととことんネガティブなんだからー。ほら、よーしよし……」


「はーいおじさまだいじょうぶですよー? ハクもついてますからねー?」


「よ、よしよし……。え、エテリナも、あ、あんまり蒸し返すような言い方をしちゃ、だ、だめだぞ……?」


「にゃふふ! はんせーはんせー!」


「本当に反省しているのかお前はまったく……。まぁいい、そのことなのだがイルヴィス、一度『ミヅハミ』へ行ってみるというのはどうだろうか?」


「……『ミヅハミ』へ?」


 三方向から撫でられつつ、クヨウの提案に耳を傾ける。


「ミヅハミっていうと……確か、ミヤビにあるクヨウさんの故郷でしたよね?」


「うむそうだ。イルヴィスは知っていると思うが、私の家……フゥリーン家では蘇生屋をはじめ、様々な分野に精通する者を抱えていてな。代々つかえる鍛冶職人の中に、相当腕のたつ『称号持ち』の者がいるのだが……」


「! そ、そんじゃああれか!? その職人に頼めば……!」


「あくまでも可能性の話だがな。現物を見せてみないことにはなんとも……」


 いやいい全然いいぞ!

 どのみち手詰まりだったところだ、可能性だけでも十分に……!


「しかし……私から提案しておいてこう言うのもあれなのだが……」


「んにゃー、お船か、飛行船か……どっちにしろ往復分ともなれば、相当な資金が必要になってきますなー?」


 確かに、リーズシャリオへ向かう時はマッフィーノに手配をしてもらったが、六人分の国外への遠征費ともなれば本来は……ってな話だ。

 だが……!


「――いいや、ひとまずそいつは片道分(・・・)で良いのさ……!」


「え? えと……」


 疑問符を浮かべるトリア達に見せつけるように、俺は左腕(・・)の袖をめくりあげる。


「帰りはほれ――コイツ(・・・)を使うからな!」

大分更新に間が空いてしまい、本当に申し訳ないです……!

またしばらくはちまちまと投稿していきますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします!


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