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番外編 ワールズレコード028:契約魔法

このお話は

《第四章5話》と《第四章6話》の間にあった出来事です

 エテリナの話の途中、ひとまず昼食を終わらせて、食器を流しに運び込む。

 ……フリゲイトが『新種族』か。さて――。


「……しかしあれだね、流石に六人ともなると、洗い物の量もばかにならんのだよなぁ……。ネルネの『クリーンスライム』じゃあ、流石に皿洗いにゃ向いてねぇだろうし……」


「にゃーん! この際、自浄魔法のかかってるお皿そろえちゃうってのはどう?」


「っと、エテリナか。……お前あれ一枚いくらすると思ってんだよ」


 ぴょんと背中にくっついてきたエテリナが、簡単にそんなことを口走る。

 あれ一枚買うのに、普通の皿が下手をすりゃ50は買えるんだぞ?

 水で流すだけでいいってのは魅力的だが……ま、贅沢品だね贅沢品。


「にゃふふ、だねぇ? ……ねぇオジサン、ウチ――」


「……わかってるよ。最後にマッフィーノに会ったあの時……一連の事件がアイツの仕業……とまではいかなくても、何か関わりがあるって気付いてたんだろ?」


「……!」


 だからあのタイミングで、わざわざ蘇生屋の話題を切り出したんだろう。

 ……今思えば、少し口にするのをためらってる様子だったしな。


「にゃ……うん、そうなんだー。頭の中でいろーんな状況を整理してたらなんとなーくそうかなーって。……にゃふふ! ウチってばイヤな子だよねー? せーっかくお友達になった子を疑っちゃうなんてさー?」


 少し眉をひそめながら、自嘲気味にそう答えるエテリナ。


「んなことはねぇっての。……むしろ嫌な役をやらせちまって悪かったな。俺が先に気付けりゃ良かったんだが……」


「オジサン……ううん、ウチこそゴメンね? ……今度からはちゃんと相談するからね?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ワールズレコード028:契約魔法

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はいおじさま! 食器はこれで全部です!」


「お、ありがとなハク?」


「えへへ、だって土曜日はハクがお手伝い当番ですから! あ、エテリナさんもお手伝いに来てくれたんですか?」


「にゃ!? えっと……うんそうそう! オジサンに『簡単に食器を洗える魔法作ってよー』っていわれちゃってねー?」


「え!? おいエテリナお前……!」


「あ、だめですよおじさま! エテリナさんには『写本』の解読もお願いしてるんですから……大変なときは、ちゃあんとハクがお手伝いをしてあげますからね?」


「あぁ、えっと、その……はい、すんません……」


 ちらりと視界に、『ゴメンね?』ってな感じで舌を出すエテリナが映る。

 あとでくすぐり……倒すの罰にならんしなぁ。なんか別の手を考えるか?


「……ハクも魔法が使えたら、もっとおじさまのお役に立てるのにな。ジョーダインさんのことがわかったのも、エテリナさんの『契約魔法』のおかげでしたし……」


「……と、いやそいつは違うだろハク? ハクが今までボウガンや感覚系の肉体強化訓練を頑張ってたおかげで、シズレッタのペンダントは無事に取り戻せたんじゃねぇか」


「あ……。えへへ、そうでした!」


 うんうん。

 魔法が使えなくても、ハクはちゃんとやってくれてるって話だ。



「しかし『契約魔法』か。……なぁエテリナ? そういや、契約呪法(・・)とかそういうのは聞かねぇけど……そっちも実はあったりすんのか?」 


「にゃ? んーん、『契約魔法』は『魔法』から派生したものだからねー?」


 ほぉ、そうなのか。


「もう結構前になっちゃうけど……魔法ってのは『魔物(モンスター)の力を人間が使えるように』って生み出された技術だって話はしたでしょ?」


「あぁ、もちろんそいつは覚えてるが……」


「はい! ハクもちゃあんと覚えてます!」


 しかし初めてその話をしたのはクヨウがうちに入る前だから……もう五か月近く前になるのか。

 なんつーかこう、時間の流れってのは早いもんだねぇホント。


「むかーしむかし、古代文明ではついにその努力が実り、魔物(モンスター)の力を使うための『魔術』が産みだされましたー! にゃふー! ぱちぱちー!」


「わ、わーぱちぱちー!」


 エテリナにつられるように、少し照れながら小さく手を叩くハク。

 別に律儀にのってやらんでもいいんだぞ?


「んでんでー、つづいて古代人はこう考えたのです! ……『ねぇねぇ! ウチらがんばちゃえばもっと別の力も使えちゃうんじゃない!』『うんうん! いけちゃういけちゃうー!』……ってね?」


 いやノリ軽いな古代人。


「そうして古代人は、『魔術』から派生させたさまざまな技術を産み出していったのでしたー!」


「えっと、様々な技術っていうと……」


「『呪い』の力を使うための『呪術』やー、『マジックアイテム』の力を使うための『錬金術』! 他にも『ダンジョン』のように、それら効率的に運用するための『魔導』を……ってなカンジでね?」


 なるほど……その辺はあくまでも『魔法』からじゃあなく、『魔術』から派生したもんだってことだな。


「そういやメルディナッハのセンセーも言ってたな。ダンジョンから見つかる呪いをもったアイテムの中には、古代文明によって作られたモンも多いって……」


「にゃふふ! 『到達点』ってヤツだねー? ウチらよりもずーっと進んだ古代文明の技術は、もともと世界に存在していた呪いなんかとほとんど区別がつかないほどになっていったんですなぁ」


「え!? じゃ、じゃあ魔法をすごく使えるようになったら、本当に魔物(モンスター)さんになっちゃうんですか!?」


「にゃふふ、だいじょーぶだいじょーぶ! というかハクちーは、魔法の『到達点』に一番近いところにいるんだよー?」


「つーと……そうか、『亜人』がそうだってことか」


「にゃふー! オジサンだいせーかい!」


 今は失われちまった技術だって話は聞いたことがあるが……なるほど、単純に俺達の文明の技術が、まだそこまで追いついてないっつう話だったんだな。



「さてさて、ここまでは古代文明のお話。ウチらの時代になってもやっぱり同じようなことを考える人は多かったんだー! ちょっと方向性は違うけど、鋼豚みたいな『キメラ』を産みだしたりね? んでんでー……」


「あ! ハク分かりました! それで、『女神さま』の力を使えるようになりたいって作られたのが『契約魔法』なんですね!」


「ハクちーそのとーり! うーんえらい! いいこいいこ~」


「えへへ……!」


 ハクの頭をくしくしと撫でるエテリナ。

 こういうところは、きちんとおねぇさんしてるんだがなぁ。


「『契約魔法』っていうのはその名の通り、女神さまとの『契約』によって、条件下においてのみ使える強力な魔法なんだよねー? その分、条件下以外のシチュエーションじゃあ発動しないようになってるけど……」


 確かに、『この魔法は戦闘中には使えない』だの、『この魔法はダンジョンでは使えない』だの、契約魔法のそういった話は結構有名だったりするな。


「そんじゃあ例えばよ、俺とエテリナがケンカしたフリ(・・)なんかをしても……」


「PvPとはみなされず、『ショータイムウインドウ』は使えないんだよねー? そういうこともあって、戦女神さまは『すべてを見通す目を持ってる』、なんて言われてるってカンジ?」


「あ、ハクも学校でならいました! だから悪いことをしちゃだめですよって!」


 俺もならったなぁ。

 ……だからっつって、ケンカをやめれるようなしっかりした奴じゃなかったがね。



「んでんでー、『契約魔法』は契約の証として、それぞれの女神さまをあらわす『紋章』を魔術に組み込む必要があるんだけど……単純にそれができるのが、同じく紋章や魔法陣を使う『魔法』だけだって話なんだよねー?」


「あ、だから契約呪法(・・)なんかの技術は無いって話になるんですね?」


「にゃふー! ハクちーまたまただいせーかい!」


「えへへ……!」


 なるほど。

 『魔法』からの派生ってのはそういうことか。


「しかしよ、『魔術に紋章を組み込む』って話を聞くだけだと俺にはピン(・・)とこんのだが……やっぱそんなに難しいもんだったりすんのか?」


 この歳で勇者候補のエテリナでさえ、使えるのは『ショータイムウインドウ』の一つだけだって話だしなぁ。


「にゃー……これがほんっっっとうに『にゃむーん!』ってカンジでねー……? そもそも女神さまの紋章って、術式の一部として見た場合、それだけでスッゴク重い(・・)んだー……」


「いや、にゃむーんってのどういう感情なのかはよくわからんが……重い(・・)?」


「分かりやすく言えばえっとー……例えば、今日の晩御飯はカレーにするって話になったでしょー? そしたらまずは材料を用意するよねー? ……はい、それがここにあるとしまーす」


 ジェスチャーを駆使して、まな板の上に見えない材料をならべていくエテリナ。


「んでそこにー……? フルーツとクリームたっぷりのあまーいケーキをホールでどーん!! さらに生きたままの魔物(モンスター)も一頭追加じゃーい!! これら残さずぜーんぶ使って、おいしいカレーをつくるのじゃー!! ……って言われたら?」


「えぇ!? えっと……」


「そいつはまた……随分と無茶な話だな」


 まずケーキは別々に食べた方がおいしいですよと助言をしてやるところだ。

 魔物(モンスター)については……あれだ、ダンジョンに放とう。


「でもでも、その無茶をやらなきゃいけないってのが『契約魔法』なんだよねー? そこまでやっても実用的にならなきゃ意味ないし、仮に実用的になっても、今度は『契約』で弾かれちゃったら全部ムダになっちゃうし、にゃむむ……」


 難しい顔で考え込むエテリナ。

 コイツがこうなるってことはよっぽどなんだろうねホント。


「にゃー!! 女神さまはお忍びで降臨するーなんて話もあるし……直接会えたりすれば、もっといんすぴれーしょんもわくと思うんだけどなー……?」


「だったらほれ、普段からお祈りでもしてみたらどうだ? 全てを見通すってのが本当なら、向こうから会いに来てくれるかもしれねぇぜ?」


「えへへ! それどころか、もうどこかで出会っちゃってるかもしれませんね!」

ここまで読んでくださってありがとうございます!

次回更新は第二パートのプロットが完成次第、順次上げていきたいと思いますので

今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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